NEDOの「グリーンホスピタル促進事業」がJCMプロジェクトに登録
―ベトナムの病院で行うエネルギー・マネジメント・システムの実証事業―
2015年12月9日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOがベトナムで実施中の「グリーンホスピタル促進事業」が、日本の技術を同国に導入して温室効果ガスを削減、その一部を日本の削減分に繰り入れる二国間クレジット制度(JCM)プロジェクトに登録されました。
本事業は、ベトナムの2つの国営病院にインバーターエアコンを約1,000台導入し、それらを効率的に連携制御するエネルギー・マネジメント・システムを用いた技術実証と温室効果ガスの排出削減効果の検証を行うものです。病院全体の省エネ効果は約35%を見込んでおり、併せて院内空気質の改善も図ります。

1.概要
ベトナムは、2013年から省エネルギーラベル制度※1を導入し、省エネルギー製品の普及を図っています。NEDOは、2014年8月にベトナム商工省(MOIT:Ministry of Industry and Trade)と基本協定書(MOU)を締結し、病院全体の省エネルギー化に向けたエネルギー・マネジメント・システムの実証事業を進めてきました。
この度12月8日、NEDOの推進する「グリーンホスピタル促進事業」が、日本・ベトナムJCM※2合同委員会により承認を受け、JCMプロジェクトとしての登録手続きが完了しました。NEDOの実証事業として初のプロジェクト登録となります(11月30日付登録)。
本事業では、ハノイとホーチミンの国営病院に、省エネルギーラベル制度に適合した高効率性能のインバーターエアコン約1,000台を導入し、エアコン間の連携運転技術を開発・導入することにより、病院全体の空調の高効率化を図ります。加えて、換気の適正化による院内空気質の改善も同時に行い、「グリーンホスピタル」の確立・促進を目指します。また、JCMプロジェクトとして1年間のモニタリング期間を設け、長期的な二酸化炭素(CO2)削減効果、省エネルギー効果についても検証します。
インバーターエアコンの性能評価については、ベトナムでは省エネルギーラベル制度の開始に伴い、期間冷房エネルギー消費効率※3(CSPF)を採用しています。CSPFは、年間を通じた総合負荷と総消費電力量から効率を求める方式であるため、病院のように年間を通じて連続した空調が必要な環境でも、インバーターエアコンの性能評価を適切に実施することができます。そこで本事業では、ベトナム唯一の認証機関であるエネルギー鉱山機械工学研究所/工業試験検査所(TVCI/IEMM※4)に、CSPFに対応した平衡式室型熱量測定装置を導入して、性能評価も行います。
本事業では、地球温暖化問題解決に向けた意識の高い日本・ベトナム両国関係者のはたらきかけにより、環境十全性に配慮し、廃棄するエアコンからフロン類を適切に処理することがJCMプロジェクトの適格性要件として求められています。
NEDOは、引き続き、JCM実証事業を通して地球規模の環境問題の解決に向けた取り組みを続けていきます。
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実証サイト(ハノイ市の国営病院)
- 予算規模:
- 約6.0億円(予定)
- 事業期間:
- 2013年度~2017年度(予定)
- 委託先:
- 三菱電機株式会社、三菱商事株式会社、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
(本実証事業は経済産業省の支援を受け推進しています。)
2.今後の予定
本事業では、2015年度から2017年度にかけて、実証運転の実施によるデータの評価・検証を実施します。また、JCMの制度下での排出削減量のモニタリング・検証を合わせて行います。加えて、ベトナム商工省とは、同国で始まった省エネルギーラベル制度で、本実証事業で導入するインバーターエアコンの性能評価を行うとともに、ベトナムにおけるグリーンホスピタルのモデルづくりなど、普及促進に向けた活動を行います。
【用語解説】
- ※1 省エネルギーラベル制度
- 冷蔵庫やエアコンなどの家電製品に、省エネルギー性能を示すラベルの貼り付けを義務付ける制度。
- ※2 JCM:Joint Crediting Mechanism
- 二国間クレジット制度。途上国への温室効果ガス削減技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への我が国の貢献を定量的に評価するとともに、我が国の削減目標の達成に活用するものです。外務省、経済産業省、環境省の三省で関心国と二国間協議を進めており、現在、モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ、サウジアラビア、チリ、ミャンマー、タイの16ヶ国がJCMに関する二国間文書に署名しています。
- ※3 期間冷房エネルギー消費効率(CSPF:Cooling Seasonal Performance Factor)
- 実際の使用時に近い状態での評価を行うためにモデルケースを定め、年間を通じた総合負荷と総消費電力量を算出し、効率を求める方式。冷房期間で発揮した能力の総和(kWh)÷冷房期間の消費電力量の総和(kWh)で表される。
- ※4 TVCI/IEMM
- Testing and Verifications Centre for Industry/Institute of Energy and Mining Machine
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 京都メカニズム事業推進部 担当:小林、窪田 TEL:044-520-5185 E-mail:pkfs@ml.nedo.go.jp
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:佐藤、坂本、髙津佐 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp