Project

多様な未利用資源から生み出される


大きな可能性を秘めた水素エネルギーで


「脱炭素社会」の明るい未来へ。

Project Member

SUZUKI Atsuyuki

次世代電池・水素部 主任
2012年入構
理学院 自然史科学専攻

地球環境問題の解決に寄与する研究支援を志してNEDOに入構。2030年頃には、世界に先駆けて本格的な水素サプライチェーン構築と供給システム確立を目指し、エネルギーセキュリティの確保に大きく貢献したいと考えている。 #好きな言葉は「人間万事塞翁が馬」 #趣味は車とカメラ #高校時代は水球部 #将来、自分でも燃料電池自動車に乗りたい

担当業務

再生可能エネルギーからの水素製造、大規模水素国際サプライチェーン構築、水素火力発電などの実証に取り組む「水素社会構築技術開発事業」の事業実施に向けた関係機関との調整や広報活動など全面的にマネジメントする。

GOTO Kenta

次世代電池・水素部 主任
2010年入構
総合理工学研究科

先端技術を社会に橋渡しする役割に魅力を感じてNEDOに入構。技術者目線の情報を一般の人にわかりやすいように情報発信するのが自らの役割と考える。水素社会実現に向けて、日本社会全体に働きかけをしていく。 #好きな言葉は「前車覆轍」 #先人の失敗を学び現在の戒めにする #趣味は草野球 #機構公認の野球部ザ・ボンバーズに所属

担当業務

水素社会構築のための調査事業として、広く国民に向けた広報活動、国内各地域の可能性調査を推進する。委託先の広告代理店、デジタル分野のインフルエンサーなど関わる分野は幅広い。

世界の最前線で、
水素エネルギーの製造・
供給システムを構築する

2019年9月25日、経済産業省とNEDO共催の「水素閣僚会議2019」が開かれた。35カ国から閣僚約600人を招き、水素社会実現に向けて各国の取り組みや最新技術について共有・議論し、未来に向けた世界全体での取り組みをまとめた「グローバル・アクション・アジェンダ」が発表された。水素エネルギー技術分野で日本はトップランナーであり、技術のみならず国際ルール確立や連携においてもイニシアティブをとっていく

――そのことをあらためて世界に向けて発信する取り組みでもある。 NEDOで水素社会構築技術開発事業に携わる鈴木敦之は、日本と水素エネルギーの関係をこう語る。「日本が化石燃料に代わるエネルギーとして『水素』に着目したのはオイルショックが契機で、1980年に現在のNEDOの前身である新エネルギー総合開発機構が設立されました。以来、化石燃料に代わる新エネルギーの一つとして、『水素』に着目したさまざまな技術開発が進めてきました。近年高まる持続可能な社会実現への要請と相まって、いよいよ本格的な水素の利活用が始まろうとしています。水素閣僚会議の開催は、水素社会の実現に向けて各国が歩調を合わせ、政策やビジネスを確立していくことを確認したシンボリックな会議だったと思います」

この会議と時を同じくして、NEDOが推進してきた「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(福島県浪江町)の完成が近づいている。ここは東京ドーム約4個分の広さに並ぶ太陽光パネルで発電した電力などで水を電気分解して、最大で年間900トンの「水素」を製造可能な、世界初の大規模水素エネルギー製造実証試験施設だ。「すでに個別機器の動作運転は始まっており、2020年度からは本格的な製造試験が開始され、福島でつくられた水素が出荷されます」 再生可能エネルギーは需給調整に課題があるが、電気を水素に変えることで長期貯蔵、需要に応じて発電することも可能となる。「例えば、日射の強い夏に水素を製造・貯蔵して、冬に燃料電池を使って発電し、排熱で給湯にも使う。そんな効率的なエネルギー活用ができる時代がやってくる。そんな可能性を世に知らしめていくのがFH2Rの役割の一つです」

一方で、再生可能エネルギーだけで、私たちの生活をまかなうだけの水素エネルギーを生み出すことは難しい。NEDOは水素の製造・輸送・貯蔵・利用までの一貫したネットワークを世界各国と日本の間で実現するための実証試験も計画している。 「今、私たちは世界を股にかけた大規模な水素のサプライチェーン構築のための実証にも着手しています。今進めているのが、オーストラリアの品位の低い石炭、褐炭から液化水素を製造して輸送する取り組みと、ブルネイの天然ガス製造プラントからの副生ガスを有機ハイドライド(MCH)として輸送する取り組みがあります。ここの取り組みで海外の未利用な資源を使うことで、安定的かつ安価に水素を供給することを目指しています」

水素は、地球上のさまざまな資源からつくることができる。化石燃料をはじめ、バイオマスや廃棄物、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを使った水の電気分解でも製造可能な、未来のエネルギーとして大きな可能性を秘めているのだ。

世界の最前線で、
水素エネルギーの製造・
供給システムを構築する

水素エネルギーの可能性を国民一人ひとり、また、地域にまで浸透させていく役割を担うのが、鈴木と同じく水素社会構築技術開発事業で調査事業を担当する後藤謙太だ。 「今は個人がエネルギーを選択する時代です。例えば、燃料電池自動車とガソリン自動車があったらどちらを選ぶか。いくら環境に優しいエネルギーだといっても使う人がいなければ水素エネルギーは普及しません。ですから、水素エネルギーの特徴を環境面、利便性、コスト面などあらゆる角度からわかりやすく情報発信するのが私の役割です」

これから社会を担う若い世代へのアプローチを目指し、後藤が手がけたのは人気YouTuberによる水素エネルギーの紹介動画、twitterでの漫画掲載など、デジタルコンテンツの発信だ。 「どう表現したら水素の魅力が伝わるか、制作者と話し合いながら練り上げていきました。YouTubeでは130万回近い再生を記録し、想像以上の反響が得られました。効果を分析して、次につなげていきたいと思っています」

情報発信と並行して、後藤は日本の地域における水素エネルギーの“地産地消”モデルの構築にも乗り出している。

「水素はさまざまな資源から製造できます。地域で豊富に存在する再生可能エネルギーから水素を製造する、あるいは酪農施設から集めた糞尿からバイオガスを発生させて水素を製造するなど、地域産業に合わせて多様な可能性があります。現在、全国6カ所を対象として、地域の事業者と連携してその可能性を探っていくプロジェクトも進めています」 製造、供給、情報発信とあらゆる角度から水素社会の実現に乗り出すNEDO。かつて資源小国といわれた日本が国策として取り組んできた水素エネルギーへの挑戦が今、実を結ぶフェーズに突入しようとしている。二人はその最前線に立ち、この国の行く末を明るい未来へとつなげる試みに挑んでいる。