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エネルギー消費とCO2排出を6割以上削減できるECMセメントを開発
―コンクリート構造物のエネルギー原単位を約30~60%削減―

2014年8月5日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
株式会社竹中工務店
鹿島建設株式会社
株式会社デイ・シイ
日鉄住金高炉セメント株式会社

NEDOプロジェクト※1において、(株)竹中工務店、鹿島建設(株)、(株)デイ・シイ、日鉄住金高炉セメント(株)などのグループは、セメント生産におけるエネルギー消費量と二酸化炭素(CO2)排出量を従来のセメントよりも6割以上削減するエネルギー・CO2・ミニマム(ECM)セメント※2を開発しました。
 鉄鋼の製造工程において副産物として発生する高炉スラグを多量に含有したセメントは、施工と品質上の課題がありましたが、成分構成と粒度構成の研究によるセメント技術、建設技術の融合により、これらの課題を克服するECMセメントを開発。このECMセメントを用いたコンクリート構造物は、エネルギー・CO2原単位を30~60%削減できることも確認しました。
 今後、ECMセメントの長所となる物性を活かし、基礎構造物(地盤改良、杭)や躯体構造物(建築地下構造物、土木構造物)を中心に、実物件への早期適用を目指します。

※1 NEDOプロジェクト:省エネルギー革新技術開発事業/実用化研究/エネルギー・CO2ミニマム(ECM)セメント・コンクリート システムの研究開発(平成23年度~平成25年度)

※2 ECM(Energy・CO2・Minimum)セメント:鉄鋼製造の副産物である高炉スラグを主体とする、焼成不要のセメント

今回開発したECMセメントと今回開発したECMセメントを用いた構造体の写真

1.概要

我が国から排出されるCO2の3%強はセメント製造に由来しています。本事業では、鉄鋼産業の副産物である高炉スラグを反応の主材とするECMセメントと、ECMセメントを利用するための構造物の基礎および地上構造体を同時に研究開発し、セメント製造時のエネルギー消費量を約60~70%(ポルトランドセメント※3比)削減するとともに、コンクリート構造物のエネルギー原単位を約30~60%削減することを可能としました。実施した研究成果により、基本となるECMセメントの組成と品質管理技術の開発に成功し、ECMセメントを地盤改良体とコンクリート構造物に実用化できることを確認しました。

2.今回の成果

[1]セメントの製造時のエネルギー消費量を60~70%削減することに成功

産業副産物である高炉スラグを約60~70%混合することで、セメントの製造に要するエネルギー消費量の60%以上の削減に成功しました。従来、このような高炉スラグを高含有したセメントの使用には施工と品質上の課題がありましたが、今回、ECMセメントの成分構成と粒度構成の研究によるセメント技術と、それを使う建設技術との融合により、これらの課題を解決しました。またECMセメントは、従来の高炉セメント※4よりも発熱が少なく、熱ひび割れ抵抗性に優れることも特徴です。

[2]コンクリート構造物のエネルギー原単位を30~60%削減することに成功

開発したECMセメントを基礎構造として地盤改良と場所打ちRC杭※5に、また地上躯体としてCFT構造※6、高強度RC構造および大断面土木構造物に適用可能であることを、地盤改良またはコンクリートの硬化体レベル、さらに構造体レベルでの実験的検討により示しました。これらの検証により、コンクリート構造物のエネルギー原単位を従来よりも30~60%削減できることが明らかとなりました。

  • 製造から構造体および施工方法(地盤改良体)の図

3.今後の予定

今後、開発したECMセメントの更なる性能改善を進めるとともに、実際の建設物に適用を進めていきます。基礎構造物(地盤改良体、杭)、躯体構造物(建築地下躯体、土木構造物)を対象に導入と普及を目指します。

4.実施者

  • 株式会社竹中工務店
  • 鹿島建設株式会社
  • 株式会社デイ・シイ
  • 日鉄住金高炉セメント株式会社
  • 国立大学法人東京工業大学(共同研究先)
  • 太平洋セメント株式会社(共同研究先)
  • 日鉄住金セメント株式会社(共同研究先)
  • 竹本油脂株式会社(共同研究先)

5.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 省エネルギー部  担当:石原、杉村  TEL:044-520-5281

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部  担当:坂本、佐藤  TEL:044-520-5151  E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

【用語解説】

※3 ポルトランドセメント:高温で焼成したカルシウムシリケートを主成分とするクリンカーに適量のセッコウを加え、微粉砕して製造され、一般の用途に用いる汎用性のあるセメント。販売されているセメントの約70%を占める。

※4 従来の高炉セメント:一般に流通している高炉セメントB種。高炉スラグ混合量40~45%のセメント。

※5 場所打ちRC杭:建設・工事現場において、所定の場所を堀削して、その中にコンクリートを打ち込むRC(Reinforced Concrete:鉄筋コンクリート)造の杭

※6 CFT構造:CFT(Concrete Filled Steel Tube:コンクリート充填鋼管)構造。鋼管の内部にコンクリートを充填した構造で、主に柱として使用される。

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