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太陽光パネル・蓄電池・ヒートポンプ・HEMSを組み合わせた住宅用システムの実証運転を開始
―ドイツで太陽光発電を地産地消する「エネルギー自己消費モデル」を確立へ―

2016年5月31日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫

NEDOは、(株)NTTドコモ、(株)NTTファシリティーズ、日立化成(株)、(株)日立情報通信エンジニアリングと共同で取り組んでいる「ドイツ連邦共和国におけるスマートコミュニティ実証事業」において、太陽光パネル、蓄電池、ヒートポンプ、HEMS(Home Energy management System)を組み合わせたシステムの実証運転を開始しました。

本事業では、ドイツ・ラインラント=プファルツ州シュパイヤー市内の集合住宅(2棟×16戸)を実証サイトとして、日本の優れた蓄電技術、ヒートポンプ温水器による蓄熱技術、情報通信技術を組み合わせて、太陽光発電(PV)の自家消費率を向上するシステムを構築し、需要家の経済的なメリット拡大や電力系統の安定運用に貢献するモデルを確立します。

本事業のイメージ図

1.概要

現在、ドイツは電力需要の20%以上を再生可能エネルギーで賄っており、政府はその比率を2020年に35%、2050年に80%にする目標を掲げていますが、太陽光発電のコスト低減に伴い、すでにグリッドパリティ※1が成立しており、固定価格買取制度が事実上終了しています。このため、太陽光発電設備を設置した需要家が、太陽光発電によって発電した電力を電力会社に売電するメリットが失われた状況になっています。また、太陽光発電からの逆潮流※2は配電線の容量制約や配電系統の電力品質低下の観点から受け入れられにくく、既にインバータの出力抑制を住宅用太陽光発電設備にも課しています。これらのことから、太陽光発電によって発電した電力を極力、自家消費し、電力会社に売電しないシステムを構築することが喫緊の課題となっています。

このような背景から、NEDOは、100%再生可能エネルギーによる電力、熱のエネルギー供給を目標として掲げているドイツ・ラインラント=プファルツ州シュパイヤー市において、シュパイヤー市、シュパイヤー電力公社、住宅供給公社GEWO(ゲボ)社と協力し、エネルギーを地産地消し、「エネルギー自己消費モデル」を実現するスマートコミュニティ実証事業を実施することとし、2015年7月23日にシュパイヤー市、シュパイヤー電力公社と基本協定書(MOU)を締結しました。

今般、集合住宅(2棟×16戸)において、太陽光パネル、蓄電池、ヒートポンプ、HEMSを組み合わせた実証システムの構築が完了したため、実証運転を開始しました。実証システムは、日射量データや各世帯の負荷パターンに基づき、太陽光発電電力やエネルギー消費量(電力、熱)を予測するとともに、仮想の電力料金モデルに応じて、電力系統への逆潮流及び、需要家のエネルギー料金を最小化するようにHEMSの制御ロジックが構築されており、蓄電池やヒートポンプを最適制御します。また、2棟の集合住宅を「世帯単位」「棟単位」のタイプに分け、それぞれにおいてエネルギー自家消費率最大化を目指し、2018年3月までの約2年間、実際の生活環境のなかで実証システムを運転することで、その効果、信頼性、経済性を評価していきます。

2.運転開始式

本サイトの運転開始にあわせ、5月30日(現地時間)に、ドイツ・シュパイヤー市において運転開始式を行いました。式典にはNEDO 渡邉 誠 理事、在ドイツ日本国大使館 八木 毅 特命全権大使、在フランクフルト日本国総領事館の総領事、NTTドコモ 古川 浩司 執行役員、NTTファシリティーズ 青木 忠一 取締役、日立化成 中川 操 執行役常務、日立情報通信エンジニアリング 岩崎 秀彦 取締役、ドイツ・シュパイヤー市からハンスイェルク・エガー 市長、シュパイヤー電力公社 ウォルフガング・ビューレン 社長、住宅供給公社GEWO社 アルフレッド・ブーマー 社長を始めとした関係者に加え、本事業に参加している住民が出席しました。

【用語解説】

※1 グリッドパリティ
再生可能エネルギーの発電コストが、電力系統から購入する電気料金と等しくなること。
※2  逆潮流
太陽光・風力発電等の自家発電設備が電力系統に連系され運転されている状態において、消費する電力よりも発電する電力が大きくなり、発電者の構内から電力系統へ向かう電力の流れのこと。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO スマートコミュニティ部 担当:山川、黒澤 TEL044-520-5274

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:佐藤、坂本、髙津佐、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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