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新たな企業間連携支援制度で12テーマ始動
―事業会社と連携する研究開発型ベンチャーの事業化を加速―

2017年3月7日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫

NEDOは、事業会社と連携して共同研究等を行う研究開発型ベンチャーを支援する新たな助成金制度において、12テーマを始動させました。研究開発型ベンチャーと事業会社の連携を促進することにより、研究開発型ベンチャーの事業化の加速、ベンチャー・エコシステムの強化を目指します。

図1
事業スキーム図

1.概要

これまでNEDOは、日本のベンチャー・エコシステム※1の構築を目指し、シード期の研究開発型ベンチャー支援制度を拡充してきており、TCP※2、起業家候補支援事業※3、シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援※4と、資金獲得フェーズに合わせた骨太の支援により、シード期の技術開発支援と民間のリスクマネーへのシームレスな橋渡しを同時に進めてきました。

シード期の死の谷を乗り超えたベンチャーが、その後自律的なイノベーション・エコシステムの構築に資するためには、産業界とのマッチングが必要不可欠です。

そこでNEDOは、新たな助成金制度として、研究開発型ベンチャー(SCA※5)と事業会社の連携の接点となる共同研究等を支援し、その連携を促進することにより、研究開発型ベンチャーの事業化の加速およびベンチャー・エコシステムの強化を目指します。助成金の交付決定にあたっては、支援先となるSCAが、その連携先の事業会社と共同研究等を進めるための契約を締結することが条件となります。

本助成金制度において、昨年10月3日~11月24日まで公募を実施し、以下の12社を助成金交付先として決定しました。

2.採択テーマと助成先

助成先 (括弧内は連携先の事業会社名) テーマ概要
メトロウェザー株式会社
(日本電気株式会社)
高性能ドップラー・ライダーによるアダプティブ航空管制システム
同社が開発している飛行機の後方乱気流を可視化できるドップラー・ライダーを空港に設置し、事業会社と協働して管制システムに組み込むことで、後方乱気流の状況に応じて上空の航空機の間隔をアダプティブに変更し、航空機の離着陸回数を30%以上向上させることを目指している。観測根拠に基づく航空管制により、航空交通の安全向上に寄与する。
トリプル・ダブリュー・ジャパン会社
(【1】アクセンチュア株式会社、【2】伊藤忠ケミカルフロンティア株式会社、【3】伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、【4】パラマウントベッド株式会社、【5】アクトタンク株式会社(親会社:株式会社リヴァンプ))
高性能型DFreeの開発及び事業化
排泄のタイミングを予測するウェアラブルデバイス「DFree」の技術を応用、発展させ、筐体の小型化とセンサーを高性能化する。それらの実現により、現在のターゲットである高齢者施設の要介護高齢者から、在宅の要介護高齢者、アクティブシニア、子供へと対象者を拡大する。
エクセルギー・パワー・システムズ株式会社
(三井造船株式会社)
超急速充電電池を活用した港湾施設の動力費・CO2排出量削減
超急速充電電池を利用してクレーンシステムなど港湾施設の回生電力回収、エンジンの小型化、ピークカットを行い、燃料消費量、電気使用量、契約電力料金を削減する。港湾設備の動力費を削減して、港湾の運営コスト削減量を確認し、設備投資の効果を定量化することによってCO2排出量削減可能性を実証する事業。
株式会社メトセラ
(株式会社島津製作所)
線維芽細胞を活用した再生医療関連製品の開発事業
同社が開発に成功した臓器細胞の機能化を促す線維芽細胞群を活用し、心不全患者向けの新たな再生医療製品の開発を目指す事業。株式会社島津製作所との共同研究等を通じ、培地開発・生産工程の検討を行うとともに、大動物での試験を実施することで、早期の臨床試験開始を目指す。
SEQSENSE株式会社
(TIS株式会社)
複数警備ロボットによる協調行動クラウドシステムの構築
大規模公共施設(空港、ショッピングモール、データセンターなど)における複数自律移動型ロボットの協調行動による、円滑な巡回警備業務遂行を可能とするクラウドシステムの研究開発・構築を行う。
WHILL株式会社
(日本電産株式会社)
小型移動体に技術革新をもたらすOmni Drive Unitの開発
電動車いすWHILL Model Aの前輪に使用されるオムニホイールは、2度にわたるNEDO助成金事業により開発および強化してきたWHILL社の中核技術である。今回、オムニホイールにギヤおよび小型のモーターを内蔵するOmni Drive Unitの開発を行う。このOmni Drive Unitはその場旋回が可能かつ走破性の優れる四輪駆動の小型移動体を容易に設計できる革新的な部品である。
株式会社Photosynth
(オリックス株式会社)
スマートロックによる在宅医療・介護等の課題解決の研究・事業化
医療・介護施設の不足や自宅で余生を過ごしたいニーズにより今後拡大が予想される訪問医療・介護だが、合鍵を不特定多数の第三者に発行する必要があるなどの様々な課題が存在する。スマートロックで採取できるデータの活用やクラウド鍵の有効な運用方法を開発・実証検証することで、介護における課題の解決手法を研究する。
株式会社ライナフ
(株式会社LIXIL)
スマートロックの機能を内蔵した玄関ドアの開発
同社が開発・販売しているスマートロックの機能を内蔵した玄関ドアを共同開発する。このスマートドア(仮称)をマンション等の集合住宅に普及させ、鍵を必要とするサービスを受ける側も、提供する側も、利便性と安全性を担保しながら、居宅と外部サービス(介護福祉や家事代行、宅配等)とが、今後さらにつながる社会の仕組みを構築する。
H2L株式会社
(ソニー株式会社)
光学式多筋群変位検出によるジェスチャ認識の実用化開発
同社では、光学式センサーを用いた筋変位検出手法を多筋群に応用することで、前腕の筋肉から手指の動作を推定し、ジェスチャを認識する腕輪型装置の開発に成功している。今回の事業では、消費者向け製品の量産ノウハウを持つ企業との連携により、量産化に向けた研究開発を行う。
株式会社キノファーマ
(千寿製薬株式会社)
流行性角結膜炎に対する眼科領域感染症にも役立つ新規物質開発
流行性角結膜炎はアデノウイルス感染によるものが主である。発症後は、眼瞼の浮腫、流涙を伴い、角膜に炎症が及ぶと透明度が低下し、混濁は数年に及ぶことがあるが、現在有効な治療薬がなく、対症療法が施されている。本事業では種々のウイルスに優れた抗ウイルス能を有する新規化合物RKP00156を主成分とした点眼剤開発を進める。
株式会社eNFC
(オムロンソーシアルソリューションズ株式会社)
電界型NFCによる人体通信機能を有する新たな商品の開発
認証/課金用途で世界中で広く用いられているNFC(Near Field Communication)規格の信号を、電界により人体を介して直観的に通信可能とすることで、ウエアラブル機器・タグの認証のための通信設定に伴う煩わしさを解消すると共に、人体通信ならではの使用体験を提供する新たな商品を開発する。
エーアイシルク株式会社
(株式会社クラレ)
フレキシブルシルク電極の量産技術の共同研究開発
フレキシブルシルク電極はシルクに導電性高分子をコーティングした電極で肌触りが良く吸水性に優れ金属アレルギーを生じないため長時間着用できる。セリシンを塗布した化学繊維も同様に導電性高分子をコーティングする技術を開発して、安価で厳しい環境温度でも利用できる電極の量産技術を共同開発する。

【用語解説】

※1 ベンチャー・エコシステム
起業家、既存企業、大学、研究機関、金融機関、公的機関などの構成主体が共存共栄し、企業の創出、成長、成熟、再生の過程が循環する仕組み(生態系)です。
※2 TCP(NEDO Technology Commercialization Program)
技術をもとに起業して事業を大きく拡大させたいと考えている起業家、起業意識のある研究者などを支援するためのプログラムです。参加者へビジネスプラン構築の研修とメンタリング支援による教育プログラムの提供とマッチング機会の提供を兼ねたピッチコンテストを開催します。
※3 起業家候補支援事業
具体的な技術シーズを活用した事業構想を有する起業家候補(スタートアップイノベーター「SUI」)を支援する事業です。ビジネスプラン作成、市場調査、試作品設計・製作など、研究開発型ベンチャーの立ち上げに必要な活動を、事業カタライザー(起業・事業化に向けた指導を行う専門家)によるハンズオン支援のもとで行います。
※4 シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援
ベンチャーキャピタル(VC)等と協調し、初期段階(シード期)にある研究開発型ベンチャー(STS)を支援するものです。NEDOとVC等が協調した切れ目ない事業化支援により、供給が足りていないリスクマネーであるシード期への出資を促進し、新たなエコシステム創出を目指します。
※5 SCA(Startups in Corporate Alliance)
事業会社と共同研究等を行う研究開発型ベンチャー(企業間連携スタートアップ)。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO イノベーション推進部 担当:塚越、松永、橋詰 TEL:044-520-5173

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:髙津佐、藤本、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp