ナノ炭素材料の実用化を加速、新規研究開発に着手
―革新的ナノ炭素材料の開発と安全性・特性評価技術を開発―
2014年8月14日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOは、これまでの単層カーボンナノチューブに加え、ナノ炭素材料全般の実用化を加速するため、16テーマの助成事業と3つの委託事業を新たに開始します。
ナノ炭素材料は、軽量かつ電気や熱の伝導性が極めて高いなど、多くの優れた特性を有しており、既存材料と混合することで、今までにない革新的な材料を生み出すことが期待されます。この革新的なナノ炭素材料を開発するとともに、安全性・分散体評価技術※1を開発することで、産業界における実用化の加速を目指し、研究開発を実施します。
新しい事業は2014年度から2016年度の3年間です。
【用語解説】
- ※1 分散体評価技術:
種々の既存材料にナノ炭素材料を混合させた材料の特性付与メカニズムを評価・解析する技術。
1.プロジェクト概要
カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等のナノ炭素材料は、非常に軽量であることから構造部材への応用が期待されるとともに、電気や熱の伝導率が高いことから、放熱部材への応用や、導電性材料への応用で、省エネルギー効果を高めることが期待できます。
本プロジェクト※2ではこれらナノ炭素材料について、高耐熱複合部材、フレキシブル薄膜、高電子移動度半導体デバイス等実用化を加速するための研究開発を実施します。さらに、安全性、分散体評価技術を共通基盤技術として開発し、試料提供、技術移転等を通じて、実用化を目指す企業をサポートします。
2.助成事業概要と助成予定先一覧
本プロジェクトのうち、研究開発項目(1)「ナノ炭素材料の実用化技術開発」を助成事業として新たに開始します。
本研究開発項目では、ナノ炭素材料の実用化を加速するため、ナノ炭素材料透明導電膜やナノ炭素材料高耐熱複合部材の開発等を実施します。
テーマ名 | 助成予定先 |
---|---|
半導体型単層カーボンナノチューブ 半導体ポリマー複合体トランジスタの開発 | 東レ株式会社 |
イオンを用いない金属型・半導体型CNT分離の実用化技術開発 | 日本電気株式会社 |
フラーレン類生産性向上技術開発と実証試験 | 昭和電工株式会社 |
CNT透明導電膜の開発 | 東レ株式会社 |
グラファイト/グラフェンパウダーを活用した機能性複合材料の実用化 | パナソニック株式会社 |
ナノ炭素材料軽量導線の開発 | 帝人株式会社 |
界面化学制御によるCNT複合材料のイノベーションと実用化 | 日信工業株式会社 |
高熱伝導高分子複合材料(放熱材料)の開発 | 日本ゼオン株式会社 |
高効率CNT合成技術の開発 | 日本ゼオン株式会社 |
ウェーハ状大面積グラフェンを活用したテラヘルツ帯デバイスの実用化 | 住友電気工業株式会社 |
カーボンナノチューブによるCFRP製スポーツ用品の研究開発 | 美津濃株式会社 |
カーボンナノチューブ超高分散材料の大量生産技術の開発 | 株式会社GSIクレオス |
高濃度カーボンナノチューブ分散液の作製及び量産化技術の構築 | KJ特殊紙株式会社 |
酸化グラフェン大量生産技術の確立 | 株式会社日本触媒 |
メタン直接改質法によるLIBマリモ状多層CNT-Si系負極材料の開発及び事業化 | 戸田工業株式会社 |
nano-G(爆轟ナノグラファイト)応用製品の実用化 | 株式会社神戸製鋼所 |
3.委託事業概要と採択予定先一覧
本プロジェクトのうち、研究開発項目(2)「ナノ炭素材料の応用基盤技術開発」の一部を委託事業として新たに開始します。
新たに開始する研究開発項目では、実用化に通じる安全性、分散体評価技術を共通基盤技術として開発します。また、革新的材料を開発し、試料提供、技術移転等を通じて、実用化を目指す企業をサポートします。
<今回新たに開始する研究開発項目>
- (2)-1-2 「ナノ炭素材料及びその応用製品の排出・暴露評価技術の確立」
-
ナノ炭素材料の簡便な自主安全管理支援技術、およびナノ炭素材料及びその応用製品の排出・暴露評価技術を開発し、ナノ炭素材料の製造者、応用製品開発事業者が自ら実施できるよう普及することを目的とします。
- (2)-2 「ナノ炭素材料の分散体評価技術の開発」
-
ナノ炭素材料と既存材料を複合化する際、ナノ炭素材料を分散させ、既存材料と複合化する必要があります。そこで、ナノ炭素材料の分散液等の定量的な評価技術を開発し、ナノ炭素材料の分散状態に関する知見を与え、用途開発企業による実用化を加速します。
- (2)-3-4 「ナノ炭素材料の革新的応用材料開発」
-
超高強度炭素繊維プリプレグ、ナノ炭素銅線材・配線等に使用することができ、工業的に量産可能で、大きな市場が目指せるナノ炭素材料の分散液等の革新的応用材料を開発します。研究開発成果については、サンプル提供を実施し、その結果を研究開発へフィードバックすることで、より応用を見据えた研究開発を実施します。
- (2)-3-5 「ナノ炭素材料の革新的薄膜形成技術開発」
-
ナノ炭素材料の高品質で工業的な薄膜等の革新的形成技術の開発を行います。応用先として、タッチパネル、電磁波遮蔽、放熱材、有機EL、トランジスタなどに向けた革新的薄膜形成技術を開発します。研究開発成果については、サンプル提供を実施し、その結果を研究開発へフィードバックすることで、より応用を見据えた研究開発を実施します。
研究開発項目 | 採択予定先 |
---|---|
(2)-1-2、(2)-2、(2)-3-4、(2)-3-5 | 技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構 |
(2)-2 | 国立大学法人山形大学 |
(2)-3-4 | スペースリンク株式会社 |
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 担当:賀川、小森、橋本 TEL:044-520-5210
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、佐藤(丈) TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp
【用語解説】
- ※2 プロジェクト:
「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」(2010年度~2016年度)。
新しい事業は2014年度から2016年度の3年間。