薄膜系太陽電池で世界最高変換効率20.9%を達成
2014年4月2日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOと昭和シェル石油(株)は、「太陽光発電システム次世代高性能技術の開発※1」事業において、薄膜系太陽電池※2の世界最高※3の変換効率※420.9%を、CIS系薄膜太陽電池※5で達成しました。
今回達成した世界記録は、ドイツのフラウンホーファー研究機構※6で検証、確認されたもので、変換効率を追求した小面積セルではなく、30cm角サブモジュール※7の基板から切り出して作製したセル(セル面積:約0.5cm2)で実現したため、市販製品(90cm×120cm)への早期の技術移転が期待されます。
なお本件は、昭和シェル石油の太陽電池事業子会社であるソーラーフロンティア(株)においても、本日同時間に発表が行われます。
※1 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発
平成22年度から平成26年度までの事業で、今回の成果は、同事業の中で取り組んでいるテーマの一つ「CIS系薄膜太陽電池の高効率化技術の研究開発」の成果。共同研究先は昭和シェル石油、同テーマの予算総額は約20億円。本事業の開発成果は、ソーラーフロンティア(昭和シェル石油の100%子会社)が生産している製品に応用される予定。
※2 薄膜系太陽電池
光を吸収して電気に変換する層の厚みが数マイクロメートルである薄い太陽電池。薄膜シリコン太陽電池、CIS系薄膜太陽電池などがある。
※3 世界最高
2014年4月2日現在、研究レベルにおけるCIS系薄膜太陽電池セルにおけるもの[ソーラーフロンティア調べによる]。
※4 変換効率
太陽電池の重要な性能指標の一つで、光のエネルギーを電気エネルギーに変換する割合。
※5 CIS系薄膜太陽電池
銅、インジウム、ガリウム、錫など、4種類以上の元素からなる化合物を材料とした光吸収層を有する薄膜系太陽電池。日本が世界をリードしている太陽電池。
※6 フラウンホーファー研究機構
世界の太陽電池の変換効率を公的に測定して認証する機関の一つ。
※7 サブモジュール
市販製品(90cm×120cm)に応用する前段階として、試作・検証を繰り返すためのモジュール。
1.背景
現在、導入されている太陽電池の約80%を占めるシリコン結晶の太陽電池は、シリコン結晶から薄く切り出して作製しますが、薄膜系太陽電池は半導体製造技術を用いて、主にガラス基板上に作製します。このため薄膜系太陽電池は大量かつ安価に製造出来る特長があります。但し、シリコン結晶太陽電池は市販製品の変換効率が最高20%程度ありますが、薄膜系太陽電池は変換効率がシリコン結晶太陽電池より低いという課題がありました。変換効率の向上は、太陽光発電における発電コストの低減に大きく寄与するため、世界中の研究機関が取り組んでおり、薄膜系太陽電池の中でもCIS系薄膜太陽電池では20%を超える値での開発競争が行われています。
2.今回の成果
NEDOは、これまでCIS系薄膜太陽電池の開発を昭和シェル石油に委託して進め、2013年1月にカドミウム無しの薄膜系太陽電池として世界最高の変換効率19.7%を達成。今回新たに、セレン化硫化法による光吸収層の改良と、透明導電膜の高性能化によって、太陽電池の最大出力が向上し、変換効率が多結晶シリコン太陽電池の変換効率である20.4%を上回る20.9%を達成しました。これは市販製品のCIS系薄膜太陽電池の変換効率が、市販製品のシリコン結晶太陽電池のそれと同等レベルに成り得る事を意味しています。
3.今後の予定
NEDOは、同プロジェクトでの開発を進め、日本がリードしているCIS系薄膜太陽電池の更なる高効率化と低コスト化を推進していきます。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新エネルギー部 担当:魚住 TEL:044-520-5277
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:遠藤、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp