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微量な血液検査で短時間に大腸がんを発見
―半日以内、早期大腸がんの診断も可能に―

2014年4月8日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫

NEDOの「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発」プロジェクトに取り組んでいる(独)国立がん研究センター研究所と塩野義製薬(株)などの研究グループは、従来の約40分の1の血液量で半日以内に大腸がんの診断が可能な検査手法を開発、実用化に向けた研究開発を開始しました。

同手法は、血液中に存在する微少な小胞であるエクソソーム※1を利用するもので、従来手法では検出できなかった早期大腸がんも診断することが可能となります。

なお、本研究成果は英科学誌Nature姉妹誌のジャーナル「Nature Communications」誌に4月7日付けで掲載されました。

【用語解説】

※1 エクソソーム
細胞から分泌される直径30~100nm程度の微少な小胞で、血液・唾液・尿・乳汁などの体液中に存在する。
画像
図1.新しい診断方法の流れ

1.背景

大腸がんは、国内において胃がんに次いで2番目に罹患者数の多いがんで知られていますが、2015年には胃がんを抜いて罹患者数が最も多くなることが予測されています。

大腸がんの検診方法としては便潜血検査法があり、集団を対象とする検診方法としては費用対効果の高い方法ではありますが、感度・特異度とも十分ではなく進行大腸がんの患者さんにおいても陰性(偽陰性)を示すことがあります。一方、精密検査としての大腸内視鏡検査は、前処置が必要なことや検査に対する恐怖心などから、便潜血検査で陽性となり要精密検査となった方でも受診率が6割程度と低いことが課題です。

大腸がんにおいては高い精度でかつ集団検診でも利用できる効率的な検診方法の開発が急務となっています。今回の方法が大腸がん検診として臨床応用可能であれば、患者、医療者ともに負担軽減につながり、社会的な意義が大変高いと考えられます。

2.今回の成果

本研究グループは、がん細胞に特異的なタンパク質や小さな核酸(マイクロRNA)を含むエクソソームを利用して、従来法では1日かかるエクソソームの検出をおよそ1.5~3時間に短縮し、検出に必要な血液(血清)の量もわずか5マイクロリットルと簡便にすることが出来る方法を開発しました。

本研究では、さらに大腸がん細胞が分泌するエクソソームに多く含まれるタンパク質の存在を明らかにし、大腸がん患者の血液(血清)から大腸がんが分泌したエクソソームを検出しました。また、大腸がん患者194人と健常人191人の血清を解析した結果、従来の血液検査(腫瘍マーカーCEAやCA19-9)と比較して、本方法はAUC※2が高い結果となりました(図2)。さらに従来の血液検査では見つけることが出来なかった早期がんの検出の可能性があることを確認しました。

  • 左:従来法、右:本方法
    図2.診断機能の評価

3.今後の予定

今回の方法は、大腸がんのほか早期発見の難しいすい臓がんや、さらにはがん以外の疾患に対する新たな診断法として期待できます。また、検査方法も、採血だけでなく尿や唾液などへの応用も可能です。NEDOは引き続き本研究開発を支援し、臨床現場で使用できる小型質量分析計との組み合わせによる実用化を目指します。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO バイオテクノロジー・医療技術部 担当:佐野、君島  TEL:044-520-5231

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、遠藤  TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

【用語解説】

※2 AUC
診断能評価の指標の1つである area under the curve のことで、数値が高い方がより診断能が高いと判断できる。

【独立行政法人国立がん研究センター研究所へのリンク】

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