超臨界地熱発電の調査井掘削に向けた事前調査に着手
―複数地域での資源量評価や調査井の仕様検討などを実施―
2018年9月13日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 石塚博昭
NEDOは、温室効果ガス排出量の大幅な削減が期待できる超臨界地熱発電技術について、調査井掘削に向けた事前調査に着手します。
本事業では、超臨界地熱資源の存在の可能性が高いと想定される国内複数地域で詳細な調査を実施し、資源量評価や調査井の仕様検討に取り組むほか、酸性環境・高温度(500℃程度)に耐える資材、発電システムおよび超臨界地熱環境下における人工貯留層の造成手法の調査・開発を行うとともに経済性についても検討します。
(NEDO「平成29年度成果報告書 地熱発電技術研究開発/地熱発電の導入拡大に資する革新的技術開発/天然・人工地熱システムを利用した超臨界地熱発電の発電量、経済性および安全性に関する詳細検討」成果報告書の図を用いて作成)
1.概要
最近の研究成果から、一定の条件を満たす火山地帯の3~5kmの深部には、約500℃と高温・高圧の超臨界水※1が存在すると推定され、それを活用して発電する超臨界地熱発電は、従来の地熱発電よりも発電所あたりの大出力化が期待される発電方式です。
超臨界地熱発電技術は、日本政府が2016年4月に策定した「エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI2050)」の中で温室効果ガス排出量を大幅に削減するポテンシャルのある革新技術の一つに位置づけられています。NESTI2050が示すロードマップでは、実現可能性調査、調査井掘削のための詳細事前検討、調査井掘削、掘削結果の検証と実証実験への事前検討、そして実証試験の5つのステップが組まれており、2050年頃の超臨界地熱発電技術の普及を目指しています。
NEDOは、このロードマップを踏まえ、超臨界地熱発電に関する実現可能性調査を2017年度に実施しました。その結果、妥当と考えられる前提条件を与えた数値シミュレーションにより、1坑井※2あたり数万キロワット(kW)の発電が可能であること、および経済性評価については従来の地熱発電と同程度の発電コストに収まることが示されました。一方で、地下設備の資材開発(コストダウン検討を含む)や地上設備のシリカ対策や腐食対策などについて継続調査を行った上で、経済性を再評価する必要があるとの結果を得ました。
今回、超臨界地熱発電に関する調査井掘削に向けた詳細事前調査として、日本で超臨界地熱資源の存在の可能性が高いと想定される複数地域において詳細な調査を実施し、資源量評価や調査井の仕様の検討などに着手します。また、昨年度に引き続き、酸性環境・高温度(500℃程度)に耐える資材(ケーシング材やセメント材※3)・発電システムおよび超臨界地熱環境下における人工貯留層の造成手法について調査・開発を行うとともに経済性についても検討します。
当該検討結果については、来年度末に実施するステージゲート審査において、試掘前調査へ移行可能であるかどうかを確認する予定です。
2.採択テーマと委託予定先
【採択テーマと委託予定先】
(1)研究開発項目:超臨界地熱資源の評価と調査井仕様の詳細設計
採択テーマ名 | 委託予定先 |
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東日本・九州地域における超臨界地熱資源有望地域の調査と抽熱可能量の推定 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 国立大学法人北海道大学 国立大学法人東北大学 国立大学法人東京工業大学 国立大学法人九州大学 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 地熱エンジニアリング株式会社 地熱技術開発株式会社 西日本技術開発株式会社 |
(2)研究開発項目:調査井の資材(ケーシング材及びセメント材)等の開発
採択テーマ名 | 委託予定先 |
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超臨界地熱発電に必要な坑井及び地上設備仕様の調査・検討 | 国立大学法人秋田大学 エヌケーケーシームレス鋼管株式会社 地熱エンジニアリング株式会社 富士電機株式会社 |
(3)研究開発項目:超臨界地熱貯留層のモデリング技術手法開発
採択テーマ名 | 委託予定先 |
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水圧・減圧破砕による人工超臨界地熱貯留層造成に関する研究 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 国立大学法人東北大学 石油資源開発株式会社 帝石削井工業株式会社 株式会社リナジス |
(4)研究開発項目:超臨界地熱資源への調査井掘削に資する革新的技術開発
採択テーマ名 | 委託予定先 |
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AIによる超臨界地熱資源評価・掘削技術 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 国立大学法人北海道大学 国立大学法人室蘭工業大学 国立大学法人秋田大学 国立大学法人東北大学 国立大学法人九州大学 地熱エンジニアリング株式会社 地熱技術開発株式会社 帝石削井工業株式会社 株式会社物理計測コンサルタント |
二重解放コアを用いた地殻応力測定法の研究開発 | 国立大学法人東北大学 応用地質株式会社 株式会社物理計測コンサルタント |
革新的超臨界地熱場観測技術の研究開発 | 国立大学法人京都大学 一般財団法人エンジニアリング協会 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
【注釈】
- ※1 超臨界水
- 温度374℃、圧力22MPa以上の状態の水(純水の場合)。
- ※2 坑井
- 地下の地質構造の探査や地下資源の採取などを目的に掘削された穴。
- ※3 ケーシング材やセメント材
- 坑壁崩壊の防止、地層からの坑内への水の侵入や坑内から地層への地熱流体の流出を防止するために使用する資材。
3.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO 新エネルギー部 担当:加藤、丸内 TEL:044-520-5183
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:坂本、髙津佐、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp