世界初、実海域において海流発電の100kW級実証試験を実施へ
―新たな再生可能エネルギー技術「水中浮遊式海流発電」実証機が完成―
2017年7月7日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
株式会社IHI
NEDOと(株)IHIは、海流エネルギーを利用して発電する新たな再生可能エネルギー技術である水中浮遊式海流発電システムの100kW級実証機「かいりゅう」を、IHI横浜事業所で完成させました。今夏、鹿児島県十島村口之島沖の黒潮海域で、実際に海流を利用した100kW規模の海流発電においては世界初となる実証試験を行います。
NEDOは、エネルギーが強く、変動が少ない海流エネルギーについて、新しい再生可能エネルギー源として期待しています。特に離島などでの実用化を目指すと共に、エネルギーセキュリティーへの貢献を目指します。
(株)IHIは、今回の実証試験により発電性能や姿勢制御システムを検証し、海流エネルギーを有効かつ経済的に利用する水中浮遊式海流発電システムを2020年に実用化することを目指します。
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図1 水中浮遊式海流発電システム
海中への設置イメージ -
図2 運搬用の台船に載った実証機「かいりゅう」
1.概要
海洋のさまざまなエネルギー(海流、潮流、波力、海洋温度差等)による発電技術は、新たな再生可能エネルギーとして世界的に期待されています。特に、日本の沿岸付近には、世界的にも有数のエネルギーを持つ黒潮などの強い海流が、年間を通じて安定して流れています。海流は、太陽光や風力に比べて昼夜や季節による変動が少ないことから、離島や系統連系等の制約により再生可能エネルギーの導入が困難な地域等におけるエネルギー源としての大きな可能性を有しています。
NEDOは、2011年度から海流エネルギー発電の研究開発※1に取り組んできました。今回、NEDOと株式会社IHIは、海流発電の技術的な開発を完了し、100kW級実証機「かいりゅう」※2をIHI横浜事業所(神奈川県横浜市)で完成させました。
今夏、鹿児島県十島村口之島沖の黒潮海域で、実証機の発電性能や姿勢制御システムの検証を行います。これは、世界初※3の海流発電の実証試験になります。
NEDOは、エネルギーが強く、変動が少ない海流エネルギーについて、新しい再生可能エネルギー源として期待しています。特に離島などでの実用化を目指すと共に、エネルギーセキュリティーへの貢献を目指します。
(株)IHIは、今回の実証試験により発電性能や姿勢制御システムを検証し、海流エネルギーを有効かつ経済的に利用する水中浮遊式海流発電システムを2020年に実用化することを目指します。
2.試験場所と実証機名称
実証試験場所は、内閣府総合海洋政策推進事務局の海洋再生可能エネルギー実証フィールドに今回選定された、鹿児島県十島村口之島であり、黒潮が流れる口之島北側海域の沖合約5km、水深100mの地点に実証機を設置する計画です。串木野港(鹿児島県いちき串木野市)沖合で7月下旬頃から1週間程度の曳航試運転※4を行った後、口之島沖で8月中旬頃から1週間程度の実証試験を実施する計画です。
本装置の名称は、十島村の小中学生から公募した中から十島村村長が選定し、「かいりゅう」と命名しました。
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図3 実証試験の場所
(出典 左図:NEDO 海洋エネルギーポータルサイト、右図:海上保安庁 海洋台帳)
3.水中浮遊式海流発電システムの特徴
本システムは、海底に設置したシンカー※5から浮体式発電装置を海中に係留し、海流の流れによって、タービン水車を回転させることで発電する仕組みです。
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※今回の実験では、船上に受電設備を設置します。 | |
図4 実証機のサイズと設置イメージ |
【主な特徴】
- 昼夜や季節による変動が少ない安定した海流エネルギーを長期かつ連続的に利用することで、年間60%以上の高い設備利用率での発電が可能です。
- 海底から係留して海中に浮遊させることで、1000m級の大水深域での設置にも対応できます。波浪の影響を受けない安定した運用が可能であり、船舶の航行に支障を及ぼさず、設置可能海域を広く設定することができます。
- 左右2基の水中タービン水車を互いに逆方向に回転させることで、タービンの回転に伴う回転トルクを相殺でき、海中で安定した姿勢を保持し、高い効率で発電を行うことができます。
- 浮力を調整することができるため、保守整備時には必要に応じて海上に浮上させることで、メンテナンスや修理を容易に行うことができます。
【用語解説】
- ※1 研究開発
- 海洋エネルギー技術研究開発/次世代海洋エネルギー技術研究開発(2011年~2014年度)
海洋エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー発電システム実証研究(2014年~2017年度) - ※2 100kW級実証機「かいりゅう」
- ・定格発電出力:約100kW(50kW×2基)
・タービン直径:約11m
・浮体長さ:約20m 幅:約20m
・定格流速:1.5m/秒(3ノット)
・浮遊深度:約30m~50m - ※3 世界初
- 2017年7月現在(NEDO・(株)IHI調べ)。実際の海流を利用した100kW規模の海流発電において。
- ※4 曳航試運転
- 実証試験前の調整として、串木野沖で、船舶で装置を曳航することで黒潮に模した水流を発生させ、海中での挙動の確認を行う。
- ※5 シンカー
- 試験機を固定するための方法の一つとして、錘(シンカー)の自重によって固定する方法がある。今回の実証試験では、海底に設置したシンカーに係留索を接続し、その先に実証機を接続する。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新エネルギー部 担当:田村、植田、濱本 TEL:044-520-5273
株式会社IHI 広報・IR部 担当:高橋 TEL:03-6204-7030
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:藤本、髙津佐、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp