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世界市場の獲得狙う医療機器システムを開発へ
―手術支援からリハビリ、治療室まで一体的に展開―

2014年7月1日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫

NEDOは、ロボティクス、IT、画像処理など国際競争力のある技術を応用した革新的医療機器システム開発プロジェクトに着手します。
 このプロジェクトで開発する医療機器システムは、〔1〕これまでよりも多くの部位において内視鏡手術が可能となる軟性内視鏡手術システム、〔2〕脳組織損傷によって麻痺した運動や知覚の回復を可能にするニューロリハビリシステム、〔3〕この2システムを含む多様な医療機器の設定・使用を一元的に管理することが可能なスマート治療室――の3点です。
 医療現場の治療体系に必要な医療機器群を、3つのシステムが連携するパッケージとして開発、提供することで、個別の医療機器開発では得られない相乗効果と高い国際競争力が得られることが期待されます。

1. 概要

医療機器の世界市場が約8%の成長率を維持し、今後も拡大すると予測されている中、我が国の医療機器産業は2012年で約0.7兆円の輸入超過となっています。そのため、現状を打破する製品が日本企業から生まれない限り、この輸入超過は今後も拡大することが予想されます。
 こうした背景からNEDOは医療機器一つ一つの開発ではなく、パッケージとして医療現場の治療体系に必要な医療機器群を開発する、「未来医療を実現する先端医療機器・システムの研究開発」(事業期間:2014年から2019年、総事業費:約50億円)を開始。高性能・高機能な機器の開発はもとより、それぞれをリンクさせ、システムとして開発することで、将来的には日本発の医療機器として日本市場だけでなく、世界市場においても高い競争力を発揮することを目的としています。それぞれの開発内容詳細は以下の通りです。

<軟性内視鏡手術システム>

硬性内視鏡手術ロボットの登場により、手術の低侵襲化・高精度化が進みましたが、膵臓癌など硬性内視鏡での手術が難しい部分が多く、依然として開腹手術が主流です。また、これまで消化器内視鏡の延長線上で開発された軟性内視鏡手術システムは、鉗子の操作に極めて高度な技量を要し普及してきませんでした。本プロジェクトでは、日本が得意とする軟性内視鏡とロボティックスの融合により、医師が手術野を俯瞰しながら直観的に操作可能な新しい軟性内視鏡手術システムを開発します。開発する技術は、〔1〕手術中にリアルタイムで重要な器官を確認するためのセンシング技術、かつ、広い視野を高精度に捉える手術用内視鏡(内視鏡の眼)、〔2〕眼と独立に動き、広い動作範囲と高い把持力で多様な手術方法に対応できるロボット鉗子(内視鏡の手)、および〔3〕ロボット鉗子の直観的な操作を可能とするコンソールセットです。

図1

<ニューロリハビリシステム>

脳卒中は、2013年の国内患者数が280万人で、高齢者医療費・要介護原因の第1位を占めます。世界的にも脳卒中患者数は約3,600万人であり、社会的、経済的インパクトの極めて大きな疾患です。脳卒中による重度麻痺は従来回復方法がありませんでしたが、本プロジェクトでは、脳組織損傷により運動信号発信ができなくなった脳に可塑性※1を誘導することで、麻痺した運動や知覚の回復を可能にする医療機器を開発します。開発する技術は、〔1〕損傷した脳に運動の錯覚を誘導するための映像装置、〔2〕革新的脳活動センシング装置、〔3〕BMI(ブレインマシンインターフェイス)リハビリロボットシステム、および〔4〕リハビリ効果定量的評価システムです。

図2

<スマート治療室>

現状、治療室では様々な診断/治療機器が使用されますが、これらの操作・表示方法は統一されておらず個別の設定が必要です。また、医療機器の準備・設定ミスに起因する事故は医療事故全体の約1/4を占める状況にあると言われています。本プロジェクトでは、こうした問題を解消し、安全性の向上および医療効率向上の礎とするため、多様な医療機器の設定・使用を一元的に管理する情報処理基盤を備えた治療室を開発します。このスマート治療室には、上述の、軟性内視鏡手術システムやニューロリハビリシステムもつながっていくことになります。

図3

2. 委託予定先

それぞれのプロジェクトテーマに関する委託予定先は以下の通りです。

<軟性内視鏡手術システム>

委託予定先: 学校法人慶應義塾、川崎重工業株式会社、株式会社トップ、国立大学法人高知大学、パナソニック株式会社AVCネットワークス社、パナソニック株式会社オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社

<ニューロリハビリシステム>

委託予定先: 学校法人慶應義塾、パナソニック株式会社エコソリューションズ社、株式会社島津製作所、日本光電工業株式会社、パシフィックサプライ株式会社、株式会社ソリトンシステムズ、インターリハ株式会社、北海道公立大学法人札幌医科大学

<スマート治療室>

委託予定先: 学校法人東京女子医科大学、国立大学法人広島大学、国立大学法人信州大学、国立大学法人東北大学、株式会社デンソー、ミズホ株式会社、パイオニア株式会社、株式会社日立メディコ、日本光電工業株式会社、株式会社セントラルユニ、東芝メディカルシステムズ株式会社、エア・ウォーター株式会社、株式会社日立製作所

3. 問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO バイオテクノロジー・医療技術部 担当:田村、山下 TEL:044-520-5231

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、佐藤 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

【用語解説】

  • ※1 脳の可塑性: 元々別の機能を果たしていた脳神経細胞が、損傷した細胞の機能を代替するように変化する性質のこと