インドで製鉄所の最適制御技術実証事業を実施へ
―エネルギーセンターを導入、年間約11%のコスト削減を推進―
2016年4月28日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOは、インド鉄鋼省・財務省、および国営製鉄会社STEEL AUTHORITY OF INDIA LIMITED(SAIL)と共同で需給の予測と最適化に重点を置き、製鉄所内のエネルギー管理とエネルギーの運用効率を向上させ、年間約11%のトータルエネルギーコストを削減するための「製鉄所向けエネルギーセンターの最適制御技術実証事業」を実施することで合意、4月28日に基本協定書(MOU)を締結しました。
NEDOは、本事業において、日本の優れた省エネルギー設備であるエネルギーセンターをインドの製鉄所に導入し、鉄鋼業界に普及させることにより、大規模な省エネルギーを推進し、世界のエネルギーの需給改善に貢献します。

1.概要
インド鉄鋼業は経済成長や人口増を背景に粗鋼生産量が増加し、2020年には世界第2位となる見込みです。鉄鋼業はエネルギー多消費型の産業の一つですが、現状、インド鉄鋼業のエネルギー原単位※1は日本の1.24倍とされており、インド鉄鋼業の成長によりインドにおけるエネルギー消費量の増加が懸念されます。インド政府は世界的な環境規制を見据えて国内の省エネルギー規制を強化する方向ですが、大規模な省エネルギーを実現するためには様々な省エネルギー技術の導入が必要な状況にあります。日本とは、閣僚級の「日印エネルギー対話」や経済産業省主導の「日印鉄鋼官民協力会合」が開催され、省エネルギーの方策について議論が続けられています。
このような背景からNEDOは、インド国の鉄鋼省・財務省、および国営製鉄会社STEEL AUTHORITY OF INDIA LIMITED(SAIL)と共同で「製鉄所向けエネルギーセンターの最適制御技術実証事業」を実施することで合意、4月28日に基本協定書(MOU)を締結しました。
今回導入するエネルギーセンター※2という手法および導入するエネルギーマネジメントシステム(EMS)は、エネルギー運用における全体最適を実現する、優れた技術です(図参照)。具体的には、「鉄鋼EMSソリューション」※3により、エネルギーセンターの基本機能である需給の予測と最適化に重点を置き、複雑に絡み合う製鉄所内のエネルギー管理とエネルギーの運用効率を向上させ、トータルエネルギーコストを削減します。実証サイトとしては、一貫製鉄所であるSAIL社のISP Burnpur工場を選定しました。本実証事業により、エネルギー消費量、温室効果ガス排出量、エネルギーコストがそれぞれ年間約11%削減されることが期待されます。
これらの手法をインドの鉄鋼業界に導入・普及させることによって、インドにおける大規模な省エネルギーを推進し、世界におけるエネルギーの需給改善に貢献します。さらに、世界的な省エネルギーや温室効果ガス排出削減に向けた動きが継続する中で、本技術がインドにおいて普及し、省エネルギー効果を発揮することにより、インド鉄鋼業の発展に寄与することが期待されます。
【用語解説】
- ※1 エネルギー原単位
- エネルギー効率を表す値である。製品(鋼)の単位生産量に必要な電力・熱(燃料)などのエネルギー量のことであり、一般に、省エネルギーの進捗状況を見る指標として使用される。
- ※2 エネルギーセンター
- 製鉄所における多種多量のエネルギーを一元的に管理し、省エネルギー、省力・動力設備の運転合理化および環境管理を総合的に推進する設備である。
- ※3 鉄鋼EMSソリューション
- エネルギーセンターの基本機能の中で、特に重要な“需給予測”と“最適化(ホルダ設備・酸素設備・発電設備・全体)”の機能をさらに強化したソフトウェア群である。
2.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 省エネルギー部 担当:高野、矢野 TEL:044-520-5284
NEDO 国際部 担当:松坂、鶴田 TEL:044-520-5190
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、佐藤、髙津佐 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp