NEDO事業の成果が人工光合成の国際的なコンペティションで1位を獲得
2022年12月6日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)
国立大学法人東京大学
株式会社INPEX
NEDOの「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発」事業の成果を利用し、人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)の支援の下、東京大学と(株)INPEX(以下、本チーム)は、人工光合成の国際的なコンペティション「Fuel from the Sun:Artificial Photosynthesis」に出場、12月5日に行われた表彰式で結果が発表され、本チームが1位(全22チーム中)となり、5百万ユーロを獲得しました。
右:光触媒パネル(コンペティションで使用した物と同形のパネル)
1.概要
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2014年度~2021年度に実施した「二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発※1」(以下、本事業)で人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は、東京大学特別教授/信州大学特別特任教授 堂免一成 光触媒テーマリーダーの下、太陽光エネルギーを利用して光触媒によって水からソーラー水素を製造する技術開発に取り組んできました。本事業の成果として国立大学法人東京大学らと共同で、昨年度は屋外において100m2の光触媒パネルによる水素製造実証に成功しています※2。
今般、東京大学と株式会社INPEXは、本事業で得た成果とメタン合成技術を組み合わせ、ARPChemの支援の下、欧州連合(EU)の機関である欧州イノベーション会議(EIC)※3主催の人工光合成の国際的なコンペティション「Fuel from the Sun:Artificial Photosynthesis※4」に出場しました。コンペティションは、7月4日~7日にイタリア・ロンバルディア州のイスプラにおいて行われ、22チームから予選を通過した3チームが人工光合成のプロトタイプ装置を屋外で3日間運転しました。本コンペティションでは、人工光合成技術により実用的な燃料合成を行う機能的なプロトタイプ装置を構築する技術力を競いました。東京大学は、本事業の成果を活用して水素を製造し、得られた水素と二酸化炭素(主催者供給)をメタンに変換する装置を(株)INPEXと共に構築し、メタン燃料を製造しました(図1左)。
そして、12月5日の表彰式でその結果が発表され、本チームが第1位となり、賞金として5百万ユーロを獲得しました(図2)。今回の成果は、これまでNEDO事業で培った水素製造技術と(株)INPEXが推進しているメタン合成技術を組み合わせることで実現したものです。
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図2 表彰式の様子(左から)INPEX/赤塚 リサーチエンジニア、東京大学/山田 特別教授付特任研究員(上席)、INPEX/石井 常務執行役員、再生可能エネルギー・新分野事業本部長
2.コンペティションの概要
- ・名称:
- Fuel from the Sun:Artificial Photosynthesis
- ・主催:
- 欧州イノベーション会議(EIC)
- ・目的:
- カーボンニュートラル達成に向けた革新的な燃料製造技術として期待される人工光合成技術の発展を促進すること。
- ・競技内容:
- 太陽光、水、二酸化炭素を原料とする機能的な人工光合成のプロトタイプ装置を構築し、3日間の屋外運転を行い、小型のエンジンで利用可能な燃料を合成する。製造システムの新規性・完成度、燃料の製造量・製造効率、エンジン使用にかなう品質、システムの商用化ポテンシャルなどで評価される。
- ・競技開催地:
- Joint Research Centre Ispra(イタリア・ロンバルディア州イスプラ)
- ・競技日程:
- 2022年7月4日~7日
- ・表彰式日程:
- 2022年12月5日
- ・賞金:
- 5百万ユーロ
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図3 欧州連合(EU)のエンブレム
“This action/activity/person was finalist for/winner of the 'Fuel from the Sun: Artificial Photosynthesis' from the European Union’s Horizon 2020 research and innovation programme”.
3.今後の予定
ARPChemは、本事業の成果を発展させ社会実装につなげるため、NEDOの「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発※5」に参画し、より高効率な光触媒材料の開発やシート化技術開発に取り組んでいます。これにより、2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、人工光合成技術を用いたプラスチック原料製造による温室効果ガスの排出量削減に貢献します。
【注釈】
- ※1 二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発
- 事業概要: 二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発
- ※2 水素製造実証に成功しています
- (参考)NEDOリリース(2021年8月26日) 「世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功」
- ※3 欧州イノベーション会議(EIC)
- 2021年に欧州連合(EU)の欧州委員会により正式に発足された、欧州域内のイノベーティブな中小企業やスタートアップ企業に資金供給するための組織です。ビジネス競争環境が激化する中、研究開発段階にある技術のビジネスへの転換を資金面で後押しすることが役割です。EICは、2017年から試験運用されていました。
- ※4 Fuel from the Sun:Artificial Photosynthesis
- (参考)Fuel from the Sun: Artificial Photosynthesis
- ※5 グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発
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- 事業期間:2021年度~2030年度
- 事業概要:CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 材料・ナノテクノロジー部 担当:尾畑、伊藤(智)
TEL:044-520-5220 E-mail:artificial_photosynthesis_2021[*]nedo.go.jp
ARPChem 担当:西見 TEL:03-5809-2314
東京大学 担当:堂免 TEL:03-5841-1148
(株)INPEX 広報・IRユニット 担当:三谷、森 TEL:03-5572-0233
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:橋本、坂本、黒川、鈴木、根本
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp
E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。
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