本文へジャンプ

AI技術の早期社会実装に向けた研究開発プロジェクトで新たに7件を採択

―AI技術により熟練者の暗黙知のモデル化を目指す―
2019年5月14日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 石塚博昭

NEDOは、人工知能(AI)技術の早期社会実装に向けた研究開発プロジェクトで、新たに7件の研究開発テーマを採択しました。具体的には、AI技術の導入期間を従来比10分の1へ短縮する具体的な社会実装の研究開発・実証のテーマで2件、AI技術適用領域の拡大や人間の発想などを支援する共通基盤技術の確立として、新たにものづくり現場の暗黙知をAIに適用できる体系化と熟練者の判断をモデル化する「作業判断支援を行う人工知能技術」として5件を採択し、AI技術の社会実装の更なる加速を目指します。

これらをアジャイル型の開発手法で進め、AI技術の社会実装を加速し、グローバル市場の獲得につなげます。

  • 本プロジェクトの研究開発の概要
    図1 本プロジェクトの研究開発の概要

1.概要

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「生産性」や「空間の移動」などの重点分野における人工知能(AI)技術の社会実装の実現に向けた研究開発プロジェクトを2018年度から推進しています。具体的には「交通」「プラント」「発電」「土木」「流通」での新たな領域へのAI導入を加速するためのAI技術開発・実証と、それらAI技術をより広い分野・領域で短期間に導入・構築できるアノテーション※1自動化、最適ハイパーパラメータ※2探索高速化、施策の仮説立案を支援する経営支援システムなどの共通基盤技術の開発・実証を、アジャイル型※3の開発手法で進めてきました。今年度はそのテーマとして2件を採択しました。また、新たな取り組みとして、ものづくり現場で暗黙知として熟練者に蓄積している設計・製造技術情報をAIに適用できるように体系化するとともに、熟練者の判断をモデル化することで非熟練者の判断を支援するAI技術を開発するための研究開発項目を設定した上で5件の研究開発テーマを採択し、合わせて7件のテーマを採択しました。

今回の採択分を含めたすべての研究開発テーマを通じて、次世代AI技術の導入期間を従来比10分の1に短縮することを実証するとともに、AI技術の適用領域の拡大、人間の発想や創造を支援する共通基盤技術の確立を目指します。これらをアジャイル型開発手法で進め、AI技術の社会実装を加速させることにより、グローバル市場の獲得につなげます。また、従来の人間による管理では達成できない一層の生産性向上と平準化による省エネルギー効果を得るなど、AI技術の導入による省エネルギー化とCO2排出削減につながることが期待できます。

2.研究開発プロジェクトの概要

事業名:
次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発
実施期間:
2018年度~2023年度(予定)
予算:
16億円(2019年度)
研究開発項目1:
人工知能技術の社会実装に向けた研究開発・実証
研究開発項目2:
人工知能技術の適用領域を広げる研究開発
研究開発項目2-1:
「人工知能技術の導入加速化技術」
研究開発項目2-2:
「仮説生成支援を行う人工知能技術」
研究開発項目2-3:
「作業判断支援を行う人工知能技術」(今年度新規設定)
(i)設計における問題点・改善点を自動的に指摘する人工知能技術の開発
(ii)製造における非熟練者の判断を支援する人工知能技術の開発

今年度は、研究開発項目1と2-3(i)、2-3(ii)について公募・採択。

3.採択テーマおよび委託予定先一覧

<研究開発項目1:人工知能技術の社会実装に向けた研究開発・実証>

■分野:生産性(生産支援ロボット)
■採択テーマ:機械学習による生産支援ロボットの
現場導入期間削減と多能化
■委託予定先:スキューズ株式会社
公立大学法人首都大学東京
国立大学法人静岡大学
学校法人東洋大学
■概要:工場や農地などの生産現場で、環境との接触がある高度な
物体操作を伴う作業を行う生産支援ロボットを、自律多能化
して現場に導入しやすくする研究開発

図2 機械学習による生産支援ロボットの現場導入期間削減と多能化のイメージ

■分野:生産性(太陽光発電)
■採択テーマ:太陽光パネルのデータを活用したAIエンジン及び
リパワリングモジュールの技術開発
■委託予定先:ヒラソル・エナジー株式会社
■概要:太陽光パネルの稼働データにより、発電設備全体から
パネル1枚まで発電性能と問題を正しく理解し発電設備
性能改善(リパワリング)に生かすAIの研究開発

図3 太陽光パネルのデータを活用したAIエンジン及びリパワリングモジュールの技術開発のイメージ

<研究開発項目2-3(i):設計における問題点・改善点を自動的に指摘する人工知能技術の開発>

■分野:設計(自動車産業の設計工程)
■採択テーマ:熟練者観点に基づき、設計リスク評価業務における
判断支援を行う人工知能適用技術の開発
■委託予定先:SOLIZE株式会社
株式会社レトリバ
国立研究開発法人産業技術総合研究所
■概要:熟練者の経験や勘に基づくノウハウ(暗黙知)を解き明かし、
その観点に基づいて、設計リスク評価業務における設計者の
リスク抽出・対処策検討判断を支援し、検証漏れによる
手戻り削減と有識者を含めたデザインレビューの高度化
を実現するAI 技術の研究開発

図4 熟練者観点に基づき、設計リスク評価業務における判断支援を行う人工知能適用技術の開発のイメージ

<研究開発項目2-3(ii):製造における非熟練者の判断を支援する人工知能技術の開発>

■分野:製造(造船産業の曲げ加工)
■採択テーマ:曲面形成の生産現場を革新するAI線状加熱による
板曲げ作業支援・自動化システムの研究開発
■委託予定先:公立大学法人大阪 大阪府立大学
ジャパン マリンユナイテッド株式会社
■概要:大型鋼板の曲面成型の線状加熱加工において、数値解法と
熟練者の経験をインテグレートしたAIを融合し、非熟練作業者
の線状加熱加工作業の判断支援を行うシステムの研究開発

図5 曲面形成の生産現場を革新するAI線状加熱による板曲げ作業支援・自動化システムの研究開発のイメージ

■分野:製造(レーザー溶接加工)
■採択テーマ:レーザ加工の知能化による製品への応用開発期間の
半減と、不良品を出さないものづくりの実現
■委託予定先:地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
住友重機械ハイマテックス株式会社
■概要:複雑な粉体肉盛などのレーザー加工において、製品の多様な
仕様に合わせた熟練者の加工条件設定判断をモデル化し
非熟練者による加工条件設定にかかる時間を半減するAIと、
レーザー加工時の情報収集により加工品質(良/不良)の
判定を支援するAIによる製造支援システムの研究開発

図6 レーザー加工の知能化による製品への応用開発期間の半減と、不良品を出さないものづくりの実現のイメージ

■分野:製造(繊維産業の生産工程)
■採択テーマ:モデル化難物体の操作知識抽出に基づく柔軟物製品
の生産工程改善
■委託予定先:国立大学法人信州大学
富士紡ホールディングス株式会社
■概要:数値モデル化が困難な柔軟物(布など)の切断、縫製、ピッキ
ング作業を高速・高精度に行うため、熟練者の作業をモデル
化し、非熟練者の加工技能獲得の効率化、ロボットと作業者
の連携による作業効率化、工場内作業者と機器配置の最適
化等を可能にするAI工程改善支援システムの研究開発

図7 モデル化難物体の操作知識抽出に基づく柔軟物製品の生産工程改善のイメージ

■分野:製造(組立・金型生産システム)
■採択テーマ:AI技術をプラットフォームとする競争力ある次世代生産
システムの設計・運用基盤の構築
■委託予定先:国立大学法人東京大学
株式会社レクサー・リサーチ
株式会社デンソー
株式会社岐阜多田精機
大学共同利用機関法人情報・システム
研究機構国立情報学研究所
国立研究開発法人産業技術総合研究所
学校法人早稲田大学
■概要:熟練者を含めた人の意思決定を高度化する「良質な仮説導出
を支援するAI」による、次世代の組立加工システム、金型加工
システムの構築、人の熟練度発展や人材育成に資するAIの
研究開発

図8 AI技術をプラットフォームとする競争力ある次世代生産システムの設計・運用基盤の構築のイメージ

【注釈】

※1 アノテーション
あるデータに対して関連する情報(メタデータ)を注釈として付与することです。AI技術では、ディープラーニングを活用するための運用工程の一つであり、取得した大量のデータを識別および分類し、教師データ(正解データ)を作成する機能です。
※2 ハイパーパラメータ
ディープラーニングにおいて、人間が最初に設定しなければならない重みの初期値や学習率といったパラメータで、現状は試行錯誤で決定しています。
※3 アジャイル型
反復(イテレーション)と呼ばれる短い開発期間単位での開発を採用し、その開発期間単位を繰り返して、完成度を高めていく開発手法です。順次、機能確認しながら開発を進めることで、リスクを最小化しようとする開発手法の一つです。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDOロボット・AI部 担当:中井、柳本、登、金山 TEL:044-520-5242 E-mail:ai100145@nedo.go.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO広報部 担当:藤本、佐藤、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp