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CNTを利用したCFRPの衝撃強度の向上に成功
―ゴルフクラブで製品化、産業分野への展開も―

2016年7月7日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
ミズノ株式会社

NEDOプロジェクトにおいて、ミズノ(株)はカーボンナノチューブ(CNT)を利用することで炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材料の衝撃強度を向上させることに成功しました。これまで困難とされてきたCNTとCFRPの複合化を、CNTの分散性向上によって実現したもので、初の応用先としてゴルフクラブを製品化する見込みです。

ミズノ(株)は、今後、ラケットやバットなどスポーツ分野への展開を図るとともに、将来的には産業分野への応用拡大を目指します。

NEDOは、今回の成果によりCNT実用化がさらに加速することを期待しています。将来的には、航空機や自動車等に用いることで大幅な軽量化と省エネルギー化による低炭素社会の実現を目指します。

(左)CNTを用いたCFRP製品のイメージ/(右)NEDOが考える今後の実用化発展イメージ

1.概要

カーボンナノチューブ(CNT)※1に代表されるナノ炭素材料は、「軽量」「高強度」「高電導度」「高熱伝導度」という特長を有する日本が世界をリードする材料です。NEDOは、CNTの実用化に向けた技術開発プロジェクト「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」(2010~2016年度)を進めており、同プロジェクトの助成事業として、CNTによる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)※2製スポーツ用品の研究開発に取り組んでいたミズノ株式会社は、特殊な表面処理を行ったCNTを利用することでCFRPの衝撃強度を従来材料より向上させることに成功するとともに、その量産技術も構築、製品化にめどを付けました。

ミズノ(株)は、第一弾としてゴルフクラブで製品化の見込みです。高強度を活かし、軽量化や新しい設計が可能になることから、ラケットやバット等のスポーツ用品分野への展開も計画しています。

さらに、グループ子会社であるミズノテクニクス株式会社が、CFRPタンク用材料やロボットアーム等の産業用途CFRP材料を手がけており、今後、産業分野への展開と拡大も図る予定です。

NEDOは2016年4月に公開したナノ炭素材料応用製品のロードマップ※3で、構造材料分野でのCNT応用の拡大を予測しており、今回の成果でCNT実用化が加速することを期待しています。飛行機や車体等に用いることで大幅な軽量化と省エネルギー化による低炭素社会の実現を目指します。

2.今回の成果

CFRPとCNTの複合化には、CNTの凝集による不均一化が課題でした。ミズノ(株)は、CNTの新規の表面処理技術を利用し、CNTの分子間力の緩和による分散性の向上を実現しました。更には、CNTに付与されたエポキシ樹脂と親和性の高い官能基により、エポキシ樹脂との分子間力の向上を実現させました。(図1参照)

CFRPは炭素繊維とマトリックス樹脂の間に界面が存在するので、衝撃を受けた時に界面剥離※4が破壊起点となります。今回利用したCNTがマトリックス樹脂内に均質に分散し、CNTに付与された官能基がエポキシ樹脂と炭素繊維の間の強度を高めることに貢献し、界面剥離を抑制していると考えられます。(図2参照)

今回、ミズノ(株)は、このCNTを少量添加するだけでCFRPの特性を大きく向上できることを見いだしました。実際にゴルフクラブを試作して製品レベルの試験を実施したところ、同じ肉厚の従来品に対して衝撃強度を13%向上できました。肉厚を増やさずに衝撃強度を向上できる今回の成果は、今後の製品開発に大きく貢献することとなります。(図3参照)

今回の成果で利用したCNTの新規表面処理技術は、国立大学法人東京大学(工学系研究科 坂田研究室)とナノサミット株式会社からミズノ株式会社に提供されたものです。また、新規CFRP材料の作成には、ミズノ株式会社は東邦テナックス株式会社、神戸天然物化学株式会社の協力を得ました。

  • 図1.CNTの分散状態比較
    図1.CNTの分散状態比較
  • 図2.界面剥離の比較図
    図2.界面剥離の比較図
  • 図3.ゴルフクラブでの衝撃強度試験結果
    図3.ゴルフクラブでの衝撃強度試験結果

【用語解説】

※1 カーボンナノチューブ(CNT)
炭素原子だけで構成される直径が0.4~50nmの一次元性のナノ炭素材料。
※2 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
エポキシ樹脂を母材に、炭素繊維を強化材として用いたプラスチックで、軽量で高強度の特性を持つ。ゴルフクラブのシャフトや釣竿より実用化が始まり、1990年代より航空機、自動車などの産業用の用途が拡大している。
※3 ナノ炭素材料応用製品のロードマップ
「ナノ炭素材料応用製品の最新動向と将来の市場予測に関する検討(2015年度)」
NEDOホームページの成果報告書データベースで公開中。
※4 界面剥離
異なる材料の接合界面での剥離。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 材料・ナノテクノロジー部 担当:小久保、畠 TEL:044-520-5223

ミズノ(株) 広報室 大谷、植田 TEL:06-6614-8373

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:藤本、坂本、佐藤、髙津佐 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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