本文へジャンプ

冷媒の燃焼性に関する安全性評価手法を踏まえ国際規格が改訂
―低温室効果冷媒を用いた家庭用エアコンの普及拡大に貢献―

2018年5月8日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 石塚博昭

NEDOプロジェクトにおいて、産業技術総合研究所が確立した温室効果の低い微燃性冷媒の安全性評価手法を踏まえ、家庭用電気機器の安全性に関する国際規格(IEC)が改訂されました。

確立した評価手法は、従来ほとんど取り組まれていなかった湿度を考慮した冷媒の燃焼性を定量的に測定するものであり、これにより家庭用エアコンの内部機器内で火花が発生した場合の微燃性冷媒の燃焼性が明らかになりました。

今回の国際規格改訂により、微燃性冷媒を使用する家庭用エアコンにおける安全要求が適正化されるとともに、低温室効果冷媒を使用した家庭用エアコンの普及拡大が期待されます。

1.概要

冷媒の燃焼性評価研究において、従来、湿度は燃焼性にほとんど影響を与えないと考えられてきたため、湿度の影響を定量評価した報告例はほとんどありませんでした。しかし、NEDOプロジェクト「高効率ノンフロン型空調機器技術の開発」(2011~2015年度)によって、微燃性冷媒の中には、湿度によって燃焼性が大きく変化するものがあることが分かってきました。

また、冷媒の燃焼性の分類を規定した国際標準(ISO817)においては、その分類基準の一つである燃焼限界の試験実施条件を「温度23℃、相対湿度50%RH」としていますが、実際にはこれ以上の高湿度条件で冷凍空調機器が使用される地域も多く、湿度影響を考慮した安全性評価が必要でした。

このような背景のもと、NEDOプロジェクトにおいて、産業技術総合研究所は、実際の高湿度条件を考慮した燃焼速度および消炎直径の試験法を開発し、定量的に測定する方法を確立しました。これによって微燃性冷媒の消炎直径が明らかになりました。その結果、微燃性冷媒を使用した家庭用エアコンの内部にある電磁開閉器(リレー)内でスパークが発生した場合、リレーカバーに設けた開口部が消炎直径よりも小さければ、カバー内で着火した火炎はその開口部で消炎し、カバー外に通過しないことが判明しました。また、どの程度の電圧、電流を遮断する際に着火が生じるかの限界についても研究を行い、一定容量以下のリレーなどは微燃性冷媒の着火源にはならないことを確認し、燃焼速度との関係を明らかにすることで一般化しました。

これらの成果に基づき、国際電気標準会議が制定する国際規格「IEC 60335-2-40(家庭用及びこれに類する電気機器の安全性:空調機・除湿機への特定要求事項)」の電磁開閉器(リレー)の安全要求などについて改訂が提案され、2018年1月26日付で発行されました。今回の国際規格改訂により、微燃性冷媒を使用する家庭用エアコンにおける安全要求が適正化されるとともに、そうした家庭用エアコンの普及拡大が期待されます。

今回、改訂された国際規格IEC 60335-2-40の主な適正化のポイントは、以下の通りです。

  • リレーなどにおいて微燃性冷媒の火炎伝播を防止する開口部の最大サイズ(消炎直径)が規定されました。
  • 消炎直径を決定するために必要となる燃焼速度について、湿度の影響を考慮することとされました。
  • 燃焼速度に応じて、一定容量以下のリレーなどの電気接点は着火源と見なさないこととされました。
  • 冷媒の消炎直径と電磁開閉器(リレー)カバー開口部サイズの比較を表した図
    図 冷媒の消炎直径と電磁開閉器(リレー)カバー開口部サイズの比較

2.今後の予定

温室効果の小さな冷媒は燃焼性を待つものが多いため、実際の使用環境を反映した条件での燃焼性を適正に評価し、実用時の安全性を確保していくことが重要です。NEDOは、今後も温室効果を低減できる冷媒を用いる次世代冷凍空調技術の開発と実用化に貢献していきます。

【注釈】

※ 消炎直径
すでに持続伝播している火炎を消炎に至らしめる最大の開口部の大きさで、燃焼速度の逆関数。この大きさ以下の開口部であれば消炎し、火炎は開口部を通過しない。

3.お問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 環境部 担当:神戸、須澤、阿部(正) TEL:044-520-5248

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:髙津佐、坂本、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp