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NEDOプロジェクトの成果が、冷媒の状態方程式の国際規格(ISO17584)改定に貢献
―HFO冷媒の研究開発加速や普及による、地球温暖化対策に期待―

2022年11月2日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

NEDOプロジェクトの成果の一部を活用し、九州大学、九州産業大学、佐賀大学の研究グループによって開発された地球温暖化係数(GWP)の低いハイドロフルオロオレフィン(HFO)冷媒の数学モデル(状態方程式)が、冷媒の状態方程式に関する国際規格(ISO17584)に追記されました。同規格において、HFO冷媒の状態方程式が盛り込まれるのは今回が初めてです。

この国際標準化により、HFO冷媒を成分の一つとする低GWP混合冷媒の開発や、この混合冷媒を用いた冷凍空調機器の最適設計・性能評価の研究開発が加速し、将来の機器普及が促進されることで、地球温暖化対策に大きく貢献することが期待されます。

1.概要

冷凍空調分野では、オゾン層を破壊する原因となる特定フロン※1から、オゾン層を破壊しない代替フロン(ハイドロフルオロカーボン[HFC])への転換が進められてきました。一方、HFCは地球温暖化係数(GWP)※2が二酸化炭素(CO2)の数十倍から一万倍以上と言われており、地球温暖化を促進することが問題となっています。現在、特定フロンからHFCへの転換に伴い、エアコンなどの冷媒用途におけるHFC排出量が急増しています。今後も漏えいなどによる大気へのHFC排出量は大幅に増加すると予想され、その排出量削減は喫緊の課題です。

この対策として、2016年にモントリオール議定書キガリ改正※3が行われ、日本を含む先進国はHFCの生産・消費量を段階的かつ大幅に削減することが求められました。また、日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言によって、HFC冷媒を将来的に使い続けることは困難になるとして、HFCの代わりとなる新たな低GWP冷媒の開発が求められています。

一方、市場に出回るHFCなど既存の冷媒に最適化した冷凍空調機器に、新たな低GWP冷媒を導入することは、機器の性能が低下してしまうことから困難です。新たな低GWP冷媒の実用化に向けて、それに適した機器設計や性能評価を行うには、低GWP冷媒それぞれの熱力学的性質を表現した数学モデル(状態方程式)の開発が必要不可欠であり、信頼性の高い状態方程式をつくるためには熱物性値※4を高精度に測定することが求められます。

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、かねてよりHFCに代わる低GWP冷媒の研究※5として、その機器開発や冷媒の安全性・リスク評価手法の検討、高精度な冷媒物性測定、状態方程式の開発などを行ってきました。昨今は特に、安全性と低GWPの両立が期待できるハイドロフルオロオレフィン(HFO)混合冷媒に関する研究開発に重点的に取り組んでいます。

国立大学法人九州大学、学校法人中村産業学園九州産業大学、国立大学法人佐賀大学の研究グループは、NEDOプロジェクトを通して、HFO混合冷媒の実用化を目指した熱物性の精密な測定や、それらに基づく高精度な状態方程式を開発しています。さらに、同研究グループでは、こうしたNEDOプロジェクトで培った熱物性測定技術や状態方程式作成のノウハウなど成果の一部を生かし、GWPが低い三つのHFO冷媒の状態方程式(R1336mzz(Z)、R1234yf、R1233zd(E))を開発しました。

今般、これらの状態方程式が国際標準化機構(ISO)の定める冷媒の状態方程式に関する国際規格(ISO17584)※6に追記されました。ISO17584の改定は17年ぶりで、標準としてHFO冷媒の状態方程式が盛り込まれるのは、今回が初めてです。

ISO17584に追記されることにより、国際規格を取得した他のHFO冷媒や既存冷媒との混合物の性能を適切に評価できる環境が整います。あわせて、本HFO冷媒を用いた新しいHFO混合冷媒の開発や、冷凍空調機器の最適設計・性能評価が可能となることにより、将来的にHFO冷媒対応機器の普及が促進され、地球温暖化対策に大きく貢献することが期待されます。

【注釈】

※1 特定フロン
クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)を指します。
※2 地球温暖化係数(GWP)
GWPとは二酸化炭素を基準として、そのガスの温室効果の大きさを示した数値です。
※3 モントリオール議定書キガリ改正
2016年にルワンダの首都キガリで開催されたモントリオール議定書の第28回締約国会議において、代替冷媒HFCの生産および消費量の段階的削減義務などを定める議定書の改正(キガリ改正)が行われました。
※4 熱物性値
ここでは、臨界定数、密度、飽和蒸気圧、比熱、音速などを指します。
※5 HFCに代わる低GWP冷媒の研究
※6 冷媒の状態方程式に関する国際規格(ISO17584)
蒸気圧や密度、エンタルピーといった冷媒固有の熱物性値を計算するための状態方程式を定めた規格です。

2.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 環境部 担当:森(智)、大石、牛腸(ごちょう)、高橋(辰) TEL:044-520-5248

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:根本、坂本、橋本、鈴木
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

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