カーボンリサイクル技術における基礎・先導研究レベルの技術開発に着手
―CO2還元技術など8件の研究開発テーマを採択―
2020年7月30日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
NEDOはCO2を資源として捉えて有効利用を図るカーボンリサイクル技術について、基礎・先導研究レベルの技術開発として研究開発テーマ8件を採択しました。具体的にはCO2を還元する技術や、炭酸塩化することでCO2を固定する技術の研究開発に取り組みます。本事業によりカーボンリサイクル技術の中長期的な研究開発を推進し、将来のCO2有効利用技術の社会実装につなげていくことで、CO2の排出削減に貢献していきます。
1.概要
火力発電や各種工場から排出されるCO2の削減は気候変動対策として重要であり、CO2を資源として捉えて回収し、有効利用する「カーボンリサイクル技術」の開発が求められています。経済産業省で2019年6月に策定された「カーボンリサイクル技術ロードマップ」では、CO2を素材や燃料へ利用することなどを通して大気中へのCO2排出を抑制していく方針が示されており、2020年1月に政府で策定された「革新的環境イノベーション戦略」においても、カーボンリサイクル技術によるCO2の原燃料化を通じた産業分野のCO2排出削減の方向性が明記されています。こうした中、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年~2019年に行った調査事業「CO2排出削減のための要素技術検討」において、CO2を還元する技術(CO2還元技術)や炭酸塩化することでCO2を固定する技術(炭酸塩技術)などについて、その技術的優位性やCO2削減ポテンシャル、技術課題などをまとめました。
これらを踏まえ、NEDOはカーボンリサイクル技術の分野で、2020年度からCO2還元技術および炭酸塩技術などについての技術開発に着手することとし、このたび研究開発テーマ8件を採択しました。いずれも基礎・先導研究レベルの課題に取り組み、その成果をカーボンリサイクル技術の研究開発に活用することを目的としています。本事業を通してカーボンリサイクル技術の中長期的な研究開発を推進し、将来のCO2有効利用技術の社会実装につなげていくことでCO2の排出削減に貢献していきます。
2.事業の内容
(1)事業名
カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電技術推進事業/
カーボンリサイクル技術の共通基盤技術開発
(2)事業期間
2020年度~2022年度
(3)事業総額
20億円程度
3.技術分野と採択テーマ・委託予定先
■技術分野:CO2還元技術
CO2を還元することにより、化学品・燃料の原料として需要が見込まれているCOやカーボン材料などを製造する技術です。還元に要するエネルギー源としてCO2排出量の少ない再エネなどを利用することで、本技術によるCO2削減効果を向上できます。一方、エネルギー低減のために、反応メカニズムの解明など基礎研究レベルでの課題解決が重要となります。
採択テーマ | 委託予定先 |
ダイヤモンド電極を用いた石炭火力排ガス中のCO2からの基幹物質製造開発事業 | 一般財団法人石炭エネルギーセンター 学校法人慶應義塾 学校法人東京理科大学 |
CO2電解リバーシブル固体酸化物セルの開発 | 一般財団法人電力中央研究所 国立大学法人東京工業大学 |
高温溶融塩電解を利用したCO2還元技術の研究開発 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 学校法人同志社 |
CO2/H2O共電解技術の研究開発 | 東芝エネルギーシステムズ株式会社 国立大学法人九州大学 |
放電プラズマによるCO2還元・分解反応の基盤研究開発 | 国立大学法人東海国立大学機構 澤藤電機株式会社 川田工業株式会社 |
二酸化炭素資源化のための中低温イオン液体を用いた尿素電解合成の可能性調査 | 一般財団法人電力中央研究所 学校法人慶應義塾 |
■技術分野:炭酸塩技術
炭酸塩化することでCO2を固定する技術であり、燃料や化学品へのCO2利用技術と違い、水素を用いない優位性があります。また、原料として廃棄物を利用することができるため、国内のさまざまな未利用廃棄物※の有効利用も可能です。一方、廃棄物を炭酸塩化すると重金属などの副生物が発生する場合もあるため、副生物の処理・抑制技術なども重要となります。
採択テーマ | 委託予定先 |
カルシウム含有廃棄物からのCa抽出およびCO2鉱物固定化技術の研究開発 | 住友大阪セメント株式会社 国立大学法人山口大学 国立大学法人九州大学 |
石炭灰およびバイオマス灰等によるCO2固定・有効活用に関する要素技術開発 | 三菱日立パワーシステムズ株式会社 一般財団法人電力中央研究所 東洋建設株式会社 一般財団法人石炭エネルギーセンター |
【注釈】
- ※ 未利用廃棄物
- 原料として有効利用されずに、埋め立て処理などされる廃棄物を示します。廃棄物の種類としては、廃コンクリート、鉄鋼スラグ(転炉スラグ、電気炉スラグ)、焼却灰(石炭灰、木質バイオマス焼却灰、廃棄物焼却灰)、スラッジ、濃縮排海水などがあります。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 環境部 担当:越後、園山、在間 TEL:044-520-5293
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:佐藤、坂本、鈴木(美) TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp
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