海水淡水化と下水処理を統合した新規水処理システムを開発
―従来比30%以上の大幅な省エネ・低コスト化を実証―
2014年3月12日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOと海外水循環ソリューション技術研究組合(GWSTA)※1は、海水淡水化プロセスと下水再利用プロセスを組み合わせた新たな海水淡水化・下水再利用統合システムを開発、NEDOが北九州市内に設置した「ウォータープラザ北九州※2」において実証の結果、従来の海水淡水化システムに比べ30%以上の省エネルギー、低コスト化を達成しました。
このシステムは、海水淡水化プロセスに下水処理プロセスの一部を利用することにより、環境負荷を低減することができ、水資源が不足している地域において最適な水処理パッケージとしての活用が期待されます。
※1:株式会社日立製作所インフラシステム社と東レ株式会社が中心となり、水ビジネスの国際展開を加速するために設立した技術 研究組合。先進的な水循環システムの開発や事業運営・管理ノウハウの蓄積、独自の水循環ソリューションの 構築・事業化 に共同で取り組む。
※2:国内最大規模の省エネルギー型造水プラントの運営実証を行う「デモプラント」と、多様な水処理要素機器の試験が行える「テストベッド」を設置、運営実証と機器試験の両方を備えた国内初の施設。

1.背景
我が国には民間企業による水処理技術と地方自治体の上下水道事業運営に関する高度な技術やノウハウがあるものの、水処理上の運営から技術管理を含めた総合的な競争力に関しては欧米に比較して弱い側面があります。このため、NEDOの「省水型・環境調和型水循環プロジェクト」では、世界トップレベルの国内独自技術を結集し、デモプラント機能とテストベッド機能を持つ「ウォータープラザ北九州」を構築し、国際競争力のある省エネルギー水処理プラントの運営管理ノウハウを蓄積し、我が国の技術力を世界へ向けて発信することを目的としています。
2.成果
(1) デモプラントの効果
デモプラントは、海水淡水化プロセスと下水再利用プロセスを統合した独自のシステム(下図)です。
[1] まず下水再利用プロセスでは、下水を膜分離活性汚泥法(MBR)で前処理した後、低圧の逆浸透膜(RO膜)で処理し、生産水として工業用などに利用します。
[2] RO膜処理からの低濃度の濃縮水を海水淡水化プロセスに送り、限外ろ過膜(UF膜)で前処理した海水と混ぜ、「中圧」のRO膜で処理し、生産水として利用します。
[3] 海水淡水化のプロセスでは、通常「高圧」のRO膜で処理するところ、本システムでは、海水と下水の処理で残った低濃度の濃縮水を混ぜ、海水濃度を下げているため、「中圧」のRO膜での処理が可能となり、ポンプ等に必要な電力を抑えることで30%以上の省エネルギー化を図ります。
[4] また、下水処理プロセスからの低濃度の濃縮水を利用しているので、塩分濃度の高い濃縮水を発生させないだけでなく、海水の取水量を減らしつつ放流水の塩分濃度を抑えることができ、環境への負荷を小さくすることができます。さらに、取水設備やUF膜設備の容量を減らすことで、30%以上の低コスト化を図ることができます。
[5] 一方、生産水は、周辺の施設などに提供され、特に九州電力(株)では、2年間以上ボイラー用水として連続的に使用し、良好な結果が得られたことから、本システムの実用化への信頼性が確認されました。
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海水淡水化・下水再利用統合システムの概要
(2) 成果の情報発信
ウォータープラザ北九州では、特に海水淡水化処理を必要とする国々に対して、最適な水処理のパッケージを提案し、これまでに延べ4700人以上(そのうち、海外からは1000人以上)の見学者を受け入れ、日本の高い水処理技術を国内外へ発信しました。
3.今後の予定
NEDOは、本事業の成果を基に、世界の水ビジネス市場における日本企業のプロジェクト展開と事業化を推進します。
また、本事業の終了に合わせ、平成26年4月11日に北九州市国際会議場において「海外水循環ソリューション国際シンポジウム in 北九州」を開催します。本シンポジウムでは、「ウォータープラザ北九州」で行っていた実証研究の成果発表の他、国内外から有識者を招き、今後の水ビジネスの展開についての講演・意見交換を予定しています。
4.お問い合わせ先
(本プレスリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:江口、曽我 TEL:044-520-5251
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:遠藤、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp