誤差数センチの日本版GPS、ASEANで実証へ
―準天頂衛星で高精度測位が可能に―
2014年6月26日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOは、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域において、日本の測位衛星、準天頂衛星初号機「みちびき」を活用した高精度の測位システム「準天頂衛星システム(QZSS※1)」の実証事業に着手します。
QZSSは、既に普及している米国の全地球測位システム(GPS※2)等を補強することで誤差数cmという世界最高精度の測位を可能にする“日本版GPS”です。2010年に準天頂衛星初号機の「みちびき」が打ち上げられ、国内での実証例はありますが、海外では十分な精度評価と利用実証が行われていません。
NEDOは、海外における初の利用実証として、経済の発展に伴って高精度なカーナビや自動運転システム、防災システムなどの需要拡大が見込まれるASEAN地域で実証を行うことで、QZSSの利用が可能なアジア・オセアニア地域における日本企業のビジネス展開を後押しします。

1.事業概要
日本の測位衛星「準天頂衛星」を活用した高精度の測位システム「準天頂衛星システム(QZSS)」は、2010年代後半の実用化を目指しており、経済産業省の「準天頂衛星を利用した新産業創出研究会報告書」(2012年)によれば、QZSSの利用が可能なアジア・オセアニア地域で、高精度なカーナビゲーションや鉄道の運行制御、自動車・農業機械の自動運転などの関連分野で、2020年に2.5兆円もの経済効果が見込まれています。
JAXAが開発した準天頂衛星初号機「みちびき」は、2010年に打ち上げられ、これまでに国内での実証事例は多くありますが、海外では十分な精度評価と利用実証が行われていないのが実情です。
このためNEDOは、QZSSの利用によってサービスの高度化・新サービスの創出が図れると期待されるテーマについて、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域において現地調査及び利用実証を行い、利用促進及び普及啓蒙を図るとともに、実用化・ビジネスモデルの構築に向けた課題の抽出を図ることを目的として、以下の研究・実証項目を実施します。
【QZSSの機能を用いたASEAN地域における精度評価及び高精度測位による利用実証】
- 〔1〕ASEAN地域における基礎データ収集および補強信号の精度評価
- 〔2〕QZSS利活用によるASEAN基盤地図整備の有効性評価
- 〔3〕QZSSの高精度ナビゲーションへの利活用と高精度プローブ情報収集の利用実証
- 研究期間:2014年度~2015年度
- 総事業費:約1.5億円(予定)
上記〔1〕について、これまで主に日本で実施されていたQZSSの各種補強信号の効果の検証・評価をASEAN地域で実施するため、同地域で利用可能な補強信号を生成し、送信・もしくは後処理による測位性能向上を定量的に評価します。
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「〔1〕ASEAN地域における基礎データ収集および補強信号の精度評価」のイメージ図
また、測位結果を利用する全ての実用システムには基盤となる地図データが必要とされますが、ASEAN地域においてはこれらの基盤地図の整備が不十分であり、安価に高精度な地図を整備する手法の開発が望まれています。そこで上記〔1〕の成果を踏まえて上記〔2〕を実施し、さらにその応用展開として、同地域内で経済効果の大きい自動車などの地上移動体への応用を上記〔3〕にて実施し、カーナビゲーションおよびテレマティクス※3での活用を実証の対象とします。
【用語解説】
- ※1 QZSS:Quasi Zenith Satellite Systemの略。
- ※2 GPS:Global Positioning Systemの略。誤差10m程度。
- ※3 テレマティクス:「telecommunication(通信)」と「informatics(情報科学)」の造語で、車両情報機器とネットワークを融合させたシステムやサービス。
2.委託予定先
- 本田技研工業株式会社
- 株式会社ゼンリン
- 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO ロボット・機械システム部 担当:加賀谷、樋口 TEL:044-520-5241
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、遠藤、佐藤 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp