太陽光発電の発電コスト低減を目指した2事業で新たにテーマを採択
―発電コスト7円/kWh実現へ開発を加速、ZEB実現へシステム開発・検証開始―
2018年5月28日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 石塚博昭
NEDOは、太陽光発電の発電コスト低減を目指した「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」で4件、「太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト」で1件の技術開発テーマを新たに採択しました。
「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」のうち、実用化で先行する結晶シリコン太陽電池とCIS太陽電池では、2020年までに発電コスト14円/kWhの実現を確実なものとするとともに、2030年までの本事業の開発計画を5年前倒しし、2025年までに発電コスト7円/kWhを実現する要素技術の確立を目指すことで、開発を加速します。また、「太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト」では、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)実現のために必要な技術的課題の抽出および太陽光発電システムの開発シナリオを作成します。
1.事業概要と採択テーマ・採択予定先
【1】高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発(事業期間:2015~2019年度)
国内外の太陽電池市場における競争力を保つため、実用化で先行する結晶シリコン太陽電池とCIS太陽電池においては、2030年までに発電コスト7円/kWhという本事業の開発計画※1を5年前倒しすることとしました。今回、採択したテーマでは、ヘテロ接合技術※2とバックコンタクト技術※3といった先端技術を複合したシリコン太陽電池において、高効率化と高信頼性の両立や低コスト技術を開発することで、2020年までに発電コスト14円/kWhを実現し、2025年までに発電コスト7円/kWhを達成する要素技術の確立を目指します。
- 研究開発項目:
- (1)先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発
(2)太陽電池セル、モジュールの共通基盤技術開発
(3)高効率太陽電池製造技術実証 - 事業期間:
- 2018~2019年度
採択テーマ一覧:
採択テーマ名 | 採択予定先 |
---|---|
低コスト・高信頼性・高効率Super Si Hetero-junction(SSHJ)太陽電池の開発 | パナソニック株式会社 |
Cat-CVDおよびドーピングによるSiヘテロ接合太陽電池の高性能化 |
国立大学法人北陸先端 科学技術大学院大学 |
高性能キャリア選択性パッシベーティングコンタクトの開発 |
国立研究開発法人産業 技術総合研究所 |
低コストヘテロジャンクションバックコンタクト太陽電池の小規模量産実証 |
株式会社カネカ |
採択テーマ例:
- <テーマ名>
- 低コスト・高信頼性・高効率Super Si Hetero-junction(SSHJ)太陽電池の開発
- <採択予定先>
- パナソニック株式会社
- <実施内容>
- シリコンヘテロ接合太陽電池の低コスト化・長寿命化・高効率化技術の高度化を図るために、北陸先端科学技術大学院大学と産業技術総合研究所と連携して研究開発を行います。
-
図1 開発する太陽電池セルのイメージ図
【2】太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト(事業期間:2014~2018年度)
「エネルギー基本計画」において、「2020年までに新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEB※4を実現することを目指す」という政策目標が設定されています。ZEB実現のためには、省エネルギーに加え、建築物内のエネルギー需要を太陽光発電で賄う必要がありますが、一般的に建築物の屋上に設置するだけでは足りないため、屋上以外の壁面などにおいても太陽光発電システムを大量に導入することが必要不可欠です。
そこで本研究開発では、太陽光発電システムを建築物に大量設置する環境を模擬し、ZEB化に必要な技術的課題(設置方法、保守方法、交換可能な壁面設置太陽光発電システムなど)の抽出を行い、その課題解決に向けた太陽光発電システムの開発・検証を行います。また、全ての建築物のZEB化実現に向けた太陽光発電システムの開発シナリオの作成を行い、成果の公表を行います。
- 研究開発項目:
- ZEB実現に向けた太陽光発電システム技術開発
- 事業期間:
- 2018年度
採択案件:
- <テーマ名>
- 壁面設置太陽光発電システム適用高出力化技術・建築機能評価技術の開発
- <採択予定先>
- 株式会社カネカ
- <実施内容>
- 建設会社と連携し、壁面斜入射時の太陽光を太陽電池モジュール内に効果的に収集するための角度特性改善による発電量向上と、耐荷重や耐風圧などの建築機能評価を行います。また、ZEB実現に向けた太陽光発電システムの開発シナリオの作成を行います。
-
図2 壁面設置太陽光発電システムを模擬した建築機能評価イメージ
【注釈】
- ※1 開発計画
- 開発計画は、「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」では、発電コスト目標を2020年に14円/kWh、2030年に7円/kWhと掲げています。「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」の開発計画も「太陽光発電開発戦略」と同様の目標を掲げていますが、実用化で先行する結晶シリコン太陽電池とCIS太陽電池においては、目標の早期達成を目指すために、2030年の発電コスト目標を5年前倒しし、2025年に発電コスト7円/kWhを目標として掲げました。
- ※2 ヘテロ接合技術
- 物性の異なる半導体材料を接合する技術です。結晶シリコンとアモルファスシリコンを組み合わせることで、変換効率低減の要因となる欠陥を減らすことができ、波長の異なる光を取り込むことができるため、変換効率を向上させることができます。
- ※3 バックコンタクト技術
- 太陽電池の裏側にのみ電極を作り、電気を取り出す技術です。電極を裏面に集約することで受光面を広くできるため、変換効率を向上させることができますが、構造が複雑になり高度な加工技術が必要になります。
- ※4 ZEB
- Net Zero Energy Buildingの略です。建築物における1次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用などにより削減し、年間の1次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロまたはおおむねゼロとなる建築物のことです。
2.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新エネルギー部 担当:佐藤、楠原、三宅 TEL:044-520-5277
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、髙津佐、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp