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電子タグを用いた情報共有システムの実証実験を実施へ
―IoT技術で食品ロスなどの社会課題の解決を目指す―

2019年2月8日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 石塚博昭

NEDOは、経済産業省、大日本印刷(株)とともに、食品・日用品などのメーカー、卸売、コンビニエンスストア、ドラッグストア、そして一般家庭モニターの協力を得て、電子タグ(RFID)を用いた情報共有システムの実証実験を2月12日から28日まで実施します。

実証実験では、商品一つ一つに貼り付けた電子タグからデータを取得し、生活者を含むサプライチェーン上のさまざまな事業者と連携させるとともに、商品の広告最適化などの新たなサービスの有効性を検証します。

今回の実験を踏まえて、IoT技術による新サービスの実現により、食品ロスなどの社会課題の解決を目指します。

電子タグを貼り付けた商品画像
図1 電子タグを貼り付けた商品の写真例
  • 情報共有システムのイメージ図
    図2 情報共有システムのイメージ

1.概要

国内の消費・流通に関わるメーカー、卸売、小売事業者は、少子高齢化の影響を受け、人手不足と労務コストの上昇に直面しています。また、大量生産、多頻度配送を支える精緻なロジスティクスが実現されている一方、サプライチェーン全体としては食品ロスや返品といったさまざまな課題が生じています。これは、サプライチェーン上の各事業者に物流などの情報が散逸し、一元的に共有・可視化できないことが原因の一つと考えられています。この解決のために、一つ一つの商品に電子タグ(ICタグともいう)を貼り付ける方法が考えられています。また、電子タグの情報の取り扱いについては、商品の移動情報などをコンピュータ・サーバー上に蓄えて共有するための情報記述方法などの仕様として、EPCIS(Electronic Product Code Information Services)※1が、サプライチェーンの情報管理方法に関する国際標準団体GS1においてまとめられています。そこで、電子タグを活用してEPCISに準拠した情報共有のためのシステムの実装を進めるために、サプライチェーン上の各事業者の協力に基づく大規模な実証実験が必要とされています。

経済産業省は、2017年4月にコンビニエンスストア各社と「コンビニ電子タグ1000億枚宣言※2」を、2018年3月に日本チェーンドラッグストア協会と「ドラッグストア スマート化宣言※3」を策定し、電子タグなどを活用した次世代のサプライチェーンに関する指針を示しています。

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、データの活用による社会課題の解決や付加価値の創出を促進するために、社会的・公益的観点で実施すべき新規課題について、データの連携や活用を促す業界横断的な共通仕様の整備、実現可能性、制度的な課題の特定や改善に関する研究開発事業※4を実施しています。

本事業において、委託先実施者の大日本印刷株式会社(以下、DNP)は、EPCISに準拠したシステムとして、電子タグ(RFID※5)を活用して、サプライチェーン全体の流通に関する情報を共有するシステム(以下、情報共有システム)の構築に関する研究開発や、情報共有を行う際のデータフォーマットやルール整備などの検討を行っています。

今回、NEDOは、経済産業省、DNPとともに、食品・日用品などのメーカー、卸売、コンビニエンスストア、ドラッグストアといったサプライチェーン上の事業者に加え、一般家庭モニターの協力を得て、電子タグを用いた情報共有システムの実証実験を2月12日から28日まで実施します。食品や日用品などの商品一つ一つに貼り付けた電子タグから取得されるデータと、生活者を含むサプライチェーン上のさまざまなデータを連携させ、商品の広告最適化などの新たなサービスの有効性を検証します。

今回の実験を踏まえ、IoT技術による新サービスの実現により、食品ロスなどの社会課題の解決を目指します。

2.実証実験の概要

【1】実証内容

本事業では、電子タグを用いたデータ連携に関する、以下の3点の実証実験を行います。

(1) サプライチェーンの事業者間の連携

昨年度の実験※6と同様に、メーカーまたは物流センターにおいて、日用品、食品、飲料などの実験対象商品に電子タグを貼り付け、流通過程で入出荷される際に電子タグを読み取り、当該データを実験用に構築した情報共有システムに蓄積することで、在庫情報の可視化を行います。また、メーカーから卸売、小売事業者までの商品情報のトレーサビリティの検証を行います。

さらに、今年度の実験では、実験協力先の一般家庭モニターにおいても電子タグを読み取り、家庭内での電子タグの活用方法や新サービスについても検討を行います。

(2) 店舗と生活者との連携

実験協力先コンビニエンスストアおよびドラッグストアにおいて、電子タグを用いて、情報共有システムと生活者のスマートフォンアプリなどの外部システムとを接続し、以下の2つのサービスの実験を行います。電子タグの活用領域を生活者まで拡張することにより、生活者の利便性や付加価値を創出することができるかについて検証します。

表1 店舗と生活者との連携に関する実験内容

ダイナミック
プライシング
棚に設置された RFIDリーダーが自動で電子タグを読み取ることで消費・賞味期限が迫っている商品を特定し、当該商品を購入すると現金値引きまたはポイント還元を行う旨、一般の実験参加者のスマートフォンなどに通知を行うことで、食品ロスの削減を促す取り組み
広告最適化 来店者が手に取った商品の電子タグを、棚に設置されたRFIDリーダーが自動で読み取り、商品棚に設置されたサイネージで当該商品の情報などを流す取り組み
(3) 電子タグを用いた家庭内サービスの体験

本事業において、2018年12月にIoTを用いた未来社会のアイデアソン・ハッカソン※7を行いました。そこで生まれたアイディアを基に、商品に貼付した電子タグを用いて家庭内でどのようなサービスが実現できるかについて、NEDOと経済産業省、DNPがアイデアソン・ハッカソンに参加したチームと共に検討しました。検討結果について、東京ガス株式会社の協力を得て、「東京ガス 横浜ショールーム」で展示を行い、一般のショールーム来場者から実際に体験した感想やフィードバックを得ます。

具体的には、電子タグにより「ひと・もの・いえがつながる未来」というテーマのもと、ゴミの分別が正しいかを判定するスマートゴミ箱や、レシピに対して正しい調味料を使ったかを判定するスマートレシピなど、検討結果の一部を体験できます。

【2】スケジュールなど

(1) 実験期間

2019年2月12日~28日(ウエルシア 千代田御茶ノ水店のみ15日開始)

(2) 「店舗と生活者との連携」の実験店舗
  • ウエルシア 千代田御茶ノ水店(東京都千代田区)
  • ココカラファイン 清澄白河店(東京都江東区)
  • ツルハドラッグ 目黒中根店(東京都目黒区)
  • ミニストップ 神田錦町3丁目店(東京都千代田区)
  • ローソン ゲートシティ大崎アトリウム店(東京都品川区)
(3) 「電子タグを用いた家庭内サービス」の体験場所

東京ガス(株) 横浜ショールーム(神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目5-1 MARK IS みなとみらい 4階)

(4) 実証実験の詳細および参加・体験方法

経済産業省プレスリリース(2月8日発表)参照。

【注釈】

※1 EPCIS(Electronic Product Code Information Services)
サプライチェーンの可視化を行うため、商品の移動情報などをコンピュータ・サーバー上に蓄え、共有するための仕様。
※2 コンビニ電子タグ1000億枚宣言
経済産業省とコンビニ5社の(株)セブン‐イレブン・ジャパン、(株)ファミリーマート、(株)ローソン、ミニストップ(株)、(株)JR東日本リテールネットが、2025年までに全ての取扱商品(推計1000億個/年)に電子タグを利用することについて、一定の条件の下で合意したもの。
※3 ドラッグストア スマート化宣言
経済産業省と日本チェーンドラッグストア協会が、スマートストアの実現に向けて、2025年までに取扱商品に電子タグを利用することについて、一定の条件の下で合意したもの。
※4 研究開発事業
IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業/国内消費財サプライチェーンの効率化(2018年度)
※5 RFID(Radio Frequency Identification)
電波を利用して非接触で電子タグのデータを読み書きする自動認識技術
※6 昨年度の実験
メーカーや物流センターで電子タグを事前に食品や日用品などの商品に貼り付け、電子タグから取得した情報を国際標準であるEPCISに準拠した情報共有システムで一括管理し、サプライチェーンを可視化することで、その有効性を検証する先導研究を実施
※7 アイデアソン・ハッカソン
今回、本事業の一環として実施した、未来の日常を考えるイベント。IoTにより商品1つ1つが他の機器やインターネットと簡単につながるようになった際に、どのような新しいサービスが生まれるかを、社会人と学生の混合チームにより検討。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO IoT推進部 担当:工藤、大宮 TEL:044-520-5211

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:藤本、坂本、佐藤 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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