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航空機エンジン向け国産材料の開発と競争力強化を目指し、2件の研究開発に着手
―革新的な合金開発や材料データベースを構築、航空機の燃費改善に貢献―

2021年5月24日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOは航空機エンジンに使われる国産材料の競争力強化に向け、革新的な合金開発や材料データベースの構築に取り組む2件の研究開発事業に着手しました。

本事業では、航空機の燃費改善や環境適合性向上の要請に応えるため、マテリアルズ・インフォマティクスなどの情報科学を活用した、航空機エンジン向け高機能材料に必要なデータ駆動型の合金探索システムを開発します。また、国産材料の競争力強化に向け、関連企業や研究機関などと連携し、航空機用エンジンに関する材料データの蓄積や強度評価、性能評価などに必要なデータベースを構築します。これを、2040年までに92.8万トンのCO2削減につながるエンジンの実用化につなげ、日本の航空機産業の国際競争力を強化します。

1.概要

近年の世界的なCO2排出量削減の動向を受け、各航空会社はより燃費のよい旅客機の導入を進めています。航空機産業においても燃費を重視した、より性能の高い航空機および航空機エンジンの製造が求められており、技術の獲得競争が激化しています。

特に航空機エンジンは欧米企業を中心とした寡占状態であり、高い安全性の要求とその品質保証体系、航空当局の認証管理など、参入障壁の高い市場といわれています。こうした中、日本の航空機エンジン産業は国際共同開発への参画を通じて事業規模を拡大してきましたが、さらなる事業拡大には技術革新によって優位性を維持する必要があるほか、航空機エンジンの設計段階から開発に携わることで欧米企業の戦略的なパートナーとなることが不可欠です。こうした背景から、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は航空機エンジン向けの革新的な合金開発や材料データベースの構築を目指し、新たに2件の研究開発事業に着手しました。

本事業では、航空機の燃費改善や環境適合性向上の要請に応えるため、マテリアルズ・インフォマティクスなどの情報科学を活用した、航空機エンジン向け高機能材料に必要なデータ駆動型の合金探索システムを開発します。また、国産材料の競争力強化に向け、関連企業や研究機関などと連携し、航空機エンジンに関する材料データの蓄積や強度評価、性能評価などに必要なデータベースを構築します。

これにより、航空機エンジン向け新合金の開発を目指すとともに、海外OEMとの連携に不可欠な認証取得に耐えうるデータベースを構築し、将来の航空機エンジンへの適用および日本の航空機エンジン産業の国際競争力強化を目指します。本事業の開発成果である新合金が次世代航空機に搭載され、軽量化と航空機エンジンの高効率化による燃費改善によって、2040年において92.8万トンのCO2排出量の削減が期待されます。

なお本事業においては、プロジェクトリーダーに榎学教授(国立大学法人東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻)を指名し、研究開発実施予定先と連携し、成果の最大化を図ります。

2.事業の内容

【1】事業名

航空機エンジン向け材料開発・評価システム基盤整備事業

【2】事業期間

研究開発項目2:2021年度~2022年度(予定)

研究開発項目3:2021年度~2025年度(予定)

【3】研究開発テーマ名および実施予定先一覧

今回、新たに研究開発に着手したテーマは以下の2件です。

研究開発項目 研究開発テーマ名 研究開発実施予定先
2 革新的合金探索手法の開発 国立研究開発法人産業技術総合研究所
国立大学法人筑波大学
一般財団法人 金属系材料研究開発センター
JX金属株式会社
3 航空機エンジン用評価システム基盤整備 国立研究開発法人物質・材料研究機構
株式会社IHI
川崎重工業株式会社
三菱重工航空エンジン株式会社
株式会社本田技術研究所
三菱パワー株式会社

【4】開発内容

研究開発項目2「革新的合金探索手法の開発」

航空機エンジン向け材料は、高温、高圧という過酷な環境に耐えることが必要であり、複数の金属元素を適切に組み合わせることで、従来製品よりも軽量で、耐熱性、耐摩耗性、熱伝導性、導電性などに優れた「全く新しい合金」の開発が可能となります。

合金特性は金属元素の組み合わせとプロセス条件で決まりますが、その組み合わせは膨大な数に上るため、従来型の実験方法では天文学的な時間が必要となります。そこで合金探索に必要な良質のデータを大量かつ高速に収集し、マテリアルズ・インフォマティクスを利用して所望の特性を有する合金の探索時間を大幅に短縮するデータ駆動型の革新的な合金探索手法を開発することで、航空機エンジンへの適用可能性を模索します。

研究開発項目3「航空機エンジン用評価システム基盤整備」

最終製品として求められる安全性・信頼性の高さ故、航空エンジンは材料の段階から厳しい認証基準などが求められます。国産材料の競争力を高め、材料データを効率的に取得するために企業や研究機関などと連携し、国内にデータベースを整備します。また、構築したデータベースに基づいて実際に部材を製造し、性能評価試験などを実施します。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 材料・ナノテクノロジー部 担当:飯山、小西 TEL:044-520-5220­

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、橋本 TEL:044-520-5151­ E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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