マレーシア・パハン大学と廃水から有用金属を回収する技術開発を開始
―日本の中小企業が保有する環境技術を国際展開―
2015年6月16日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 古川一夫
NEDOは、マレーシア・パハン大学と「金属廃液・汚泥から有用金属を回収し、汚泥を削減する研究開発・実証事業」を共同で開始することに合意し、基本合意書(MOU)を締結しました。NEDOの国内プロジェクトにおいて開発した技術を活かし、本プロジェクトを通じて、日本の中小企業による優れた技術を同国に適用させ普及展開を図ります。
1.概要
現在、マレーシアでは、工場から排出される廃液や汚泥は埋立処分されていますが、埋立地不足や処分費用の高額化が問題となっており、低コストかつ排出される汚泥量を削減する処理技術の普及が望まれています。
NEDOは、2009~2013年度に、「有用金属・有害物質の分離・回収技術の開発(委託先:株式会社アクアテック)」を実施し、めっき工場等から排出される金属を含有する廃液・汚泥から有用金属を80%以上回収し、最終的な廃棄汚泥量を80%削減するシステムを開発しました。今般、同国における本技術の適用可能性を実証し普及展開を推進するため、NEDOとマレーシア・パハン大学との間で基本協定書(MOU)を締結しました。今後、パハン大学との共同研究を通じ、同国における環境問題の解決と日本の中小企業による優れた技術の普及展開に向けた取り組みを進めていきます。
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本技術による有用金属回収プロセス例
2.実証事業の内容
(1)期間
2015年度
(2)実施者・体制
- 委託先:
- 株式会社アクアテック
- NEDOのMOU締結先:
- パハン大学(マレーシア)
- 現地協力企業:
- アコット社(マレーシア)
(3)総事業費
1.9億円
3.技術の内容
めっき工場等からの排水には有害金属が含有されていますが、環境保全のために、環境基準値以下に含有金属を除去して河川に放流しています。一方、限りある金属資源を有効的に使用していくためには、これらの廃液や廃棄物に含まれる金属を回収、リサイクルすることが重要です。
現在、もっとも普及しているのは水酸化物法ですが、この方法は、排水中の含有金属を金属汚泥と呼ばれる汚泥状態で分離しますが、この金属汚泥は含水率が高い上に金属含有量が少なく、また、さまざまな種類の金属が混ざり合った状態のため、リサイクルされず産業廃棄物として埋め立て処分がなされているのが現状です。
一方、金属回収量を大きくする手法として、硫化物法が開発されましたが、硫化物法は、添加する硫化剤が過剰になると処理時に有害な硫化水素ガスを発生し、また、処理が不安定化する等の課題があり世界的に普及しませんでした。そこで、2009~2013年度のNEDOプロジェクトにおいて、リアルタイムで硫化水素ガスを測定し、検知したガスの濃度に従い硫化剤の添加量を制御することでガスの発生を抑え、かつ、安定的な処理を可能とする「新硫化物法(NS法)」を開発しました。また、このNS法と従来の水酸化物法等と組み合わせた新しいプロセスを開発し、99%以上の純度でニッケルを回収し、水酸化物法に比べ最終的に処分が必要な汚泥量を80%削減することを可能としました。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:石井(彰)、小川 TEL:044-520-5251
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:髙津佐、坂本、佐藤 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp