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次世代高耐熱パワー半導体向け「金属セラミック基板」を開発
― -40℃~250℃の温度範囲で1000回のサイクルが可能に―

2014年6月5日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
ファインセラミックス技術研究組合
株式会社ノリタケカンパニーリミテド

NEDOプロジェクト※1において、ファインセラミックス技術研究組合の組合員である(株)ノリタケカンパニーリミテド(以下ノリタケ)は、-40℃から250℃の温度範囲で1000回のサイクルに耐える耐熱サイクル性を実現した金属セラミック基板を開発しました。

金属セラミック基板は、次世代パワー半導体※2材料として期待される炭化ケイ素(SiC) ※3を電力変換器に組み込む際の土台となる部品です。SiC半導体の特長を活かすため、従来品を上回る耐熱性を実現し、高温環境・大電流に対応できることが求められています。

NEDOとファインセラミックス技術研究組合は、実用化に向けて、さらに耐熱サイクル性を向上させた基板技術開発を進めます。また、同技術を実装技術に展開し、高耐熱SiCモジュールの実証を急ぎます。

【用語解説】
  • ※1 「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」2009~2014年度。本成果は、2012~2014年度で実施している研究開発項目(9)「高耐熱部品統合パワーモジュール化技術開発」によるもの。
  • ※2 次世代パワー半導体
    電力変換器に用いられる、従来半導体のシリコン(Si)に比べて、高電圧、高温まで耐えることができ、電力損失が少ないという特長があります。その実力を引き出すために、耐熱強度に優れ、熱伝導が高い放熱基板が必要とされています。
  • ※3 炭化ケイ素(SiC)
    Siに比べて、高電圧に対応でき、電気抵抗も小さく損失が少ない材料です。全ての電力変換器においてSiをSiCに置き換えると電力損失は半分以下になります。
写真
窒化ケイ素をベースに開発した金属セラミック基板

1.背景

現在、社会の省エネルギー化や低炭素化の手段として、電力変換の高効率化が可能な、パワー半導体デバイスの活用が期待されています。

NEDOでは、炭化ケイ素(SiC)によるパワーモジュールを開発すると共に、その周辺技術として熱応力に耐え、発生する熱を効率よく逃がす放熱基板の開発を進めています。放熱基板には、窒化アルミや窒化ケイ素などの、熱伝導性の良いセラミック基板に、銅などの金属を接合した金属セラミック基板が使われています。従来の技術では、銅箔を800℃から1000℃の高温でろう付けして回路パターンを形成するため、製品の使用中に、銅箔とセラミック基板の熱膨張率差で生じる製品劣化や、高温プロセスによる環境負荷が課題となっていました。

2.開発の成果

ファインセラミックス技術研究組合の組合員であるノリタケは、金属ペーストの製造技術とセラミックス基板上に電子回路を形成する技術開発を進めました。そしてこのほど、銅層の熱膨張率を2/3以下に下げ、印刷法と500℃以下の低温焼成で形成できる、金属セラミック基板の開発に成功いたしました。

〔1〕過酷な温度変化が発生する使用環境での安定性を実現
銅層の熱膨張率を銅箔(17ppm/℃)の2/3以下に下げることで、銅層を形成した回路基板において、-40℃⇔250℃で1000サイクルに耐える、耐熱サイクル性を実現できました。
〔2〕実装する部品の高低差を吸収
銅箔を使わず印刷法でパターンを形成するため、銅層の厚みを調整することが容易です。実装する部品の高低差を調節するなど、放熱基板を扱う自由度が高まります。
〔3〕低温焼成によるコスト低減と品質安定
500℃以下の低温焼成でパターンが形成できるため、焼成コストの低減と、焼成時に発生するセラミック基板/銅層界面の歪み軽減が期待されます。
  • 図1
    耐熱サイクル前
  • 図2
    耐熱サイクル後(銅箔厚、温度差が大きい場合)

3.今後の予定

NEDOとファインセラミックス技術研究組合は、実用化に向けて、さらに耐熱サイクル性(現状:-40℃⇔250℃、1000サイクル)を向上させた基板技術開発を進めます。また、同技術を実装技術に展開し、高耐熱SiCモジュールの実証を急ぎます。

ノリタケは、今回開発した金属セラミック基板を、その他の電子部品等も含め応用展開し、製品化を図ってまいります。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 担当:柚須、杉山 TEL:044-520-5211
株式会社ノリタケカンパニーリミテド 広報室 担当:西川 TEL:052-561-7110 E-mail:koho@n.noritake.co.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:遠藤、坂本、佐藤 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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