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グリーンイノベーション基金事業で、CO2などの燃料化と利用を推進
―社会実装を目指した合成燃料や持続可能な航空燃料などの技術開発に着手―

2022年4月19日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOはグリーンイノベーション基金事業の一環で、「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」(予算総額1145億円)に着手します。本事業では将来、産業や運輸、家庭などの分野において、電化・水素エネルギーへの代替が難しく、ガソリンや航空燃料、メタン、液化石油ガス(LPG)の化石燃料を継続的に利用しなければならないニーズに対応できる技術開発と、その社会実装を推進します。具体的には、合成燃料や持続可能な航空燃料、合成メタン、グリーンLPGといった二酸化炭素(CO2)などを原料とするカーボンリサイクル燃料の製造技術開発と、その社会実装に向けた取り組みを行うことで、2050年のカーボンニュートラルの実現に貢献します。

1.グリーンイノベーション基金事業について

日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標を掲げました。この目標は従来の政府方針を大幅に前倒しするものであり、実現のためにはエネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションなど現行の取り組みを大きく加速させる必要があります。このため、経済産業省はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に総額2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション基金事業を立ち上げました。

なお、NEDOは本基金事業の取り組みや関連技術の動向などをわかりやすく伝えていくことを目指し、「グリーンイノベーション基金事業 特設サイト※1」を公開しています。

2.本プロジェクトの背景

本基金事業はグリーン成長戦略※2で実行計画を策定した重点分野を支援対象としており、その一つが「カーボンリサイクル・マテリアル産業」です。2050年までにカーボンニュートラルへの移行を実現するためには、日本が排出する温室効果ガスの85%、二酸化炭素(CO2)の93%※3を占めるエネルギー部門の取り組みが重要となります。とりわけ、燃焼しても大気中のCO2を増加させず、化石燃料を代替するバイオ燃料や水素(H2)、アンモニア、合成燃料、合成メタンといったカーボンリサイクル燃料への転換がカーボンニュートラル実現の鍵として期待されています。中でも、CO2とH2を合成して製造される合成燃料や合成メタン、持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)、化石燃料によらないグリーンLPGの4種類の燃料は、カーボンリサイクル技術を活用した燃料として注目されており、産業、運輸、家庭において電化・水素エネルギーへの代替が難しい用途でも、化石燃料からの代替を可能とする選択肢として、技術開発と社会実装の推進が求められています。

このような背景のもと、NEDOは経済産業省が策定した研究開発・社会実装計画※4に基づき、このたび「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」の公募※5を行い、6テーマを採択しました。

3.事業内容

本事業ではカーボンリサイクル燃料の導入と社会実装に向けて合成燃料やSAF、合成メタン、グリーンLPGの4種類の燃料の技術開発を実施します。

名:
グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト
実施期間:
2022年度~2030年度(予定)
算:
1145億円(NEDO支援規模)
実施テーマ:

〇液体燃料(輸送用燃料)

(ⅰ)合成燃料

【研究開発項目1-[1]】液体燃料収率の向上に係る技術開発

  • CO2からの合成反応を用いた高効率な液体燃料製造技術の開発
  • CO2をH2によって還元して一酸化炭素(CO)を製造する逆シフト反応の確立と、COとH2から炭化水素を製造するFT合成※6、FT合成粗油から製品へのアップグレーディングによる一貫製造プロセスを開発します。

【研究開発項目1-[2]】燃料利用技術の向上に係る技術開発

  • 乗用車および重量車の合成燃料利用効率の向上とその背反事象の改善に関する技術開発
  • 合成燃料の特性を考慮しつつ、燃焼技術や排ガス技術の基盤的な技術開発を実施することで、燃料利用効率を改善し、合成燃料の経済性向上を目指します。

(ⅱ)持続可能な航空燃料(SAF)

【研究開発項目2】持続可能な航空燃料(SAF)製造に係る技術開発

  • 最先端のATJ(Alcohol to Jet)プロセス技術※7を用いたATJ実証設備の開発と展開
  • 原料となるエタノールの多様性・経済性を確保するため、無水・含水エタノールの両方を原料とすることができる方式を実装したプラントの設計・開発を行います。また、エタノールからエチレン、エチレンからSAFの製造プロセスの高効率化などの大規模(年産10万kL以上を想定)にSAFを製造するための技術開発・大規模実証に取り組みます。

〇気体燃料(産業用・家庭用)

(ⅲ)合成メタン

【研究開発項目3】合成メタン製造に係る革新的技術開発

  • SOEC※8メタネーション技術革新事業
  • 高温電解セルおよびガス合成反応装置で構成される一気通貫システムにより、水とCO2を原料としてメタンを合成する革新的な「SOEC(固体酸化物形電解セル)メタネーション技術」の開発と、そのパイロットスケールの試験による検証を行います。これを踏まえて、社会実装を見通すことができる高効率メタン合成技術の確立に取り組みます。
  • 低温プロセスによる革新的メタン製造技術開発
  • 水電解プロセスと低温サバティエ反応※9を融合させメタン合成する「ハイブリッドサバティエ技術」、および同一の電気化学デバイス※10で水電解とメタン合成を行う「PEMCO2還元技術」の研究開発を進め、社会実装を見通すことができる高効率メタン合成技術の確立に取り組みます。

(ⅳ)グリーンLPG

【研究開発項目4】化石燃料によらないグリーンなLPガス合成技術の開発

  • 革新的触媒・プロセスによるグリーンLPガス合成技術の開発・実証
  • バイオガスなどに含まれるCO2を改質したCOとH2から、メタノール、ジメチルエーテル(DME)、LPガスの順に化学変化させて生産する製法をグリーンLPガス合成技術として確立します。また周辺技術を統合した大規模実証プラントを用いて、想定通りの機能を発揮できるかどうかも検証します。

事業テーマの詳細と実施予定先は、以下の実施予定先一覧と事業概要資料をご覧ください。

(別紙1)
実施予定先一覧資料が開きます 実施予定先一覧
(別紙2)
事業概要資料が開きます 事業概要資料

【注釈】

※1 グリーンイノベーション基金事業 特設サイト
別ウィンドウが開きます グリーンイノベーション基金事業 特設サイト
※2 グリーン成長戦略
日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を、経済と環境の好循環につなげるための産業政策として、2021年6月18日、経済産業省が関係省庁と連携して、「経済産業省の2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略ページが開きます 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。
※3 日本が排出する温室効果ガスの85%、二酸化炭素(CO2)の93%
出典:資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第33回会合)ページが開きます 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第33回会合)(2020年11月17日)
※4 研究開発・社会実装計画
グリーンイノベーション基金の適切かつ効率的な執行に向けて、経済産業省においてグリーンイノベーション基金で実施する「経済産業省の「CO2を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」に関するページが開きます CO2を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」の内容を「研究開発・社会実装計画」として策定しました。
※5 「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」の公募
実施者募集(公募):サイト内リンク「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」に係る公募について
※6 FT合成
フィッシャー・トロプシュ反応。一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて炭化水素を合成する技術です。
※7 ATJ(Alcohol to Jet)プロセス技術
エタノールを触媒などを用いてSAFに改質するプロセス技術です。
※8 SOEC
固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell)。固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)の逆機能セルです。
※9 低温サバティエ反応
H2とCO2を高温高圧状態に置き、ニッケルを触媒としてメタンと水を生成する化学反応です。
※10  電気化学デバイス
触媒付電解質膜、ガス拡散層、集電体などを組み合わせた電気化学的に還元反応を行うための装置です。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

【研究開発項目1-[1]】および【研究開発項目3】、【研究開発項目4】

NEDO 環境部 担当:加美山、谷村、河守、布川、在間

TEL:044-520-5293 E-mail:cct.projects@ml.nedo.go.jp

【研究開発項目1-[2]】

NEDO 省エネルギー部 担当:永井、向後、石川

TEL:044-520-5180

【研究開発項目2】

NEDO 新エネルギー部 担当:森、矢野、柴原、水野

TEL:044-520-5270 E-mail:nedo.biofuel@ml.nedo.go.jp

(グリーンイノベーション基金事業全体についての問い合わせ先)

NEDO グリーンイノベーション基金事業統括室 担当:井上、堀、茂手木

E-mail:green-innovation@nedo.go.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:根本、坂本、橋本、鈴木

TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

  • 新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。

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