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家庭用・業務用エアコンへの適用が期待できる低GWP(地球温暖化係数)冷媒の自己分解反応の抑制に成功

2022年5月13日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
国立大学法人東京大学大学院新領域創成科学研究科

NEDOと東京大学大学院新領域創成科学研究科は、「省エネ化・低温室効果を達成できる次世代冷媒・冷凍空調技術及び評価手法の開発」の一環で、家庭用・業務用エアコンへの適用が期待できる低GWP(地球温暖化係数)冷媒HFO-1123について、その自己分解反応の抑制に成功しました。本成果を活用することで、混合冷媒中のHFO配合比率を高めることが可能となり、家庭用・業務用エアコンなどの空調機器で使用できる低GWP混合冷媒(GWP10未満)の開発を視野に入れることが可能となりました。今後も、HFOの安全性リスク評価手法の開発に取り組み、家庭用・業務用エアコンなどの空調機器に使用できる低GWP混合冷媒の開発に貢献します。

1.概要

エアコンなどの空調機器の冷媒として使用されているハイドロフルオロカーボン(HFC)は地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)※1が高く、モントリオール議定書キガリ改正※2では生産・消費量を大幅に削減することが求められています。特に、先進国については2036年までに基準年(2011~2013年)に対して85%削減するという高い目標が設定されました。

こうした中、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)はGWPを大幅に低減できるため、HFCを代替する次世代冷媒として注目されていますが、冷媒としての使用にあたって、自己分解反応※3を起こすことが安全性の面で課題の一つとなっていました。

これを解決するため、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と国立大学法人東京大学大学院新領域創成科学研究科 陳昱教授のグループおよび国立大学法人広島大学先進理工系科学研究科 三好明教授グループは「省エネ化・低温室効果を達成できる次世代冷媒・冷凍空調技術及び評価手法の開発※4」の一環で、HFOの安全性・リスク評価手法の開発に取り組んでおり、このたび、AGC株式会社の協力のもと、HFO-1123冷媒[「AMOLEA® 1123※5」、NEDOの助成事業※6でAGC(株)が開発]の自己分解反応の抑制に成功しました。

2.今回の成果

今回、GWPが3.0(CO2のGWPは1)と低いプロパンをHFO-1123に一定比率以上添加することで、HFO-1123の自己分解反応に対し、劇的な抑制効果があることを見出しました。本性質を利用することで、混合冷媒中のHFO混合比率を高めることが可能となります。これにより、家庭用・業務用エアコンなどの空調機器に適用可能な低GWP(GWP10未満)で安全性の高いHFO混合冷媒の開発も視野に入れることが出来るようになりました。

3.今後の予定

HFOを用いた混合冷媒の開発・実用化を進めるためには、低GWP化とともに、安全性や省エネ性における性能面の向上も必要となります。安全面では、国際規格※7の冷媒安全カテゴリーのA2L(低毒性微燃焼性)認定※8や高圧ガス保安法の特定不活性ガス認定が必要であるほか、エアコン機器としての省エネ性も期待されます。今後NEDOと東京大学大学院新領域創成科学研究科らは、2036年のHFCの生産・消費量85%削減、さらには2050年のカーボンニュートラル実現を見据え、HFOの安全性リスク評価手法などの開発に取り組み、家庭用・業務用エアコンなどの空調機器に使用できる低GWP混合冷媒の開発に貢献します。

【注釈】

※1 地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)
GWPとは二酸化炭素を基準として、そのガスの温室効果の大きさを示した数値です。
※2 モントリオール議定書キガリ改正
2016年にキガリで開催されたモントリオール議定書の第28回締約国会議において、代替冷媒HFCの生産および消費量の段階的削減義務などを定める議定書の改正(キガリ改正)が行われました。
※3 自己分解反応
外部から与えられるエネルギーによって、2個以上の分子がお互いに反応して、2種類以上の異なる種類の生成物に分解する化学反応のことで、不均化反応ともいいます。「AMOLEA® 1123」の場合は発熱反応で、冷凍サイクル内で発生すると、大きな圧力上昇を伴います。
※4 省エネ化・低温室効果を達成できる次世代冷媒・冷凍空調技術及び評価手法の開発
事業概要:「サイト内リンク 省エネ化・低温室効果を達成できる次世代冷媒・冷凍空調技術及び評価手法の開発
※5 AMOLEA® 1123
「AMOLEA®」はAGC(株)の登録商標です。化学名はトリフルオロエチレン、冷媒名はハイドロフルオロオレフィンHFO-1123です。
※6 助成事業
事業名:高効率ノンフロン型空調機器技術の開発
事業期間:2011年度~2015年度
※7 国際規格
アメリカ暖房冷房空調学会(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers)の規格ASHRAE Standard 34および国際標準化機構(International Organization for Standardization)の規格ISO 817を指します。
※8 A2L(低毒性微燃焼性)認定
空調冷凍用混合冷媒の安全カテゴリーには、毒性についてA(低毒性)、B(高毒性)の分類、燃焼性については1(不燃性)、2L(微燃性)、2(可燃性)、3(強燃性)の分類があります。A2Lとは、低毒性で微燃性であることを示します。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 環境部 担当:森(智)、大石、牛腸(ごちょう)、髙橋(辰) TEL:044-520-5248

東京大学大学院新領域創成科学研究科 陳研究室 担当:伊藤 Email:mi@edu.k.u-tokyo.ac.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:根本、坂本、橋本、鈴木

TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

  • 新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。

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