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短信レポート「ものづくり分野におけるDX―デジタル成熟度の向上において大切にすべき5つの行動指針―」を公表

2022年6月30日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOは、TSC Foresight短信レポート「ものづくり分野におけるDX―デジタル成熟度の向上において大切にすべき5つの行動指針―」を本日、公表しました。

本レポートは、ものづくりの分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために意識すべき項目を抽出するため、DXに関連する調査レポートや論文を分析し、全国の企業や公設試験研究機関にヒアリングを行い、直面する課題とその解決方法を事例とともにまとめたものです。

本レポートでは、中堅・中小企業は、導入、運用、応用、成熟と段階的にデジタル成熟度を高めてDX化を進める必要があると指摘しています。そしてその実現には「自己変革能力の向上」、「スマート生産の実現」、「デジタルエコシステムの活用」、「循環型生産の実現」、「持続可能な生産の実現」の五つの行動指針を踏まえた取り組みが重要であると分析しています。

NEDOは、本レポートの活用で中堅・中小企業のDX推進への意識が高まり、全国の研究機関との連携により、日本のものづくり産業の変革につながることを期待します。さらに今後もさまざまな技術分野の調査・分析を通じて、世界が直面している課題の解決に貢献していきます。

1.概要

製造業では、コロナ禍によって最新テクノロジーを業務に生かす能力(デジタルリテラシー)の差が顕在化しました。これを解消するとともに、ニューノーマルに向けデジタル技術を活用した経営・オペレーションを変革し、競争優位性の確立や労働生産性の向上が求められています。また、環境問題や持続可能性への意識の高まりから、カーボンニュートラルや資源循環、エネルギー問題の解決策の一つとしてデジタルトランスフォーメーション(DX)※1が注目されています。しかし、日本の製造業では、DXの取り組みは始まったばかりで、DX化に難航する企業や着手を勘案している企業、DX推進に疑義を抱く企業も多い状況です。

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、こうした社会情勢を踏まえ、ものづくりの分野でのDX推進時に意識すべき項目を抽出するため、DXに関連する調査レポートや論文を分析し、全国の企業や公設試験研究機関にヒアリングを行いました。

そして本日、その結果をとりまとめたTSC Foresight短信レポート「ものづくり分野におけるDX―デジタル成熟度の向上において大切にすべき5つの行動指針―」を公表しました。本レポートでは、DXの推進において大切にすべき五つの行動指針を抽出しました。そして、直面する指針ごとの課題とその解決方法を例示し、企業がデジタル成熟度を向上させるための具体的な取り組みをまとめています。

NEDOは本レポートを活用した中堅・中小企業が、DX推進への意識を高め、全国の研究機関との連携によりデジタル成熟度を向上することで、さらにDXが進み、企業価値の向上につながることを期待します。

NEDOは、今後もさまざまな技術分野の調査・分析を通じて、世界が直面している課題の解決に貢献していきます。

2.「ものづくり分野におけるDX―デジタル成熟度の向上において大切にすべき5つの行動指針―」のポイント

本レポートは、製造業のDXにおいて大切にすべき五つの行動指針について、特にDXの取り組みが進んでおらず、経営者の意識改革やコストメリット・人材育成への理解が課題と考えられる中堅・中小企業に注目してまとめました。

(1)自己変革能力の向上

DXを推進し、組織に定着させるためには、単にデジタル技術の導入だけでは不十分であり、組織全体で活用する能力(ケイパビリティ)が不可欠です。IoT機器導入などのデジタル化の取り組みに加えて、経営者のデジタル技術導入に対するコストメリットや人材育成に対する理解度の向上が重要です。

(2)スマート生産の実現

サイバー(仮想)、フィジカル(現実)、ヒューマンの各領域のプロセスやリソースを統合的かつ最適に活用して、製造工程全体をデジタル技術により最適化するスマート生産の実現が必要となります。そのためには、生産技術力とデジタル技術力を融合したプロジェクトをけん引するメンターの育成と、製造工程で発生する事象を仮想空間上で再現するデジタルツインの構築が課題となります。

(3)デジタルエコシステムの活用

企業が製品やサービスを提供する際、多数の事業者をデジタルでつなげた緩やかなネットワークを活用することにより、相乗効果が生まれ、新価値創造が期待されます。顧客ニーズの多様化や製品単体の大衆化による価値低下のリスクを避けるため、製品とソフトウエアの融合やサービスの提供で顧客満足度を高める「ことづくり中心」のビジネスモデルやデータ駆動型デジタル製造への展開が必要です。また、プレーヤーがシームレスにつながるデジタルエコシステムの構築と活用が重要となります。

(4)循環型生産の実現

サーキュラーエコノミー※2に即した生産を実現するには、資源投入量・消費量を抑えつつ、在庫を有効活用しながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出すことが重要です。その基本は資源・製品の価値の最大化や資源消費量の最小化、廃棄物の発生抑止などです。循環型生産への転換のためには、企業の資源生産性の測定・効果の可視化やデジタルサプライチェーンの全体最適化が可能となる循環型生産プラットフォームを構築し、新しい価値の創造とその提供を指向することが必要となります。

(5)持続可能な生産の実現

持続可能な生産には、環境への悪影響を最小限に抑え、エネルギーと天然資源を節約し、ステークホルダー(従業員、消費者、コミュニティー)の福祉と安全を重視することが必要です。また、グリーン投資の高まりにともない、DXによる製造方法の革新と持続可能な製造として、グリーンな生産※3の実現が期待されています。そのためには、製品の二酸化炭素(CO2)排出量の把握・管理の仕組みや、データの収集・分析を行うデータセンターのレジリエンス確保のための分散化が課題となっています。

これらの行動指針に沿った活動を、デジタル技術の導入・運用・応用・成熟の順で、デジタル成熟度の高まりに合わせて取り組むことにより、企業価値の向上が期待されます(図1参照)。

  • 五つの行動指針とデジタル成熟度との関係の図
    図1 五つの行動指針とデジタル成熟度との関係

また、五つの行動指針を念頭にDXを推進した未来のものづくりのあるべき姿は図2のように示すことができます。

  • 未来のものづくりのあるべき姿の図
    図2 未来のものづくりのあるべき姿

【注釈】

※1 デジタルトランスフォーメーション(DX)
DXとは単なるデジタル技術の導入ではなく、デジタル技術を活用した自社の経営・オペレーションの変革により、これまでの事業にはなかった新しい価値を顧客に提供することや、ビジネスモデル自体の変革を行うことです。
※2 サーキュラーエコノミー
従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、在庫を有効活用しながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費量の最小化、廃棄物の発生抑止などを目指すものです。
※3 グリーンな生産
地球環境への負荷低減に配慮した製造方法です。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 技術戦略研究センター 担当:伊藤(智) TEL:044-520-5150

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、橋本、鈴木、根本 TEL:044-520-5151

E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

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