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計算科学や人工知能を活用したナノカーボン材料の研究開発に着手
―カーボンナノチューブやグラフェンの応用製品開発をスピードアップ―

2017年5月29日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川 一夫

NEDOは、試作などに時間がかかる材料開発の抜本的なスピードアップを図るために、計算科学や人工知能を活用した材料開発手法の構築を進めています。今回、新たに事業者の追加採択を行い、ナノカーボン材料についての研究開発に着手します。

本事業では、製品中の材料の複雑な挙動と機能を推測するマルチスケールシミュレーションなど、革新的な材料開発手法を構築し、CNTを応用した軽量電線、高耐熱・高強度のCNT複合ゴム材料、グラフェン透明導電フィルムなど応用製品の早期実用化を目指します。

1.概要

日本が強いとされる材料分野の競争力を今後も維持、強化していくためには、新しい機能性材料と応用製品をスピーディーに創出し続けていくことが必要です。そこでNEDOは、試作回数や開発期間の大幅短縮を図るために、計算科学※1や人工知能を活用した革新的な材料開発手法の研究開発※2を2016年度から進めています。

今回、ナノカーボン材料(カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン)を対象に研究を実施する3者(古河電気工業株式会社、日本ゼオン株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所)の共同提案を追加採択しました。

追加事業では、応用製品の開発に時間がかかると考えられていたナノカーボン材料をターゲットとして、製品中の材料の複雑な挙動と機能を推測する革新的なマルチスケールシミュレーション手法※3などを構築することで、材料開発の抜本的なスピードアップを図ります。計算科学や人工知能を使いこなすことで、材料産業の競争力強化を目指します。

2.研究開発の内容

日本で発見されたCNTなどのナノカーボン材料は、産学官の継続的な取り組み※4を経て、製造法や合成法の開発が進められてきました。しかし、ナノカーボン材料が持つ性能を十分に引き出した応用製品を世界に先んじて開発していくためには、材料の構造と電気・熱特性の最適化や、他の材料との相互作用の制御など、技術的なブレークスルーが必要とされています。

従来、材料の複雑な構造や相互作用を制御するためには、膨大な時間とコストをかけ、繰り返し大量のパラメーターについて実験する試行錯誤的なプロセスが必要でした。今回、このプロセスを大幅に短縮し、よりスピーディな材料開発を実現するために、計算科学や人工知能を活用した革新的な材料開発手法を構築します。材料の構造と電気・熱特性の最適化や他の材料との相互作用の制御を可能とすることで、CNTを応用した軽量電線、高耐熱・高強度のCNT複合ゴム材料、グラフェン透明導電フィルムなど応用製品の早期実用化を目指します。

3.事業の内容

【1】事業名

超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト

【2】期間

2016年度~2021年度

(うち、今回採択分は2017年度~2021年度)

【3】事業総額

約120億円(予定、2016年度~2021年度)

(うち、今回採択分は約15億円(予定、2017年度~2021年度))

【4】採択者

  • 古河電気工業株式会社
  • 日本ゼオン株式会社
  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所

なお、古河電気工業株式会社、日本ゼオン株式会社は、超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクトにおける他の材料開発とのシナジー効果を図るべく、先端素材高速開発技術研究組合に組合員として加入して研究を実施します。

【用語解説】

※1 計算科学
様々な現象をコンピューター上で数学的モデルとして解析する科学研究の方法論です。
※2 研究開発
超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(2016年度~2021年度)
委託先:先端素材高速開発技術研究組合、国立研究開発法人産業技術総合研究所
※3 マルチスケールシミュレーション手法
材料の機能はナノスケールからマイクロ、そしてマクロスケールにいたる各スケールにおける状態が相互に作用した結果、得られるものです。そこで第一原理計算、分子動力学法、有限要素法といった異なるスケールを取り扱うシミュレーションをシームレスに表現することで、材料機能を精度よく再現・予測しようとするものです。
※4 産学官の継続的な取り組み
飯島博士が1991年にCNTの構造を世界で初めて解明し、以来、NEDOは1998年から19年間に渡り、CNTやグラフェンなどナノカーボンの研究開発を進めてきました。特に、単層CNTの量産技術の発明から工場竣工までの成果について、NEDO事業実施者の産業技術総合研究所、日本ゼオン(株)、技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構の3社は2016年の産学官功労者表彰を受賞しました。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 材料・ナノテクノロジー部 担当:國谷、岡本 TEL:044-520-5220

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:藤本、髙津佐、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp