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「半導体」知っておきたい基礎知識

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2026年4月27日

持続可能な社会の実現のために、革新的な技術開発が期待される「半導体」。概況や課題など、社会実装に向けた道筋をわかりやすく解説します。

  1. 1.半導体が拓く持続可能なスマート社会
  2. 2.半導体でできること
  3. 3.半導体とはどのような物質か
  4. 4.半導体デバイスの製造工程
  5. 5.これからの半導体産業

1.半導体が拓く持続可能なスマート社会

「半導体」という言葉は、文脈により半導体という物質そのものを指す場合もあれば、半導体デバイスを指す場合、半導体産業全体を指す場合があります。

「半導体物質」を使った電子部品などの「半導体デバイス」は、スマートフォンやコンピュータなどの高度なデジタル機器はもちろん、自動車や家電製品、さらには充電器に至るまで、ほぼすべての電子機器に組み込まれています。

近年では、生成AIの急速な発展により、高性能な半導体デバイスの重要性が一層高まっています。AIの処理能力向上と消費電力の削減を両立させるためには、より高度な半導体デバイス技術が不可欠です。

また、脱炭素社会の実現に向けても半導体デバイスの役割は拡大しています。太陽光発電や風力発電の電力制御、電気自動車の普及、データセンターの省エネ化など、環境技術の進歩には高性能な半導体デバイスが欠かせません。

このように、私たちの暮らしと社会の発展にとって半導体デバイスは極めて重要ですが、製品の内部に組み込まれているため、普段目にする機会はほとんどありません。そのため、実際にどのようなものなのか、具体的なイメージを持ちにくいかもしれません。

2.半導体でできること

「半導体」は、なぜこれほどまでに私たちの日常に浸透しているのでしょうか。それは、半導体を使うことで、特殊な機能(働き)を持つさまざまな部品である「半導体デバイス」をつくることができるからです。ここでは、「半導体デバイス」を6つの機能で分類します。

(1)機能による半導体デバイスの6つの分類

〔1〕計測する

温度、重さ、圧力、加速度、磁気などの物理量を電気信号として計測・検出するデバイスです。人の感覚器官に相当する機能を果たすデバイスで、各種センサがこれに該当します。なお、計測・検出した電気信号は、用途に応じてアンプなどのデバイスで増幅されます。

エアコンや調理家電の温度計測、体重計・体組成計、デジカメの手ぶれや明るさの計測・検出、スマートフォンやタブレット端末の画面回転などの機能は、半導体を組み込んだセンサが状況を計測・検出することで実現されています。また携帯端末や無線通信機器では、内蔵されたアンプが送信時に信号を増幅し、受信時には信号を明瞭にすることで、安定した通信を可能にしています。

〔2〕記憶する

人の脳の記憶機能のように、デジタル信号(0または1)のデータを記憶するデバイスです。パソコンやスマートフォン、タブレット端末の内部メモリ、USBメモリやSDカードなどの記憶媒体、各種家電製品のメモリ機能がその代表例です。

〔3〕計算する

四則演算などの計算処理を実行するデバイスで、パソコンやタブレット端末、スマートフォンのCPUや、電卓などの家電に使用されるマイコンがその代表例です。人の脳の思考機能に相当し、AIの処理もこのデバイスで行われています。

〔4〕エネルギーや力を制御する

電源が出力する電圧、電流、周波数を自由に変化させることで、モータの回転数や力、照明の明るさなどを調整するデバイスです。人でいえば筋肉の機能にあたります。代表的なものにパワートランジスタがあります。

パワートランジスタは、スマートフォンやタブレット端末の充電器、パソコンのACアダプタ、家電製品(エアコン、調理家電、洗濯機など)用電源、電動車(ハイブリッド車、電気自動車)、電気鉄道、産業用機器のモータ駆動用電源、IHクッキングヒーターの高周波電源など、幅広い用途で活用されています。また、太陽電池で発生した直流電力を、家庭や産業などで広く使われている交流電力に変換して使いやすい状態に変える際にも使用されます。

〔5〕光を送り出す

LEDや半導体レーザーは、電気入力を光出力に変換するデバイスです。LEDは照明器具やON/OFFのインジケータ、人感センサや家電用リモコンの発光部などに利用されます。一方、半導体レーザーは、光ディスクやレーザーポインタ、光通信の送信部分などの光源として利用されています。

〔6〕光を受け取る

太陽電池やフォトダイオードは、光入力を電気出力に変換するデバイスです。太陽光発電、光通信、各種センサの受光部分などで活用されています。その機能から、センサの一種と考えることもできます。

(2)機能・用途による分類

半導体デバイスは、機能や用途に応じて、アナログ半導体、デジタル半導体、パワー半導体、光半導体の4つに分類されることもあります。

  種類 機能・用途 代表的な半導体デバイス 主な使用例
1 アナログ半導体 温度、音、圧力などの物理量として計測・検出・処理・制御する半導体。 各種センサ(温度、重さ、圧力、光など)、増幅器(アンプ) 体温計、体重計・体組成計、オーディオ機器(アンプ)、家電製品のセンサ部
2 デジタル半導体 記憶や計算処理に使用される半導体。ロジック半導体とも呼ばれる。 LSI、マイコン、メモリ コンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、デジタル家電、ゲーム機
3 パワー半導体 電流・電圧を制御する半導体。基本動作は、電流のオンとオフの組み合わせ。 パワートランジスタ、ダイオード スマートフォン・タブレット端末の充電器、ACアダプタ、ハイブリッド車・電気自動車のモータ駆動用インバータ、家電製品用電源、産業用機器のモータ駆動用電源
4 光半導体 光入力を電気出力に、あるいは電気入力を光出力に変換する半導体 太陽電池、フォトダイオード、LED、レーザーダイオード 太陽光発電、LED、光通信

図表2.半導体デバイスの機能・用途による分類

3.半導体とはどのような物質か

そもそも半導体とはどのような性質を持つ物質なのでしょうか。ここでは、物性の観点から説明していきます。

物質は電気的な性質によって、大きく3つに分類されます。1つ目は、金、銀、銅などのように電気を良く通す「導体」。2つ目は、ゴム、ガラス、磁器などの電気をほとんど通さない「絶縁体」。そして、3つ目が、これらの中間的な性質を持つ「半導体」です。代表的な半導体物質としては、Si(シリコン、ケイ素)やGaAs(ガリウムヒ素)、InP(リン化インジウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)などが挙げられます。

半導体の特徴的な性質は、周囲の温度や不純物の量、光の照射量などによって「電気の流れやすさを変えられる」点にあります。さらに重要なのは、この性質を外部から自由に制御できることです。さまざまな半導体デバイスは、この特性を活かして用途ごとに設計されています。

半導体の種類 半導体となる物質の代表例
単元素半導体 Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)など
化合物半導体 ZnS(硫化亜鉛)、ZnSe(セレン化亜鉛)、CdTe(テルル化カドミウム)など
GaAs(ガリウムヒ素)、InP(リン化インジウム)、GaN(窒化ガリウム)
SiC(炭化ケイ素)、SiGe(シリコンゲルマニウム)

半導体は、構成する元素の数によって「単元素半導体」と「化合物半導体」に分類される。単元素半導体は、Si(シリコン)やGe(ゲルマニウム)のように、1種類の元素だけで構成される。化合物半導体は、複数の元素を組み合わせて作られ、周期表のII族とVI族、III族とV族、またはIV族同士の元素の組み合わせが代表的。

4.半導体デバイスの製造工程

次に、半導体デバイスがどのようにつくられるのか、その製造工程に目を向けてみましょう。

半導体デバイスは、ダイオードやトランジスタなどの単一素子で構成される「ディスクリート(個片)半導体」から、数十個から1000個以上の素子を組み合わせた「大規模集積回路(LSI:Large Scale Integrated Circuit)」、1000万素子以上を組み合わせた「超々大規模集積回路(ULSI:Ultra Large Scale Integration」)まで、さまざまな種類があります。これらの半導体デバイスは、規模に関わらず、「設計」「前工程」「後工程」の3つの段階を経て製造されます。

分類 略称 素子数の目安 主な年代
小規模集積回路 SSI(Small Scale Integration) 100素子以下 1958~1960年代
中規模集積回路 MSI(Medium Scale Integration) 100~1000素子レベル ~1960年代後半
大規模集積回路 LSI(Large Scale Integration) 1000素子以上 1970年代~
超大規模集積回路 VLSI(Very Large Scale Integration) 100万素子以上 1980年代後半~
超々大規模集積回路 ULSI(Ultra Large Scale Integration) 1000万素子以上 1990年代~

図表4.集積回路(IC)の分類
注)素子数は概略としての目安で,厳密な定義はない
出典:一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)ICガイドブック―2006年度版―をもとにNEDO作成

・設計
この段階では、トランジスタなどの半導体素子の構造や回路のデザインを行います。組み込み搭載する製品に求められる機能を、より低コストで実現できるよう、設計図や作業手順を綿密に決定します。
・前工程
設計図や作業手順に基づき作成された超高純度の半導体材料を加工して作られる薄い円盤状の「半導体ウエハ」の上に電子回路(パターン)を形成します。
・後工程
半導体ウエハ状に作られた多数の半導体チップ毎に切り分ける(ダイシング)工程から始まります。次に、半導体チップを外部と接続するための金属枠(リードフレーム)やセラミック基板などに固定し、金属線などで外部接続用端子と配線接続します。

近年、半導体の高性能化への要求に応じて、半導体デバイスの微細化技術が急速に進展しています。微細化とは、トランジスタなどの素子や半導体チップ上の回路を、より小さく・細かくしていく技術のことです。

こうした技術の進展により、半導体の製造工程はますます高度化・複雑化しています。そのため、各工程を専門企業が分担する「水平分業型」の生産体制が主流となっています。各工程に特化した専業企業が高度な技術や専門性を活かして製造を担うことが、現代の半導体産業の大きな特徴です。

5.これからの半導体産業

半導体デバイスは現代のあらゆる産業における基盤技術となっており、その供給が滞ると製品製造に大きな支障をきたします。そのため、世界各国が自国の半導体産業の育成に力を注ぎ、激しい競争を繰り広げています。

令和7年版情報通信白書※1によると、世界の半導体市場(出荷額)は2024年には906億ドル(前年比4.7%減)となりました。2013年からの伸び率が最も高い画像センサについては日本企業(ソニーセミコンダクタソリューションズ)が51.1%シェアを占めています。また、世界半導体市場統計(WSTS:WORLD SEMICONDUCTOR TRADE STATISTICS)によれば、2023年および2024年は世界的なインフレや利上げ、地政学的リスクの影響でAI関連を除く需要は低調に推移しました。一方で、2025年、2026年はAI関連需要に加え、大手IT企業等によるデータセンター投資が市場を牽引し、メモリ製品とロジック製品は特に高い成長が見込まれています※2※3

このように社会情勢の影響を受けながらも、半導体デバイス産業は今後も世界的な成長が見込まれます。その中で、日本の半導体デバイス産業が進むべき方向として、「先端半導体の開発」と「レガシー半導体の安定供給」という2つの重要な課題が挙げられます。

まず、ひとつ目は、先端半導体の開発です。近年、半導体の微細化は急速に進み、2ナノメートル(nm)世代を超える「ビヨンド2ナノ」と呼ばれる最先端半導体の開発競争が世界的に激化しています。こうした超微細プロセス技術は、トランジスタの集積度を飛躍的に高め、より高速かつ省エネルギーな情報処理を可能にします。

生成AIのさらなる進化や自動運転自動車の実現、5G/ポスト5G通信、データセンターの省エネ化など、次世代の社会インフラを支えるためには、こうした最先端半導体が不可欠です。

これを実現するためには、設計・前工程・後工程の各段階で、現状を上回る技術革新が求められます。NEDOは、先端半導体開発支援などを通じて、日本の最先端半導体産業の発展を強力に後押ししています。

事業名 事業内容
ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業 今後の情報通信の発展を見据え、現在各国で商用サービスが始まりつつ第5世代移動通信システム(5G)よりもさらに超低遅延や多数同時接続といった機能が強化された5G(ポスト5G)による情報通信システムに用いられる半導体などの開発を支援する。
省エネエレクトロニクスの製造基盤強化に向けた技術開発事業 脱炭素社会の実現を目指し、次世代パワー半導体の開発と製造装置の高度化を推進。この取り組みによって、省エネ性能の高い電子機器の生産体制を確立するとともに、開発された先進的なパワー半導体と製造装置を産業分野や半導体工場へ導入することで、電力変換時のエネルギー損失を抑制し、CO2排出量削減を目指す。
省エネAI半導体及びシステムに関する技術開発事業 ネットワークの末端(エッジ)領域においてエッジデバイスにおけるリアルタイムの情報処理を主体に、必要に応じエッジサーバを含む領域で活用するAI半導体およびシステムに関する技術開発を推進するとともに、それらの半導体開発を高速かつ効率的に実施できる設計技術の確立を目指す。それにより、日本が強みを持つ産業領域でのデジタル化推進し、国際競争力の維持・強化、新たな産業基盤の確立に加えて、増大し続ける情報量の効率的な処理に貢献する。
特定半導体生産施設整備等助成業務 特定半導体の生産施設の整備・生産に関する計画を作成し経済産業大臣の認定を受けた事業者に対する助成金の交付と、認定事業者への貸付金融機関への利子補給金の支給を行う。

図表6.NEDOの「半導体技術開発」の取り組み(2025年度実施中プロジェクト)

もうひとつは、レガシー半導体の安定供給です。レガシー半導体とは、「必ずしも最先端ではない従来型の半導体(技術世代28nm以前)」のことです。私たちが日常的に使用する多くの製品には半導体が組み込まれていますが、それらに使われている半導体は必ずしも最先端半導体ばかりではありません。むしろ、レガシー半導体が重要な役割を果たしており、パソコンや家電製品、自動車などに使用する半導体など身の回りの多くの製品に使われているのが実情です。

このように身近な製品の製造や保守など、私たちの生活や産業に不可欠なレガシー半導体の安定供給は、安定的な日常生活にとっても極めて重要です。実際、コロナ禍ではテレワークの普及に伴う情報通信機器の需要急増や、製造工場の操業停止などによるマイコン製造量の減少などから、パソコンや家電製品、自動車などに使用する半導体の入手が困難になる事態が発生しました。このような事態を防ぐためにも、レガシー半導体の生産から製品への組み込みまでを支える国際的なサプライチェーンの構築は、国家的な重要課題となっています。

半導体産業は今後も成長が期待される分野であり、日本が競争力を維持・強化するためには、先端技術の開発と、レガシー半導体の安定供給の両輪を確立することが不可欠です。技術革新と供給網の強化を同時に進めることで、日本の半導体産業は国際競争のなかでより強固な地位を築くことができるでしょう。

  • ※1:総務省「令和7年度版 情報通信白書」
  • ※2:世界半導体市場統計(WSTS)「2025年秋季半導体市場予測について」
  • ※3:本稿で引用している※1総務省「令和7年版 情報通信白書」における「半導体市場(出荷額)」は、画像センサ、MCU、MEMSセンサ、ディスクリート半導体等を対象とした定義であり、※2世界半導体市場統計(WSTS)が用いる世界半導体市場の定義とは対象範囲が異なります。