薄膜系太陽電池で世界最高の変換効率を達成
―NEDOプロジェクトによりCIS系で22.3%―
2015年12月8日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOは、ソーラーフロンティア(株)との共同研究を通して、CIS系薄膜太陽電池のセルにおいて変換効率22.3%を達成しました。今回達成した変換効率は、薄膜系太陽電池の世界記録である21.7%を0.6ポイント塗り替えるものです。

1.概要
NEDOは、2030年までに太陽光発電の発電コストを7円/kWh(従来型火力発電並の発電コスト)にするという目標の達成を目指して、発電コスト低減技術の開発を進めています。太陽電池の変換効率※1向上は、太陽光発電における発電コストの低減に大きく寄与するため、世界中の企業、研究機関が取り組んでいます。特に、薄膜系太陽電池は、省資源で生産性に優れ低コスト化できるという特長があり、さらなる変換効率向上が期待されています。
2.今回の成果
これは、NEDOの「太陽光発電システム次世代高性能技術の開発※2」プロジェクトの成果であり、NEDOの共同研究先であるソーラーフロンティア(株)が、太陽光を吸収するCIS光吸収層の表面部分の品質向上や太陽電池内部の境界面の形成技術の改良に取り組み、CIS系薄膜太陽電池※3の世界最高※4変換効率22.3%を達成(ドイツのフラウンホーファー研究機構※5で検証、確認)しました。この変換効率は、薄膜系太陽電池に比べて高性能と言われている多結晶シリコン系太陽電池においても未達成であり、これまでの薄膜系太陽電池の世界記録を大きく上回るものです。
作製したCIS系薄膜太陽電池のセル(約0.5cm2)に用いた製法は、ソーラーフロンティア(株)の主力工場である国富工場(宮崎県国富町)で採用している技術と同じもので、量産にも適しているため、市販製品(90cm×120cm)への早期の応用が期待されます。
3.今後の予定
ソーラーフロンティア(株)は、本プロジェクトで得られた成果について、大面積での面内均一性と製造プロセス再現性の確認のための検証を行った後、実用化する予定です。
NEDOは、太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)※6で掲げる発電コスト目標(2030年7円/kWh)の実現に資する高性能と高信頼性を両立した太陽電池の開発を進めていきます。
【用語解説】
- ※1 変換効率
- 太陽電池の重要な性能指標の一つで、光のエネルギーを電気エネルギーに変換する割合のこと。最大出力を太陽電池セル・モジュール面積と放射照度との積で除した値。
- ※2 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発
- 2010年度から2014年度までの事業で、今回の成果は、同事業の中で取り組んでいるテーマの一つ「CIS系薄膜太陽電池の高効率化技術の研究開発」の成果。共同研究先はソーラーフロンティア(株)。
- ※3 CIS系薄膜太陽電池
- 銅、インジウム、セレン他による化合物を光吸収層とした太陽電池。
- ※4 世界最高
- 2015年12月8日現在、研究レベルにおけるCIS系薄膜太陽電池セルにおけるもの[ソーラーフロンティア(株)調べによる]。
- ※5 フラウンホーファー研究機構
- ドイツにある太陽電池の変換効率を公的に測定して認証する機関の一つ。太陽エネルギー分野における欧州最大の応用研究機関。
- ※6 太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)
- 2014年9月、NEDOが公表した太陽光発電の新たな技術開発指針。2009年の「太陽光発電ロードマップ(PV2030+)」以来、5年ぶりに策定した技術開発指針であり、発電コスト目標として、2020年に14円/kWh、2030年に7円/kWhを掲げている。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新エネルギー部 担当:小田、竿本 TEL:044-520-5277
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:佐藤、髙津佐、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp