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新規DNA合成技術を開発、神戸大学発ベンチャーに実施許諾
―長鎖DNAの合成期間を従来比6分の1以下に短縮する技術を実用化へ―

2019年5月31日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人神戸大学
株式会社シンプロジェン

NEDOと神戸大学は、合成難易度の高い配列を含む二本鎖DNAを合成することができる新規DNA合成技術を開発し、本成果を神戸大学発ベンチャーである(株)シンプロジェンに実施許諾する契約を結びました。これを機に、同社は本技術の事業化に取り組みます。

本技術は、長鎖DNAを合成するための材料となる中間段階二本鎖DNAの合成に必要な技術です。(株)シンプロジェンの有する遺伝子集積の特許技術などと組み合わせることで、合成難易度が高い配列を含む長鎖DNA合成に必要な期間を従来の2カ月以上から6分の1以下の10日程度にまで短縮することが可能となります。

これにより、有用物質を生産するため新規に設計した代謝経路を長鎖DNAとして構築し、微生物などの細胞内に導入することで、高機能な化学品や医薬品などを生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」創出の促進が期待されます。

なお、(株)シンプロジェンは長鎖DNAの受託合成サービスを来春を目標に開始する予定です。

1.概要

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、植物や微生物の細胞が持つ物質生産能力を人工的に最大限引き出した「スマートセル」を構築し、既存の化学技術では生産が難しい有用物質の創製、または従来の生産手法の飛躍的な改善を実現することを目的に、スマートセル構築のための設計・製造基盤技術および特定の物質の生産における実用化技術の研究開発プロジェクト※1を推進しています。本プロジェクトで開発している基盤技術を中心に先端的なバイオテクノロジーと計算科学を組み合せることで、設計(Design)、構築(Build)、試験(Test)、学習(Learn)のワークフロー(DBTL)を展開し、医薬品を含むファインケミカルやバイオベース化学品、バイオ燃料などのさまざまな有用物質生産にバイオプロセスを取り入れ、ものづくりの加速を目指しています。

今般、NEDOと国立大学法人神戸大学は、合成難易度の高い配列を含む二本鎖DNA※2を合成することができる新規DNA合成技術を開発し、このほど、神戸大学発ベンチャーである株式会社シンプロジェン※3と本成果の実施許諾契約を結びました。これを機に、同社は本技術の事業化に取り組みます。

本技術は、長鎖DNA※4を合成するための材料となる中間段階二本鎖DNAを構築するために必要な技術です。(株)シンプロジェンの有する遺伝子集積の特許技術などと組み合わせることで、合成難易度が高い配列を含む長鎖DNA合成に必要な期間を従来の2カ月以上から6分の1以下の10日程度にまで短縮することが可能となります。

これにより、有用物質を生産するための生体内化学反応(代謝)経路を長鎖DNAとして構築し、微生物などの細胞内に導入することで高機能な化学品や医薬品などを生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」創出の促進が期待されます。

なお、(株)シンプロジェンは長鎖DNAの受託合成サービスを来春を目標に開始する予定です。

2.本技術の詳細

有用物質を生産するためには微生物の細胞内に新規の代謝経路を構築しますが、その際には多数の遺伝子を導入する必要があり、そのためには、任意の配列の長鎖DNA(10,000塩基より大きい)を構築する技術が必要です。任意配列のDNA合成のためには、化学的に合成したDNA(化学合成DNA)を出発材料とする必要がありますが、最大でも一度に200塩基程度の一本鎖DNAしか合成できません。

長鎖DNAの合成のためには複数の1本鎖の化学合成DNAを貼り合わせた後に、一旦1,000塩基対程度の大きさの中間段階二本鎖DNAを合成し、さらにこれを多数準備し、遺伝子集積法により連結して構築する必要があります(図1)。DNAの化学合成方法についての基本的な技術は確立しており、また、遺伝子集積法については、(株)シンプロジェンが特許権を保有しているOGAB法※5などいくつかの集積技術が既に開発されています。

  • 長鎖DNA合成の全体像
    図1 長鎖DNA合成の全体像

しかしながら、中間段階の二本鎖DNAを構築する工程は、配列の種類によって合成の難易度が大きく異なり、従来の技術では高いGC含量※6や繰り返し配列を含む配列の場合には合成が困難であるため、やむを得ずその配列を合成可能な別の配列に変換して合成する必要がありました。その結果、長鎖DNAの合成に2カ月以上の時間がかかり、このことがDBTLサイクルを遅くするという問題点がありました(図2)。

  • 従来と今回の長鎖DNA合成技術の比較
    図2 従来と今回の長鎖DNA合成技術の比較

本プロジェクトで開発された新規の二本鎖DNA合成技術は、化学合成DNAをオーバーラップエクステンションPCR法※7により連結して目的の二本鎖DNA断片を取得する二本鎖DNA合成方法において、PCRサイクルのアニーリング温度※8の設定を多段階とすることで、目的とする二本鎖DNA断片を正確に、容易に、効率よく、さらに迅速に合成できる方法で、現在特許出願中です。

本技術を用いると、従来は困難であったGC含量が70%を超える配列や、繰り返し配列などを含む場合であっても、正確に効率よく中間段階二本鎖DNAを合成できるようになり(図3)、この結果化学合成DNAから長鎖DNAの合成に要していた時間を、従来の2カ月以上から、10日程度に短縮することが可能になりました。

本技術によってDBTLサイクルをより早く進行できるようなり、スマートセルの作出や性能向上のスピードアップが期待されます。今回の実施許諾により、高機能な有用物質を微生物を用いて大量に生産するスマートセルインダストリーの社会実装に一歩近づきました。

  • 48種類の中間段階二本鎖DNA(約750塩基対)の同時合成例
    図3 48種類の中間段階二本鎖DNA(約750塩基対)の同時合成例
  • 実験に供した48種類のDNA配列は、どれも高GC含量や繰り返しを含むなど合成難易度が非常に高く、通常のPCR反応条件では増幅することができない。開発した新しいPCR反応条件ではそれらの配列が例外なく全て合成できた。

3.今後の予定

NEDOと神戸大学は本研究成果を先行事例として、生物機能を活用して高機能な化学品や医薬品などを生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」の実現を目指します。

【注釈】

※1 研究開発プロジェクト
事業名:植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発
研究開発項目〔3〕「高生産性微生物創製に資する情報解析システムの開発」
期間:2016~2020年度
※2 二本鎖DNA
相補的な一本鎖DNA同志が逆向きの方向性で塩基間に水素結合を形成し、二重らせん構造をとったDNAのことです。
※3 株式会社シンプロジェン
本社所在地:兵庫県神戸市灘区六甲台町1番地1
設立:2017年2月
代表者:代表取締役 菅原潤一
資本金等:11億1,800万円(資本準備金含む)
事業内容:ゲノム合成技術に係る研究および開発等
※4 長鎖DNA
数千塩基~数万塩基の長さを持つDNAのことです。
※5 OGAB法
Ordered Gene Assembly in Bacillus subtilisの略で、枯草菌を用いた50個以上のDNA断片を連結可能な遺伝子集積技術です。
※6 GC含量
DNAを構成するアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)のうち、あるDNA鎖に占めるGとCの含量を合計した値です。
※7 オーバーラップエクステンションPCR法
あらかじめ共通の配列(オーバーラップ)を末端に配したDNA断片をPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)により連結する方法です。
※8 PCRサイクルのアニーリング温度
PCR法の温度サイクル中の3つ段階(鋳型DNA変性、プライマーのアニーリング、DNAの伸長)のうちのプライマーのアニーリング段階の温度を示す。通常、1サイクル中のアニーリング温度は1つ(1段階)に固定されています。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 材料・ナノテクノロジー部 担当:金田、林 TEL:044-520-5220
E-mail:smartcell@ml.nedo.go.jp
神戸大学 大学院科学技術イノベーション研究科 担当:特命准教授 柘植謙爾
E-mail:ktsuge@port.kobe-u.ac.jp
(株)シンプロジェン 担当:マイヤー・ダニエル E-mail:info@synplogen.com

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:佐藤、坂本、藤本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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