次世代人工知能・ロボット要素技術の新規研究開発13テーマを採択
―社会課題解決に貢献する技術創出を目指す―
2016年7月7日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOは、次世代の人工知能・ロボットに必要な、今まで実現されていない革新的な要素技術をターゲットとしたロボットハンドや味覚センサーなど13テーマの研究開発を新たに開始します。
NEDOは、本取り組みを通じ、人工知能・ロボットが導入されていない未開拓分野における新需要創出や日本が抱える社会課題解決に貢献する技術の創出を目指します。
1.概要
NEDOは、2015年に策定された政府の「ロボット新戦略」を受け、2015年度から「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」を推進しています。このプロジェクトは、現在のロボット関連技術の延長上に留まらない、人間の能力を超えることを狙った革新的な要素技術をターゲットとし、これまで人工知能・ロボットの導入を考えもつかなかった未開拓の分野で、新しい需要を創出することを狙っています。
NEDOは、次世代の人工知能・ロボットの研究開発強化に向けて、「次世代人工知能技術分野」および「革新的ロボット要素技術分野」において、今まで実現されていない革新的な要素技術をターゲットに公募を実施し、今回、13テーマを採択しました。
「次世代人工知能技術分野」では、研究開発責任者を原則45歳未満の若手研究者とする大学・研究機関等および中小・ベンチャー企業を対象とし、次世代の人工知能技術の実用化を目指して取り組む2テーマを採択しました。これらのテーマは、お台場にある研究開発拠点、国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター(AIRC、プロジェクトリーダー:辻井潤一研究センター長)に参画し、研究開発を実施する予定です。
また、「革新的ロボット要素技術分野」では、少子高齢化に伴う労働力不足等の社会課題の解決に資するべく、スーパーセンシング、スマートアクチュエーション等に関する6課題をNEDOが設定した上で、ロボットハンドや味覚センサーの研究開発など11テーマを採択しました。
2.主な採択テーマおよび委託予定先一覧
<革新的ロボット要素技術分野/ロボットハンドを含む前腕の研究開発>
【委託予定先】 学校法人慶應義塾
従来は反力を推定するために力センサーを利用していましたが、本テーマでは人間のように柔軟で巧みな動作を可能とするため、力センサーを使わずに、モーターのエンコーダ値のみで反力推定を行う力触覚伝送技術を中核技術とした、小型多自由度の汎用人工手を研究開発します。
-
図1.慶應義塾大学の保有技術
(マスタスレーブによる力触覚情報を記憶し、形状の異なる物体に適応)
<革新的ロボット要素技術分野/味覚センサの研究開発>
【委託予定先】 国立大学法人東京大学
従来の表面プラズモン共鳴(SPR)※1現象を利用した化学量センサーは、サイズが大きく、ロボットに搭載するのが困難でしたが、本テーマではセンサーをワンチップに小型・集積し、食品の味や危険物質の有無を判別可能とする「MEMS※2型味覚センサー」を研究開発します。
-
図2.東京大学の保有技術
(シリコンプリズムによるSPR励起光観察による物質判別)
上記2テーマを含め、今回、13テーマを採択しました。開発項目毎の委託予定先は以下のとおりです。
開発項目 | 委託予定先 | |
<次世代人工知能技術分野> | ||
大規模目的基礎研究・先端技術研究開発 | 【1】 |
国立研究開発法人理化学研究所 |
【2】 | 株式会社MOLCURE | |
<革新的ロボット要素技術分野> | ||
高密度で自由曲面に貼れる電極の研究開発 | 【3】 |
富士化学株式会社 |
味覚センサの研究開発 | 【4】 | 国立大学法人東京大学 |
【5】 | 国立大学法人九州大学 | |
生体分子を用いたロボットの研究開発 | 【6】 |
国立大学法人東京工業大学 |
UAV向け環境認識技術と飛行経路生成技術の研究開発 | 【7】 | エアロセンス株式会社 |
【8】 |
株式会社自律制御システム研究所 |
|
小型UAV向けフライトレコーダの研究開発 | 【9】 | 本郷飛行機株式会社 |
【10】 | 株式会社菊池製作所 | |
【11】 |
ブルーイノベーション株式会社 |
|
ロボットハンドを含む前腕の研究開発 | 【12】 |
ダブル技研株式会社 |
【13】 | 学校法人慶應義塾 |
【用語解説】
- ※1 表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance; SPR)
- 金属粒子に光が当たったとき、内部の自由電子が集団的に振動し、プラズモンと呼ばれる状態になる。その際、金属表面には、自由電子の偏りに伴って強い電場が発生し、ある条件下で光の振動と共鳴する現象。
- ※2 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)
- 半導体のシリコン基板や有機材料などに、機械要素部品のセンサー、アクチュエーター、電子回路などをひとつにまとめた微小構造を有するデバイス。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO ロボット・AI部 担当:松本崇、服部、吉野、石倉 TEL:044-520-5241
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:髙津佐、坂本、佐藤、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp