本文へジャンプ

CO2排出量を70%削減した「CUCO-SUICOMドーム」の試験施工を完了
―大阪・関西万博に向けて環境配慮型コンクリートドームを構築―

2024年3月13日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
鹿島建設株式会社

NEDOのグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクト(以下、本事業)の一環として、鹿島建設株式会社(鹿島)は、デンカ株式会社、株式会社竹中工務店とともに、本事業を実施するコンソーシアムであるCUCO®(クーコ)の幹事会社として、コンクリートの製造過程で排出される二酸化炭素(CO2)の排出量が実質ゼロ以下となるカーボンネガティブコンクリートの開発を進めています。

今般、鹿島は、技術研究所(東京都調布市)の隣接敷地において、鹿島保有の「KTドーム®」技術を活用し、躯体部分に低炭素型コンクリート「ECMコンクリート®」とカーボンネガティブコンクリート「CUCO®-SUICOMショット」を活用した「CUCO®-SUICOMドーム」の試験施工を完了しました。試験施工では、これら両コンクリート材料の吹き付け、ならびに「CUCO-SUICOMショット」の炭酸化養生を現場で行いました。KTドームの技術に両材料を用い、これらの工法で構築した環境配慮型コンクリートドームは世界で初めてです。これにより、従来の吹付けコンクリートと比較して、CO2排出量を70%削減することに成功しました。

この実績を踏まえ、2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)の会場に、本試験施工のものと同規模のCUCO-SUICOMドームを本事業の一環として建設する予定です。

今後、NEDOとCUCOは、カーボンネガティブコンクリートや低炭素型コンクリートを活用した環境配慮型コンクリート構造物の建設技術の確立ならびに社会実装を実現することで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

CUCO-SUICOMドームの外観の画像

図1 CUCO-SUICOMドームの外観

1.背景

NEDOは2021年度からグリーンイノベーション基金※1の本事業※2で、カーボンネガティブコンクリート※3などの製造技術の開発を進めており、その一環として、鹿島はCUCO※4のコンソーシアム幹事会社として「CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの開発」に取り組んでいます。鹿島が開発した「KTドーム」の施工※5は、ドーム内で行われるため、天候の影響を受けにくく、安定した工期でスピーディーな施工が可能です。その一方で、躯体に用いる吹付けコンクリートには、製造時に多くのCO2を排出するセメントを用いることから、より環境に配慮したコンクリートとその施工方法を確立する必要がありました。

そこで鹿島は、KTドームの躯体に低炭素型コンクリート「ECMコンクリート※6」とカーボンネガティブコンクリート「CUCO-SUICOMショット」の技術を複合した環境配慮型コンクリート※7の新たな吹付け工法を確立し、大阪・関西万博会場での建設を目指すこととしました。

大阪・関西万博は、「人類共通の課題解決に向け、先端技術など世界の英知を集め、新たなアイデアを創造・発信する場」をコンセプトのひとつに掲げています。CUCO-SUICOMドームは、人類共通の課題であるCO2排出量の削減に向けた新しい建設技術の実現に資するものと考えます。

2.今回の成果

(1)技術と成果の概要

鹿島は、技術研究所の隣接敷地において、KTドーム技術を活用し、躯体部分に低炭素型コンクリートのECMコンクリートとカーボンネガティブコンクリートのCUCO-SUICOMショットを活用し、CUCO-SUICOMドームの試験施工を行いました。試験施工は、膨らませた膜の内側に断熱材などを施工した後に配筋を行い、ECMコンクリートを吹き付け、その内側にCUCO-SUICOMショットを吹き付けて躯体を構築します。CUCO-SUICOMショットはCO2を吸収・固定して固まるため、吹き付け後にドームを密閉して内部にCO2を充満させた状態で一定期間養生を行います。両コンクリートの吹き付けは、鹿島の知見とノウハウにより材料と調合を工夫したことで実現しました。また、CUCO-SUICOMショットの炭酸化養生※8にあたっては、ドーム内部に本体より若干小型のドーム(内膜)を膨らませて、本体と内膜との隙間のみにCO2を充填することで、CO2を効率よく吸収させるとともに、充填に必要なエネルギーを減らすことができる新手法を採用しました。コンクリートの採用範囲については、全体工期との兼ね合いで炭酸化養生期間を計算した結果、CUCO-SUICOMショットを33mmとし、ECMコンクリートを167mm(開口補強部267mm)としました。

今回、躯体にECMコンクリートとCUCO-SUICOMショットを用いたことで、従来の吹付けコンクリートと比較し、材料由来のCO2の排出量を70%削減できました。

なお、両コンクリートの吹き付けによるドームの建設と、CUCO-SUICOMショットの建物躯体部分への適用は世界初となります。

  • CUCO-SUICOMドーム断面図(左)と炭酸化養生の仕組み(右)の画像

    図2 CUCO-SUICOMドーム断面図(左)と炭酸化養生の仕組み(右)
  • 図3 コンクリート由来のCO2排出量削減効果の画像

    図3 コンクリート由来のCO2排出量削減効果

(2)施工手順

施工手順を図4~図6に示します。国内工場で製作したドーム型のポリ塩化ビニル(PVC)膜に送風機で風を送り膨張させます(図4)。膨張したドーム内部に断熱材などを施工した後に鉄筋を配筋し、その後ECMコンクリート、CUCO-SUICOMショットの順で吹き付け、鉄筋コンクリート造ドーム躯体を構築します(図5)。ドーム内部に炭酸化養生用の設備とダクトを設置します。その後、ドーム内で内膜を膨張させ、ドーム本体と内膜との隙間にCO2を充填(じゅうてん)してCUCO-SUICOMショットの炭酸化養生を実施します(図6)。

  • PVCテント張りの様相の画像

    図4 PVCテント張りの様相
  • PVCテント内への配筋およびコンクリート吹き付けの様相の画像

    図5 PVCテント内への配筋およびコンクリート吹き付けの様相
  • 炭酸化養生用装置と内膜の設置状況の画像

    図6 炭酸化養生用装置と内膜の設置状況

3.今後の予定

地球環境の課題解決につながる技術を世界中の方々に知っていただくことを目的として、2025年に開催される大阪・関西万博会場に、本事業の成果となる環境配慮型コンクリートドームの施工手法を用いた本試験施工と同規模のCUCO-SUICOMドームを建設、出展する予定です。

NEDOとCUCOは、「2050年カーボンニュートラル」社会の実現に貢献すべく、引き続きCO2削減・固定・吸収技術の開発・改良に取り組み、カーボンネガティブを実現することで、脱炭素社会の実現に貢献します。

  • 大阪・関西万博会場におけるCUCO-SUICOMドーム外観の画像

    図7 大阪・関西万博会場におけるCUCO-SUICOMドーム外観(イメージ)

【注釈】

※1 グリーンイノベーション基金
日本の掲げる「2050年カーボンニュートラル」に向けて、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などに対して研究開発・実証から社会実装まで最長10年間継続して支援する事業です。本基金事業はグリーン成長戦略で実行計画を策定している重点分野や、GX実現に向けた基本方針に基づき今後の道行きが示されている主要分野を支援対象としています。
※2 本事業
  • 名:グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発/CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの開発
  • 事業期間:2021年度~2030年度
  • 事業概要:別ウィンドウで開きますCO2を用いたコンクリート等製造技術開発
※3 カーボンネガティブコンクリート
製造時のCO2排出量よりもCO2削減・固定・吸収量の方が多いコンクリートです。
※4 CUCO
鹿島、デンカ、竹中工務店の登録商標です。別ウィンドウで開きますCUCO
※5 「KTドーム」の施工
別ウィンドウで開きますドーム型構造により柱や梁のない大空間を実現できる「KTドーム」工法を実工事に適用(2021年12月23日プレスリリース)
※6 ECMコンクリート
NEDOプロジェクトにおいて1大学7社がエネルギー消費とCO2排出を従来のセメントよりも6割以上削減できるECMセメントを共同開発(2014年8月5日プレスリリース)。そのECMセメントを使用した低炭素型コンクリートです。
別ウィンドウで開きますエネルギー消費とCO2排出を6割以上削減できるECMセメントを開発
※7 環境配慮型コンクリート
強度など必要な物性を維持しながら、二酸化炭素の排出量を抑えたコンクリート。副産物でセメントを置換したコンクリートや、二酸化炭素を固定したコンクリートなどの総称です。
※8 炭酸化養生
高濃度のCO2環境でコンクリートを養生し、CO2を安定な形で吸収・固定する方法です。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 環境部 担当:冨田、世良田 TEL:044-520-5253
別ウィンドウで開きますお問い合わせフォーム

鹿島 広報室 報道グループ TEL:03-6438-2557

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 報道グループ TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

  • 新聞、TVなどで弊機構の名称をご紹介いただく際は、“NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)”または“NEDO”のご使用をお願いいたします。

関連ページ