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自動配送ロボットによる配送サービスの実用化への取り組み
―国内初となる公道における10台同時運用の実証実験を実施―

2025年3月17日

【ポイント】

  • 社会ニーズを受け立上げた自動配送ロボットの実用化展開に向けた研究開発事業
  • 1人の遠隔監視・操作オペレータによる自動配送ロボットの10台同時運用を達成
  • 運用効率の向上により、ラストマイル物流の課題解決に貢献可能

【概要】

NEDOは物流の人出不足等の課題解決のため、開発要素を整理して研究開発事業を立ち上げ、自動配送ロボットの社会実装に向けた機会を創出してきました。その中で、助成事業である「革新的ロボット研究開発基盤構築事業/自動配送ロボットによる配送サービスの実現」(以下、本助成事業)において、パナソニックHD株式会社は、1人の遠隔監視・操作オペレータ(以下、オペレータ)による自動配送ロボットの10台同時運用の実証実験を実施しました。公道での10台同時運用の実証実験は国内初の取り組みです。

自動配送ロボットは、走行路上の交通状況ならびにロボット自身の状態をオペレータが常に監視し、必要に応じて遠隔操作を実施します。そのため、同時に運用する台数を増やすためにはオペレータの負荷低減が重要となります。

本助成事業による研究開発を通じて、遠隔監視業務の効率化やロボットの自律走行性能の向上を実現し、オペレータの負荷を低減させることで、同時走行可能な運用台数の増加を目指してきました。そして、これまでの国内における1人のオペレータによる同時運用台数の実績値である4台を超え、道路使用許可にもとづく10台運用の実証実験を実施できるようになりました。

これにより、自動配送ロボットによる配送サービスの効率化や運用の自由度が大きく向上するものと期待されます。また、今後、10台同時運用の安全性等の確認を進めることで、自動配送ロボットによる配送サービスの実用化と社会普及が大きく前進し、ビジネスエコシステムの醸成につながることが期待されます。

1.背景

近年のeコマース市場の拡大などにもとづき宅配需要が増加する中、物流分野における人手不足や、買物困難者対策など、物流分野で解決が必要な課題は多数存在します。2030年には物流需要の約34%が運べなくなるとの試算※1も存在します。これらの課題解決の一助として期待される取り組みが、自動配送ロボットによる配送サービスです。ドライバー不足が特に深刻なラストマイル物流では、ドライバーに代わり物流拠点や小売店舗・飲食店から住宅やオフィスなどへの宅配やフードデリバリーを担うことが期待されます。

2023年4月に施行された道路交通法の一部を改正する法律により、一定の条件を満たし遠隔操作で走行するロボット※2は、歩行者と同様の交通ルールで公道の通行が可能となりました。ロボット1台あたりの輸送量はトラック等に比べて少なくなるため、オペレータ1人あたりのロボットの運用台数を増やすことが実用化に向けた重要な課題となります。

NEDOは物流分野における課題解決につながる技術開発要素を整理し、2020年度に自動配送ロボットの研究開発事業を立ち上げました。2022年度からは、より実用化・サービス化を重視した課題設定を行い、事業化のための採算ラインの目安として10台運用を最終目標の1つに設定して、自動配送ロボットの社会実装にむけた開発支援を推進してきました。

2.今回の成果

パナソニックHDは、本助成事業の最終年度となる2025年1月23日に「歩道走行型ロボットの公道実証実験に係る道路使用許可」における公道審査に合格し、10台同時運用の実証実験を開始しています※3。遠隔地における多拠点の自動配送ロボットの同時運用可能なサービス展開も視野に、実用化に向けた実証を進めています。

同様に本助成事業の実施事業者である株式会社ZMPとLOMBY株式会社も、公道を含む環境下での10台運用を目指して開発を継続しています。ZMPは都市部かつ信号機のある横断歩道が多数存在する環境下において走行実績を積むことで、配送需要の多い人口密集地域での実用化を見据えた検討を行っています。LOMBYは、コンビニエンスストアとの連携によるサービス実証を推進するなど、早期の実用化展開に向けた検討を行っています。また、京セラコミュニケーションシステム株式会社は車道を走行する中速・中型の自動配送ロボットに関する開発およびサービス実証の検討を行っています。

3.今後の予定

NEDO助成事業の成果をもとに、今後は各事業者にて社会実装を目指した取り組みを継続していく予定です。NEDOとしても自動配送ロボットによる配送サービスの社会受容性の向上に向けた普及展開活動を継続し、自動配送ロボット業界の活性化と物流課題解決への貢献を目指します。