再生可能エネルギーによるCO2フリー水素の実証試験を開始
―ステージゲート審査で3テーマを決定―
2017年8月1日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 古川一夫
NEDOは、再生可能エネルギーから得た電力を用いて水素を製造、利用するPower to Gasについて、3テーマのシステム技術開発(実証フェーズ)を開始します。この事業では、2016年9月から6テーマの基礎検討(FSフェーズ)を実施し、今回、ステージゲート審査により、3テーマの実証への移行を決定しました。
今後、CO2フリー水素の利活用拡大を目指し、本格的な実証試験に向けた取組を開始し、福島県浪江町などで実証試験を行う予定です。
1.概要
水素は、電力を大量かつ長期に貯蔵することができ、長距離輸送が可能です。また、燃料電池によるコジェネレーションや、ガスタービンによる大規模発電、燃料電池自動車やバスといった移動体など、さまざまな用途で利用可能です。将来的には、再生可能エネルギーによる水素などを活用し、製造から利用までの全体でCO2フリーな水素供給システムの確立が望まれています。
NEDOは、再生可能エネルギーから得た電力で水素を製造、利用するシステム(Power to Gas)の実現を目指し、研究開発プロジェクト※1を推進しています。Power to Gasシステムの実用化は、水素の製造過程におけるCO2フリー化につながるとともに、電力系統の安定化や調整力の向上といった新たな付加価値をもたらし、再生可能エネルギーの出力変動などの課題解決と再生可能エネルギー導入拡大への寄与が期待されます。
そこで、2016年9月から、Power to Gasシステムの経済性・技術成立性の評価や、実フィールドにおけるシステム技術開発の実施内容などを検討する基礎検討(FSフェーズ)を6テーマ実施してきました。
そして今回、NEDOはステージゲート審査を実施し、各テーマの実現可能性や計画内容を評価し、3テーマについてシステム技術開発(実証フェーズ)に移行することを決定しました。FSフェーズ中に策定した試験計画に基づき、機器導入、技術開発、有効性検証など、実フィールドにおける本格的な実証試験を進めていきます。実証は、福島県浪江町などで行う予定です。
NEDOは、2020年をめどに実証研究を行い、2040年以降のCO2フリー水素供給の実現と再生可能エネルギーの導入拡大を目指します。
2.実証フェーズへ移行するテーマと委託先
<再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発>
- 【委託先】株式会社東芝、東北電力株式会社、岩谷産業株式会社
- 【実証研究場所】福島県浪江町
- 【再生可能エネルギーの種別】太陽光、風力
- 【実証研究の概要】
本事業は、再生可能エネルギーの導入拡大を見据えた電力系統の需給バランス調整(デマンドレスポンス)としての水素活用事業モデルおよび水素販売事業モデルの確立を目指します。電力系統の需給バランス調整への対応、水素需要予測に基づいた水素製造およびこれらを組み合わせて最適化する効率的な運用技術の確立を図ります。
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図 社会実装時点を想定した「福島モデル」の概念
<稚内エリアにおける協調制御を用いた再エネ電力の最大有効活用技術>
- 【委託先】株式会社日立製作所、北海道電力株式会社、一般財団法人エネルギー総合工学研究所
- 【実証研究場所】北海道稚内市
- 【再生可能エネルギーの種別】風力、太陽光
- 【実証研究の概要】
本事業は、再生可能エネルギー由来電力の活用を最大化するため、水電解水素製造装置、蓄電池および水素混焼エンジンの協調制御システムを開発します。短周期・長周期変動緩和および下げ代不足※2対策等のサービスを提供しつつ、水素を外販する変動緩和事業の実現を目指した取組を進めます。
<CO2フリーの水素社会構築を目指したP2Gシステム技術開発>
- 【委託先】山梨県企業局、東レ株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、株式会社東光高岳
- 【実証研究場所】山梨県甲府市
- 【再生可能エネルギーの種別】太陽光
- 【実証研究の概要】
本事業は、季節や時間によって大きく変動する太陽光発電に対して、その電力を固体高分子形水電解水素製造装置を隣接に設置することで吸収し、電力網の供給余力と発電サイドの需給調整力を創出するものです。また、製造された水素を工場等の熱需要や運輸において利活用することで、需要サイドでの化石燃料の消費を抑制する新たな事業モデルの実現に向けた技術開発を行います。
【用語解説】
- ※1 研究開発プロジェクト
- 水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発(2014年度~2020年度)
基礎検討(FSフェーズ)は2016年度~2017年度に実施。
システム技術開発(実証フェーズ)は2017年度~2020年度に実施予定。 - ※2 下げ代不足
- 電力系統は需給バランスを整えないと周波数が変動してしまうので、需給の変動や再生可能エネルギーの出力変動に対応して火力発電等で調整余力を確保する。一般に火力発電は一定負荷以下の運転ができないため、最低負荷運転を行った場合、これらの変動に対応して出力を下げられなくなることが起こる。この状態を下げ代不足という。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新エネルギー部 担当:大平 TEL:044-520-5261
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:藤本、坂本、髙津佐 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp