世界初、油圧ドライブトレインを採用した大型風車を開発
―世界最大級7MW大型風力発電を英国で実証―
2015年2月5日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOプロジェクトにおいて、三菱重工業株式会社は、デジタル可変容量制御の油圧ドライブトレインと長翼ブレードを開発、世界で初めて同技術を採用した世界最大級の7MW大型風力発電設備を英国ハンターストーンに設置しました。
デジタル可変容量制御を行う新型油圧ドライブトレインは、従来のドライブトレインでは難しかった、大型化に伴う様々な課題を解決するとともに、更なる大型化が進む次世代風車への適用が期待できる画期的な技術です。
今後、陸上での実証試験を行い、様々なデータを蓄積することで、大型風車の実用化を進めていきます。

(ブレード長さ:81.6m、ナセル中心高さ:約110m、ブレード先端までの高さ:約200m)
1.概要
NEDOは2011年度より「超大型風力発電システム技術研究開発」で、洋上風力市場のニーズが高い7MW級以上の大型風車を実現するために、コスト競争力の高い、革新的なドライブトレイン、長翼ブレード及びメンテナンス性を向上させる遠隔監視技術(コンディショニングシステムなど)を持った風車の開発を推進してきました。
NEDOプロジェクト※1において、三菱重工業株式会社は、デジタル可変容量制御を行う新型油圧ドライブトレイン※2と長翼ブレードを開発、世界で初めて同技術を採用した世界最大級の7MW大型風力発電設備を英国ハンターストーンに設置し、陸上での実証試験を行います。
デジタル可変容量制御を行う新型油圧ドライブトレインは、従来のドライブトレインでは難しかった、大型化に伴う様々な課題を解決するとともに、更なる大型化が進む次世代風車への適用が期待できる画期的な技術です。
2月4日(現地時間)に、実証試験サイト近くの英国グラスゴーで式典を行いました。式典には、NEDO理事 土屋宗彦のほか、在エディンバラ日本国総領事館 北村総領事、三菱重工業株式会社の関係者が参加し、また、英国からは電力大手のスコティッシュ・アンド・サザン・エナジー社(SSE)やビジネス・イノベーション・職業技能省(BIS)の関係者らが参加しました。
2.今回の成果
本事業で開発した新型油圧ドライブトレインは、下図のように、従来のドライブトレインと異なり、風車の回転エネルギーをポンプで油圧に変換し、その油圧でモーターを介して発電機を回転させて電気に変換する機構です。具体的には、油圧をデジタル制御し、ブレードの回転速度(約10回転/分)を、発電機の回転速度(1000回転/分)に増速します。

図2 新型油圧ドライブトレインを用いた風車の概要
新型油圧ドライブトレインは、従来のドライブトレインでは難しかった、大型化に伴って生じる技術面、コスト面、材料調達面等の様々な課題を解決することが可能な優れた技術です。また、油圧ドライブトレインは風車の発電量の増加への拡張性、対応性が高く、今後、更なる大型化が進む次世代風車への適用が期待できる画期的な技術です
特 徴 | |
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増速機 |
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発電機 |
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電力変換装置 | ・電力変換装置(周波数変換機)が不要 |
今般、本プロジェクトにおいて、世界初、デジタル可変容量制御を行う新型油圧ドライブトレインを採用した世界最大級の7MW大型風力発電設備を開発し、英国ハンターストーンに設置いたしました。
3.今後の予定
本事業で開発した7MW大型風力発電設備は、今後、英国ハンターストーンで、陸上での実証試験を行います。この実証試験から様々なデータを蓄積することで、大型風車の実用化を進めていきます。
【用語解説】
- ※1 超大型風力発電システム技術研究開発(2011~2014年度)
- ※2 デジタル可変容量制御の油圧ドライブトレイン
- 英国のベンチャー企業であるアルテミス社の持つ、優れた油圧デジタル制御技術をベースに、同社と三菱重工業株式会社が共同で開発した技術。ローター軸と発電機軸が繋がっておらず、風車の回転力が油圧に変換され、その油圧によって発電機軸を高速回転させる動力伝達機構のこと。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新エネルギー部 担当:大西、須田、佐々木 TEL:044-520-5273
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:上坂、佐藤、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp