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世界初、コンソーシアムによる舶用水素エンジンの陸上運転に成功しました
―3社技術の結集により、船の脱炭素化で世界をリード―

2025年10月20日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
川崎重工業株式会社
ヤンマーパワーソリューション株式会社
株式会社ジャパンエンジンコーポレーション

NEDOの「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発」の委託事業で、川崎重工業株式会社(川崎重工)、ヤンマーパワーソリューション株式会社、株式会社ジャパンエンジンコーポレーション(ジャパンエンジン)の3社は、「舶用水素エンジンおよびMHFSの開発」(以下、本事業)を推進しています。

このたび、本事業による世界初の取り組みとして、実証用の液化水素燃料供給設備(以下、本設備)をジャパンエンジン本社工場内へ新たに設置し、舶用水素エンジンの陸上運転に成功しました。

テープカット式の写真
図1 関係者によるテープカット式

1.グリーンイノベーション基金事業について

日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出量を全体としてゼロにする目標を掲げました。この目標は従来の政府方針を大幅に前倒しするものであり、実現するにはエネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションなど、現行の取り組みを大きく加速させる必要があります。このため、経済産業省はNEDOに総額2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション基金事業(以下、本基金事業)を立ち上げました。

本基金事業はグリーン成長戦略※1で実行計画を策定している重点分野を支援対象としています。また、令和4年度第2次補正予算により3000億円が積み増しされており、令和5年度当初予算により4564億円が積み増しされました。

なお、NEDOは本基金事業の取り組みや関連技術の動向などをわかりやすく伝えていくために、「グリーンイノベーション基金事業 特設サイト※2」を公開しています。

2.今回の成果

「舶用水素エンジンおよびMHFS※3の開発※4」において川崎重工が製造した3社共用の本設備は、液化水素を貯蔵してガス化し、各社のエンジンへ、高圧または低圧で水素燃料を供給します。これにより、2ストローク主機関および4ストローク補機関、もしくは電気推進船向けの4ストローク主発電機関といった、実船でのさまざまな用途を想定するとともに異なるポートフォリオを満足したエンジンの運転を可能としています。

そして、川崎重工とヤンマーパワーソリューションは、下表の中速4ストロークエンジンにおいて、ゼロエミッション化を目指した水素燃焼※5を実現させ、所定の出力で運転できることを確認しました。今後は、性能確立を目指し、開発を継続していきます。また、ジャパンエンジンが開発している低速2ストロークエンジンは2026年春頃の運転開始に向け、現在順調に開発を進めています。なお、3社のエンジンに共通した特徴は、GHGの大幅な削減が見込まれるとともに、水素とディーゼル燃料を切り替える二元燃料仕様により冗長性を確保していることです。

表 舶用水素二元燃料エンジンの主要目

川崎重工製 ヤンマーパワーソリューション製 ジャパンエンジン製
種類 中速4ストロークエンジン 中速4ストロークエンジン 低速2ストロークエンジン
型式 8L30KG-HDF 6EY22ALDF-H 6UEC35LSGH
機関回転速度 720min-1 900min-1 最大167min-1
定格出力 2600kWm 800kWm 最大5610kW
液化水素燃料供給設備外観の写真

図2 液化水素燃料供給設備外観

川崎重工製エンジン外観の写真

図3 川崎重工製エンジン外観

ヤンマーパワーソリューション製エンジン外観の写真

図4 ヤンマーパワーソリューション製エンジン外観

図5 ジャパンエンジン製エンジンの完成予想図

図5 ジャパンエンジン製エンジンの完成予想図

3.今後の予定

本事業は、陸上での実証試験を経て、今後、船社・造船所と協力し、それぞれの実船実証運航を行い、社会実装につなげていきます。川崎重工、ヤンマーパワーソリューション、ジャパンエンジンの3社は、国産メーカーとして技術を結集することで、将来的な水素燃料船の普及拡大をリードし、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて貢献していきます。

【注釈】

※1 グリーン成長戦略
日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を、経済と環境の好循環につなげるための産業政策として、2021年6月18日、経済産業省が関係省庁と連携して、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。
※2 グリーンイノベーション基金事業 特設サイト
グリーンイノベーション基金事業 特設サイト
※3 MHFS
Marine Hydrogen Fuel System(舶用水素燃料タンクおよび燃料供給システム)のことです。
※4 舶用水素エンジンおよびMHFSの開発
参考資料:グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発(2,106KB)
※5 水素燃焼
着火に用いる少量のディーゼル油以外は、全ての燃料を水素とした(エンジンにおける)燃焼です。

【参考リンク】

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 水素・アンモニア部 担当:牧野

TEL:044-520-5261 E-mail:gi-ship-kobo[*]nedo.go.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 経営企画部 広報企画・報道課 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press[*]ml.nedo.go.jp

※E-mailは上記アドレスの[*]を@に変えて使用してください。

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