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3Dプリンターで成形する人工骨を薬事承認申請
―日本発のイノベーション医療技術、実用化へ―

2014年4月7日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫

NEDOの「産業技術実用化開発助成事業」の支援を受けた(株)ネクスト21、東京大学、(独)理化学研究所などの研究チームは、世界初となる3Dプリンターで成形するカスタムメイド人工骨を開発。関連事業※1を通じて同技術のヒトでの有効性と安全性を確認し、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)※2への薬事承認(製造販売承認)申請を完了しました。

開発した人工骨は、3Dプリンターでの成形により、骨内部構造の設計に加え、0.1mm単位での形状再現が可能です。また、自骨への癒合も早く、時間経過で自骨に変化(骨置換)するのが特長です。審査にかかる期間は10ヶ月程度で、2015年に実用化の予定です。

【用語解説】

※1 関連事業
NEDO「産業技術実用化開発費助成金事業」で前臨床試験を実施、NEDO事業終了後、研究チームは独立行政法人医療基盤研究所(NIBIO)の支援により臨床試験を実施。
※2 医薬品医療機器総合機構(PMDA)
医療現場で使用する医薬品や医療機器、日常生活で使用する一般用医薬品や医薬部外品の品質、有効性、安全性の審査を行う機関。PMDAからの審査結果をもって、厚生労働大臣から薬事承認(製造承認)が下りる。
写真左・手術前、写真右・(術後12ヵ月)
カスタムメイド人工骨による骨欠損の治療

1.背景

先天的骨欠損、後天的骨変形、がんなどの腫瘍摘出後骨欠損、外傷による骨欠損などの治療には、その欠損部への骨の移植が必要です。日本では自家骨※3移植が第一選択肢であり、自己の足の骨や腰の骨を外科的に摘出し、手術室にて移植部の形状に削り成形していました。この手術は自骨との癒合は良いのですが、患者への新たな外科侵襲があること、正確に成形して風貌を回復するのが難しいこと、手術時間が長くなり合併症の発生が多くなることなどが問題となっていました。

また、熱処理により焼結した人工骨のブロックから工作機械で削りだして成形する従来のカスタムメイド人工骨は、骨との癒合が難しく、遊離して炎症を起こし表皮から露出してしまうという問題がありました。

海外では献体された死体から摘出された骨を保管して流通させるボーンバンクがありますが、他家骨※4には倫理的問題、感染の問題があります。更には、他家骨の在庫からサイズと形状の合うものを探し、ヒトの手で加工して移植対象患者の風貌に適した形状を作り出すことは大変困難です。

2.今回の成果

今回、研究チームが共同で開発したカスタムメイド人工骨は、成型方法、原材料、硬化処理方法が従来と異なり、3Dプリンターでの成形により、骨内部構造の設計、0.1mm単位の形状再現が可能となります。さらに3Dプリンターによる人工骨の成形は、熱処理が不要のため生理的に活性な特性をもち、自骨への癒合が早く、時間の経過とともに自骨へ変化(骨置換)するのが特長です。

このカスタムメイド人工骨については、NEDOの事業で前臨床試験を完了し、NEDO事業終了後はNIBIOからの研究支援で臨床試験が実施されてきました。

全国規模での臨床試験データから、ヒトでの有効性と安全性が確認されたのを受け、PMDAへの薬事承認(製造販売)申請を実施、この度手続きを完了しました。

  • 写真
    人工骨成形3Dプリンターと製造設備

3.今後の予定

ネクスト21は、薬事承認(製造承認)の取得後、日本で製造したカスタムメイド人工骨の日本市場への普及とともにアジア市場への輸出を計画しています。さらに、本成果は海外からの関心と臨床使用への要望も高く、現在、オランダやカナダの会社とライセンス契約締結に向け、現地のカスタムメイド医療機器の規制への対応や契約条件について交渉も始めています。

また、NEDOは引き続き、日本の産業競争力の強化に貢献するため、ハイリスクハイリターンな研究開発を産学官の英知を結集して支援していきます。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO バイオテクノロジー・医療技術部  担当:佐野、小橋 TEL:044-520-5231

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:遠藤、坂本  TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

【用語解説】

※3 自家骨
自身の体の健全な部分(足や腰)からとる移植骨。摘出するのは身体への負担が大きいほか、摘出できる骨の大きさが限られる。
※4 他家骨
献体された死体から摘出した骨。自身の摘出手術は必要ないが、他の臓器移植の流通で見られるバンク制度が必要になる。主に亡くなった他人の骨を使用するため倫理的な問題や、感染症の危険がある。

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