「ロボット分野における研究開発と社会実装の大局的なアクションプラン」を公表
―社会実装と次世代技術開発の両輪で、社会課題の解決を推進―
2023年4月24日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
NEDOはロボット技術戦略の策定およびプロジェクトの早期開始に向けて、社会課題の解決につながるロボット活用を推進するための方向性を大局的に整理・検討した「ロボット分野における研究開発と社会実装の大局的なアクションプラン」(以下、ロボットアクションプラン)を公表しました。
このロボットアクションプランでは学術界・産業界の有識者で構成した委員会でロボット活用が期待される8分野(ものづくり、食品製造、施設管理、小売・飲食、物流倉庫、農業、インフラ維持管理、建築)を取り上げ、あるべき姿の実現に向けて、2030年を目安に短期で求められる施策を「社会実装加速に向けたアクションプラン」、2035年に向けて中長期でのインパクト創出を見据えた施策を「次世代技術基盤構築に向けたアクションプラン」としてまとめました。NEDOは今後、各分野での課題をさらに深掘りするとともに、社会実装と次世代技術開発の両輪で、社会課題の解決に取り組んでいきます。
1.概要
労働人口の減少下での実質国内総生産(実質GDP)の維持拡大や、地球環境負荷の極小化、経済的・社会的インフラのレジリエンシー(復元力)向上は日本の喫緊の社会課題となっており、ロボットの活用を通じたより一層の生産性向上や新たな産業創出などへの期待は大きくなっています。
日本では2015年に「ロボット新戦略」を策定し、これまで30以上の官民連携による技術開発プロジェクトを実施してきました。これにより優れた基盤技術が多数生み出され、ロボット自体やそれを支える個々の技術は進化してきましたが、ロボット導入現場での実応用に向けては、こうした技術要素を組み合わせ、環境整備・運用設計と共にインテグレーション(統合)していくことが求められます。
そこで、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では「ロボット技術分野における大局的な研究開発のアクションプラン策定のための調査」において、ロボットシステム全体を捉えた出口志向での取り組みを通じて、ロボット活用の推進やロボット産業の振興を進めていくことが必要であると考え、社会実装加速と次世代技術基盤構築の両輪でアクションを推進するロボットアクションプランを取りまとめました。今回公表したロボットアクションプランは、学術界・産業界の有識者で構成した「ロボットアクションプラン策定に係る有識者委員会※1」(以下、委員会)で議論を行い策定したものです。
NEDOは今後、各分野での課題をさらに深掘りするとともに、社会実装と次世代技術開発の両輪で、社会課題の解決に取り組んでいきます。
2.ロボットアクションプランの主な内容
委員会では、ロボット活用が期待される各分野の課題の個別性を重視して、2035年に向けて市場性、社会的インパクト、ロボット活用素地(そじ)の有無、さらなる官民連携の必要性などからロボットアクションプランの対象となる分野を議論し、8つの分野(ものづくり、食品製造、施設管理、小売・飲食、物流倉庫、農業、インフラ維持管理、建築)をピックアップしました。各分野のあるべき姿を実現するために、今後求められる取り組みを、ニーズを起点に2030年を目安として短期で求められる施策を「社会実装加速に向けたアクションプラン」、2035年に向けて中長期でのインパクト創出を見据えた施策を「次世代技術基盤構築に向けたアクションプラン」として抽出しました。
ロボットはシステム技術であり、特定のニーズ・課題解決のためには、要素技術を組み合わせ、ロボットを導入しやすいロボットフレンドリー(ロボフレ)な環境整備や運用設計と共にインテグレーションしていくことが必要です。そのため、「社会実装加速に向けたアクションプラン」により分野ごとの社会実装を加速させ、ロボットの活用を広げると同時に、「次世代技術基盤構築に向けたアクションプラン」により、組み合わせの素材となる要素技術を進化させ、社会実装のための新たな技術の選択肢を提供するという、社会実装と次世代技術開発の両輪を回すことが有効であると結論づけました(下図)。
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図 社会実装加速と次世代技術基盤構築の両輪で進めるロボット分野のアクションプラン
「社会実装加速に向けたアクションプラン」では、委員会で各分野のニーズに沿って技術開発にとどまらない取り組みを議論し、技術開発と環境整備の両面から社会実装加速のために求められる施策を抽出しました。ロボットの活用が期待される8つの分野のニーズに基づき、技術開発として「マニピュレーション」、「モビリティ」、「インタラクション」、「デジタル基盤・知能化」、「インテグレーション」の5領域、環境整備として「物理環境の整備」、「業務設計・運用設計」、「SIer(ロボットシステムインテグレータ)・人材・ベンダー育成」、「新サービス創出・ビジネスモデル形成」、「啓発・規制対応」の5領域に整理しています。技術開発や標準化など協調領域の環境整備を含めたアジャイル(機動的)な官民連携が、分野ごとの課題解決に向けて重要となります。なお、ここで取り上げた取り組みは該当する8つの分野のみに限定されるものではなく、それ以外の分野でのロボットの普及拡大にもつながるものと考えています。
「次世代技術基盤構築に向けたアクションプラン」では各分野へのインパクトを重視し、技術開発動向から2035年に向けて重要となる同じく5領域(マニピュレーション、モビリティ、インタラクション、デジタル基盤・知能化、インテグレーション)での技術開発の方向性を整理しました。
NEDOは、今後、ロボットアクションプランとして抽出された取り組むべき技術開発と環境整備のアクションをもとに、将来の国家プロジェクト化や社会実装に向けた検討を進めていきます。
詳細は以下の資料をご参照ください。
【注釈】
- ※1 ロボットアクションプラン策定に係る有識者委員会
- 委員長 川村 貞夫 立命館大学 立命館グローバル・イノベーション研究機構 機構長代理 特別招聘研究教授
- (以下五十音順、敬称略)
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- 牛久 祥孝 オムロン サイニックエックス株式会社 リサーチアドミニストレイティブディビジョン
プリンシパルインベスティゲーター - 小平 紀生 FA・ロボットシステムインテグレータ協会 参与
- 五内川 拡史 株式会社ユニファイ・リサーチ 代表取締役社長
- 真田 知典 ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会 ロボット利活用推進ワーキンググループ 幹事
川崎重工業株式会社 精密機械・ロボットカンパニー ロボットディビジョン 理事 - 鍋嶌 厚太 株式会社Octa Robotics 代表取締役
- 持丸 正明 国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 研究センター長
- 牛久 祥孝 オムロン サイニックエックス株式会社 リサーチアドミニストレイティブディビジョン
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO ロボット・AI部 担当:土井、安川、千田
TEL:044-520-5241 E-mail:robot_rap[*]ml.nedo.go.jp
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、黒川、橋本、鈴木、根本
TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp
E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。
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