府省の枠を越えSIPパワーエレクトロニクスプロジェクト始動へ
―さらなる省エネルギー化と産業競争力強化のために―
2014年9月12日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOは、省エネルギー化のためのキーテクノロジーであるパワーエレクトロニクス※1の性能向上や用途と普及の拡大を図り、一層の省エネルギー化の推進と産業競争力の強化を進めるため、11テーマの委託事業を開始します。
本事業は、内閣府が推進するSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の課題の一つである「次世代パワーエレクトロニクス」を、同テーマの管理法人としてNEDOが実施するものです。本事業の期間は2018年度末までの5年間です。
本事業の成果は、応用システム開発を中心とした事業※2への橋渡しを行うことなどにより、早期の実用化・事業化を目指します。

【用語解説】
※1 パワーエレクトロニクス:半導体素子を用いて電力の変換や制御を行う技術。例えば、太陽光発電の直流・交流変換や電車のモータ制御などに用いられている。
※2 「低炭素社会を実現する次世代パワーエレクトロニクスプロジェクト」研究開発項目〔3〕次世代パワーエレクトロニクス応用システム開発 2014~2019年度。
1.事業概要
本事業は、内閣府が推進するSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の10課題の一つである「次世代パワーエレクトロニクス」を、同テーマの管理法人としてNEDOが実施するものです。
戦略的イノベーション創造プログラムとは、総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設されたプログラムです。課題ごとにプログラムディレクターを選定しており、本事業では、大森達夫氏(三菱電機株式会社 開発本部 役員技監)をプログラムディレクターとして、基礎研究から出口(実用化・事業化)までを見据え、規制・制度改革を含めた取組を推進します。
本事業では、以下の4つの研究開発項目を実施します。
●研究開発項目I SiC※3に関する拠点型共通基盤技術開発
(高耐圧化、小型化、低損失化、信頼性向上)
●研究開発項目II GaN※4に関する拠点型共通基盤技術開発
(ウエハ及びデバイスの高品質化)
●研究開発項目III 次世代パワーモジュールの応用に関する基盤研究開発
(回路、使いこなし技術)
●研究開発項目IV 将来のパワーエレクトロニクスを支える基盤研究開発
(新材料、新構造等)
2.委託テーマ及び予定先一覧
本事業では、以下の11テーマを委託事業として実施する予定です。
研究開発項目 | テーマ名 | 委託予定先(順不同) |
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I | SiC次世代パワーエレクトロニクスの統合的研究開発 | 独立行政法人産業技術総合研究所 国立大学法人京都大学 国立大学法人大阪大学 一般財団法人電力中央研究所 |
ハイブリッド自動車向けSiC耐熱モジュール実装技術の研究開発 | 学校法人早稲田大学 国立大学法人九州工業大学 |
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II | GaN縦型パワーデバイスの基盤技術開発 | 国立大学法人京都大学 三菱化学株式会社 住友電気工業株式会社 株式会社豊田中央研究所 富士電機株式会社 パナソニック株式会社 独立行政法人産業技術総合研究所 国立大学法人大阪大学 国立大学法人北海道大学 国立大学法人名古屋大学 国立大学法人福井大学 国立大学法人京都工芸繊維大学 国立大学法人筑波大学 国立大学法人東北大学 |
III | 次世代パワーモジュールを使用したパワーエレクトロニクス機器とその統合システムの包括的研究開発 | 国立大学法人東京工業大学 公立大学法人首都大学東京 国立大学法人大阪大学 国立大学法人千葉大学 国立大学法人名古屋工業大学 国立大学法人横浜国立大学 国立大学法人筑波大学 国立大学法人北海道大学 国立大学法人山口大学 三菱電機株式会社 富士電機株式会社 |
EVモータ駆動用機電一体インバータの研究開発 | 学校法人芝浦工業大学 | |
IV | 超高次非線形誘電率顕微鏡法を用いたSiC基板材料及びパワーエレクトロニクス素子の高性能化に資する評価技術の開発 | 国立大学法人東北大学 |
材料科学に基づく4H-SiC上の高品質ゲート絶縁膜形成手法の研究開発 | 国立大学法人東京大学 | |
酸化ガリウムパワーデバイス基盤技術の研究開発 | 独立行政法人情報通信研究機構 株式会社タムラ製作所 国立大学法人東京農工大学 新日本無線株式会社 株式会社シルバコ・ジャパン |
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パワーデバイス用ダイヤモンド合成基盤技術の研究開発 | 独立行政法人物質・材料研究機構 国立大学法人東京工業大学 独立行政法人産業技術総合研究所 コーンズテクノロジー株式会社 |
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ダイヤモンドパワーデバイス用ウエハの研究開発 | 独立行政法人産業技術総合研究所 国立大学法人千葉大学 国立大学法人大阪大学 |
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SiCパワーデバイス応用による低容量小型パワー集積回路開発およびパワープロセッシング技術の研究開発 | 国立大学法人京都大学 学校法人千葉工業大学 学校法人東京電機大学 |
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 電子・材料・ナノテクノロジー部 担当:明日、真多、間瀬 TEL:044-520-5211
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、佐藤 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp
【用語解説】
※3 SiC:シリコンカーバイド(炭化ケイ素)。ケイ素と炭素の化合物で、これを用いて作った半導体デバイスを従来のシリコン半導体デバイスに比べると、内部の電力損失が1/100と小さく、高い周波数・高い温度(300℃程度まで。Siの場合は100℃程度まで)で使用することができる。
※4 GaN:窒化ガリウム。ガリウムと窒素の化合物で、これを用いて作った半導体デバイスは、SiCと同様に電力変換時の損失が小さく、より高速でスイッチングできるという特徴があり、次世代パワーエレクトロニクスの材料として期待されている。