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「航空・宇宙」知っておきたい基礎知識

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2026年5月13日

革新的な技術開発が期待される「航空・宇宙」。概況や課題など、社会実装に向けた道筋をわかりやすく解説しています。

  1. 1.なぜ今、ソラ(空・宇宙)なのか
  2. 2.航空機産業のイノベーションに向けて
  3. 3.空の未来を切り拓く次世代空モビリティ
  4. 4.未知なるフロンティア、宇宙へ
  5. 5.宇宙分野でNEDOが果たす役割

1.なぜ今、ソラ(空・宇宙)なのか

航空・宇宙産業は今、技術革新や新たな市場の広がりを背景に、世界的に成長が加速し、かつてない注目を集めています。

航空分野では、民間航空機市場で今後年率3%を超える旅客需要の増加が見込まれています。航空機の開発では、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが世界的に加速しており、機体を軽量化し効率的なエンジンを実現するための素材開発や成型・組み立て技術、電気や水で飛ばす航空機といった革新的技術の研究開発が進められています。また、持続可能な航空燃料(SAF)の実用化も着実に前進しています。

一方で、新たな輸送手段として注目を集めているのが、産業分野での利用が拡大する「ドローン」や、実用化への期待が高まる「空飛ぶクルマ」といった次世代空モビリティです。国内のドローン市場は2028年には約9,054億円規模に、空飛ぶクルマ市場は2030年に約7,000億円で2040年には約2.5兆円規模へと成長すると、それぞれ予測されています※1※2

宇宙分野も堅実な発展を続けています。2022年時点で約54兆円だった世界市場規模は、2040年には140兆円へ拡大すると見込まれています。日本においてはこれまで国や大手重工メーカーが宇宙機器産業を主導してきましたが、昨今ではスタートアップを含む中小企業の参入も進み、その裾野は確実に拡大しています。日本政府は「宇宙基本計画」(2023年6月改定)において、2020年に約4兆円だった国内市場規模を2030年代早期には8兆円規模へと倍増させる目標を掲げています。その実現に向けて、人工衛星やロケットなどの宇宙機器産業の国際競争力の強化や、こうした機器を活用した衛星通信・データ提供などの宇宙ソリューション産業の振興といった多面的な取り組みが進められています。

著しい成長が期待される航空・宇宙産業。実は日本が持つ「強み」を最大限に発揮できる分野でもあります。素材開発や熱流体解析などの基礎技術から、自動車や家電産業で培われた精緻な“すり合わせ”による製造ノウハウなど、日本の先端技術とものづくりの蓄積が大きな武器となります。こうした強みを生かすことで、日本企業が国際市場において確固たる競争力を発揮することが期待されています。

  • ※1:「ドローンビジネス調査報告書2024」(インプレス総合研究所)
  • ※2:「“空飛ぶクルマ”の産業形成に向けて」(PwCコンサルティング合同会社)

2.航空機産業のイノベーションに向けて

CO2削減は、世界の航空機産業においても重要な課題の1つです。国際的には、航空業界団体IATA(International Air Transport Association:国際航空運送協会)が2021年に、2050年までのCO2排出量目標を「実質ゼロ」へと引き上げ、国連の専門機関ICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関)も、2022年に「2050年までにカーボンニュートラルの実現」を長期目標として採択するなど、脱炭素化の取り組みが加速しています。

こうした世界的な潮流を受けて、日本の航空産業界でも、次世代の航空機を見据えた、CO2削減に貢献する革新的技術の研究開発が進められています。NEDOにおいても、従来の化石燃料に依らない水素航空機の開発に必要となる様々な要素開発に取り組むほか、航空機電動化に向けた燃料電池電動推進システム、機体の軽量化に向けた航空機の部材開発など、脱炭素社会の実現に向けた技術基盤の強化を進めています。

このように世界各国で水素やアンモニア燃料、大型電動推進での航空機の研究開発が進む中で、日本の先端技術が大きな役割を果たそうとしています。とりわけ、電動化の実現において不可欠な超電導システムでは、世界初となる全超電導交流モータの試験を実施するなど、日本は国際的なリードを確立しています。

こうした技術的進展を背景に、これまで海外の航空機システムメーカーへのサプライヤーにとどまっていた国内メーカーが、燃料転換や電動化により、航空機システム市場における主要プレーヤーとして台頭する可能性が高まっています。

3.空の未来を切り拓く次世代空モビリティ

航空分野の新領域として注目を集めているのが、ドローンや空飛ぶクルマといった「次世代空モビリティ」です。

ドローンは無人航空機の一種で、航空法ではバッテリーを含む機体重量が100g以上のものを対象とし、遠隔操作や自律飛行によって運用されます。既にインフラ点検や災害時の調査などで活用が広がり、省力化や作業時間の短縮といった新たな価値を提供しています。

一方、空飛ぶクルマは、電動化・自動化技術や垂直離着陸(VTOL)といった新たな航空技術を組み合わせた次世代の移動手段で、国際的には「Advanced Air Mobility(AAM)」や「Urban Air Mobility(UAM)」などの呼称があります。「クルマ」と表記されますが、必ずしも道路走行機能を有するわけでなく、日常的に気軽に利用する移動手段としてのイメージの浸透を図るもので、人が乗るという点でドローンとは区別されます。

このような次世代空モビリティは、都市内移動や観光利用、物流、救急搬送など、幅広い分野で新たな移動サービスを生み出す可能性を秘めています。国内でも2022年12月には「レベル4飛行(一定条件下での有人地帯での目視外飛行)」が解禁されるなど制度整備が進み、社会実装に向けた環境が整いつつあります。

例えば、人手不足が深刻化する運輸業界で解決の切り札の1つとして期待されています。空飛ぶクルマも、物資輸送のほか、空港間の二次交通、タクシーのような都市内移動、観光地への輸送、遊覧飛行、医師や患者を運ぶ緊急医療用途など幅広い利用方法が想定されています。地上輸送手段と比べて新しいインフラ整備の負担が少なく普及させやすいというメリットもあります。道路網が整備されていない場所でも、既存の空港やビル屋上のヘリポートなどを活用でき、山間部でも迂回路を通らず最短距離で移動できるため、移動の効率化や移動時間の短縮も期待されます。

その一方で、機体認証、安全性の確保、安全運行のためのルール形成、運用コストの低減など、社会に広く普及させるためには、乗り越えるべき多くの課題が残されています。

ドローンではレベル4飛行を認められた(機体認証を取得した)機体は、2024年11月時点で1機種のみで、社会への普及をさらに進めるためには、より多くの機体が認証を取得できる仕組み作りや、そうした機体の安全な飛行を支えるルール整備が不可欠です。空飛ぶクルマも同様に実用性・安全性が大きな課題となっています。さらに環境への配慮から、電動推進系の能力向上や水素エンジンの開発も視野に入れる必要があります。特に空飛ぶクルマは、当面は操縦者が同乗することが想定され、将来的には無人で自動自律的に飛行する複数の機体の運行を、地上から一括で管理するオペレーションの構築が重要となります。

こうした課題に向き合うべく、経済産業省とNEDOは国土交通省と連携し、2022年度から「ReAMoプロジェクト(次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト:Realization of Advanced Air Mobility Project)」を開始しています。これは、従来の航空機に加えて、ドローンや空飛ぶクルマが同じ空域を安全に飛行できる未来を見据え、性能評価手法の確立や運航管理技術の開発など、次世代モビリティの社会実装に必要な技術基盤の整備を進める取り組みです。

4.未知なるフロンティア、宇宙へ

宇宙産業と一口に言っても、その領域は月や火星などの探査、人工衛星による通信・観測、ロケットでの宇宙輸送など多岐にわたり、日々新しい技術とビジネスが生まれています。近年特に注目を集めているのが、小型人工衛星を複数打ち上げ、それらを星座(コンステレーション)のように連携させて運用する「衛星コンステレーション」です。Starlinkなどに代表されるこの方式は、多数の衛星をネットワーク化することで、広域の通信サービスや高頻度の地球観測を実現し、私たちの生活にも身近な存在となりつつあります。

従来は大型衛星が中心だった宇宙利用も、衛星の小型化・量産化によって、通信、リモートセンシング、防災、インフラ管理、農林水産など多様な分野で利便性が向上し、新たなサービスが拡大しています。こうした潮流は、宇宙を国家主導の研究領域から、民間企業が参入できる産業領域へと変化させています。

宇宙事業の自立性強化のため、日本でも宇宙機器産業の市場拡大発展を目指して衛星開発・利用基盤の強化や産業エコシステムの整備が進められています。とりわけ、宇宙空間を活用した通信・観測サービス、データ利活用に向けた技術開発など、宇宙ソリューション分野が新たな成長領域として期待されています。

5.宇宙分野でNEDOが果たす役割

宇宙産業は、日本の先端技術と製造業の強みを最大限に生かせる成長分野です。幅広い事業領域を見据えながら、日本の産業競争力を高めるシーズの発掘と支援が求められています。

“宇宙利用の高度化”に向け、NEDOでは、民生技術を活用した超小型衛星バス(汎用バス※3)の開発支援や、衛星データを活用した課題解決アイデアの創出支援など、宇宙利用を広げるための技術基盤づくりに取り組んでいます。その一環として、技術課題や社会課題の解決に資する多様なシーズ・解決策をコンテスト形式で発掘する「“NEDO Challenge” NEDO懸賞金活用型プログラム」も展開しています。

NEDOでは、宇宙分野の研究開発と実証を通じて、宇宙技術の社会実装や関連産業の裾野拡大を後押ししています。今後もなお一層、航空・宇宙分野の研究開発の推進と、事業化・社会実装のための環境整備に取り組んでいきます。

  • ※3:人工衛星の基本的な機能を担う標準化された基盤システム(プラットフォーム)。