冷凍空調機器用次世代冷媒の安全性・リスク評価手法の確立に着手
―モントリオール議定書キガリ改正およびパリ協定の削減目標達成を目指す―
2018年7月9日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 石塚博昭
NEDOは、業務用冷凍冷蔵機器や家庭用空調機器を主とする中小型規模の冷凍空調機器に使用する温室効果の低い冷媒(次世代冷媒)の安全性・リスク評価手法の確立に着手します。
本事業で確立した安全性評価手法などの成果の国際規格化・国際標準化を目指し、次世代冷媒を使用した省エネ冷凍空調機器の開発基盤を整備することで、製品の市場投入に貢献するとともに、冷凍空調機器分野における次世代冷媒への転換を促進します。
さらに、これらの取り組みを通じて、モントリオール議定書キガリ改正における日本のハイドロフルオロカーボン(HFC)生産・消費量削減目標である2029年までに70%削減、2036年までに85%削減、およびパリ協定での日本のHFC排出削減目標である2030年までに2013年比で32%減となる約1020万CO2-t削減の達成を目指します。
1.概要
かつて冷凍空調機器用冷媒として使用されていた特定フロン※1であるクロロフルオロカーボン(CFC)※2やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)※3は、オゾン層を破壊することから、代替フロン※4であるハイドロフルオロカーボン(HFC)※5への転換が進められてきました。一方で、HFCは温室効果が高く地球温暖化を促進するという問題点が指摘されています。現在、稼働中の冷凍空調機器に使われるHFCの総量の増加に伴い、大気中への排出量も増え、その温室効果の高さによる環境影響が問題となっています。
これに対し、温室効果ガス排出抑制強化の観点から、パリ協定や改正されたモントリオール議定書(キガリ改正※6)においてはHFCが規制対象とされています。今後、これらの国際的な規制によって、現在使用している冷媒が使用できなくなる可能性があり、これまでに比べて温室効果が低い冷媒(次世代冷媒)やその適用機器の開発が急務となっています。
さらに、新しい冷媒や用途についての安全性やリスクを正しく評価するための研究開発が重要です。
これらを踏まえ、今般、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業※7では、業務用冷凍冷蔵機器および家庭用空調機器を主とする中小型規模の冷凍空調機器に使用する次世代冷媒の安全性・リスク評価手法の確立に着手します。
本事業で確立した安全性評価手法などの成果により国際規格化・国際標準化を目指し、次世代冷媒を使用した省エネ冷凍空調機器の開発基盤を整備することで、製品の市場投入に貢献するとともに、冷凍空調機器分野における次世代冷媒への転換を促進します。
さらに、これらの取り組みを通じて、モントリオール議定書キガリ改正における日本のHFC生産・消費量削減目標である2029年までに基準値※8比70%削減、2036年までに85%削減、およびパリ協定における日本のHFC排出削減目標である2030年までに2013年比で32%減となる約1020万CO2-t削減の達成を目指します。
2.研究開発・調査の内容と委託予定先
【1】次世代冷媒の基本特性に関するデータ取得及び評価(委託事業)
数値計算や室内実験により、基本特性の評価試験(熱物性、燃焼性、伝熱特性、ヒートポンプサイクル性能など)を行います。さらに、実用化評価試験(実環境を加味した冷媒特性評価、混合冷媒比率の最適化など)に関するデータ取得および評価を実施します。
採択テーマ | 委託予定先 |
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中小型規模の冷凍空調機器に使用する次世代冷媒の熱物性、伝熱特性および基本サイクル性能特性の評価研究 | 国立大学法人九州大学 |
低GWP低燃焼性混合冷媒の安全性評価 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 機能化学研究部門 |
低GWP冷媒を採用した次世代冷凍空調技術の実用化評価に関する研究開発 | 学校法人早稲田大学 |
【2】次世代冷媒の安全性・リスク評価手法の開発(委託事業)
次世代冷媒の安全性・リスク評価に必要な評価項目(事故シナリオの検討・抽出、漏洩時挙動評価、着火時の挙動、爆発影響評価、危害度評価、実験環境模擬実験、冷媒充填量の許容量の把握など)を検討し、数値計算や室内実験・室外実験などにより、安全性・リスク評価手法を確立します。
採択テーマ | 委託予定先 |
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次世代冷媒の安全性・リスク評価手法の開発 | 国立大学法人東京大学/公立大学法人公立諏訪東京理科大学/国立研究開発法人産業技術総合研究所安全科学研究部門 |
【3】次世代冷媒に係る安全性・リスク評価に関する検討(調査事業)
本調査事業※9を同時に実施し、上記委託事業の成果を業界の安全基準や国際規格化・国際標準化などに効率的に結び付けるため、規制・規格の動向調査を行うほか、産学官連携体制の委員会を組織し、委託事業と連携しながら次世代冷媒の安全性・リスク評価に係る検討および国内外への成果発信を行います。
採択テーマ | 委託予定先 |
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次世代冷媒に係る安全性・リスク評価に関する検討 | 公益社団法人日本冷凍空調学会 |
【注釈】
- ※1 フロン
- 冷媒の商標。転じてフッ化物である冷媒・工業用ガスの総称に用いられています。
- ※2 クロロフルオロカーボン(CFC)
- フロンの一種で、低分子有機物の水素を全てフッ素・塩素で置換した人工化合物です。
- ※3 ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)
- フロンの一種で、低分子有機物の水素を一部フッ素・塩素で置換した人工化合物です。
- ※4 代替フロン
- オゾン層破壊源となる塩素を含まないハイドロフルオロカーボン(HFC)などの化合物です。
- ※5 ハイドロフルオロカーボン(HFC)
- オゾン層破壊効果はないものの強力な温室効果ガスであり、パリ協定において排出削減の対象となっています。
- ※6 キガリ改正
- 2016年10月にルワンダ・キガリで開催されたモントリオール議定書第28回締約国会合(MOP28)において、オゾン層を破壊しないが温室効果の高いハイドロフルオロカーボン(HFC)を規制対象に追加するという議定書の改正提案(キガリ改正)が採択されました。改正議定書は、20カ国以上の締結を条件に、2019年1月1日に発効することとされています。
- ※7 NEDO事業
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事業名:省エネ化・低温室効果を達成できる次世代冷凍空調技術の最適化及び評価手法の開発
事業期間:2018~2022年度
- ※8 基準値
- 2011-2013年実績の平均値から計算しました。
- ※9 NEDO事業
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事業名:省エネ化・低温室効果を達成できる次世代冷凍空調技術の最適化及び評価手法の開発/次世代冷媒に係る安全性・リスク評価に関する検討
事業期間:2018~2022年度
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:神戸、市川、須澤、阿部(正)
TEL:044-520-5248 E-mail:furon-taisaku@ml.nedo.go.jp
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、髙津佐、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp