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国立・国定公園での地熱発電開発促進に向けた環境保全手法の評価を実施

2019年9月2日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 石塚博昭

NEDOは、国立・国定公園特別地域内での地熱発電開発を促進するため、地熱開発事業者と地域住民などの開発関係者間の合意形成を支援するコミュニケーションツールとして期待されるエコロジカル・ランドスケープデザイン手法や3D景観シミュレーション技術などの環境保全手法の評価を実施します。

具体的には、実際の調査・開発フィールドを対象としてエコロジカル・ランドスケープデザイン手法などの環境保全手法により、地熱発電開発における自然環境や景観への配慮を見える化し、これらの環境保全手法が関係者間の合意形成にどの程度寄与するかの評価を実施します。また、得られた知見をガイドラインなどとして取りまとめて広く一般の地熱開発事業者に提供します。

これにより、国立・国定公園特別地域内に賦存する地熱資源利用の最大化を図るべく、豊かな自然環境や美しい景観と地熱発電開発が調和した姿を関係者間で共有することで、合意形成を円滑化し、地熱発電の導入促進に貢献します。

国立・国定公園内の地熱発電開発の規制状況のイメージ図
図1 国立・国定公園内の地熱発電開発の規制状況(イメージ)
(「国立・国定公園内における地熱開発の取扱いについて」に係る通知文書
(環境省,2012,2015)をもとに作成)
  • 国立・国定公園内の地熱発電開発の導入ポテンシャルのイメージ図
    図2 国立・国定公園内の地熱発電開発の導入ポテンシャル
    (調達価格等算定委員会(第1回)配布資料(経済産業省,2012)をもとに作成)

1.概要

世界第3位となる地熱資源ポテンシャルを有する日本では、安定した出力が得られる地熱発電に対して、ベースロード電源※1として大きな期待がかかっています。2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」においても、2030年の長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)実現に向けて地熱発電として最大で約155万kWの導入目標(地熱発電容量)が掲げられました。

国内の地熱資源量は約2000万kWと試算されており、この賦存量の半分近くが国立・国定公園※2特別地域内に存在すると推定されています。同区域内での地熱発電開発は、自然環境や景観の保護などの観点から規制されていましたが、2012年以降規制が緩和※3され、自然環境の保全と地熱発電開発の調和が十分に図られるなど、真に優良事例※4にふさわしいものと判断された場合に、開発が許可されるようになりました。しかし、規制緩和以降、現時点において同区域内で運転開始した地熱発電所はまだなく、環境アセスメントの段階まで進んでいる案件が1件あるのみです。

優良事例形成においては、当該地域における自然環境、景観および公園利用への影響を最小限に留めるための技術や手法の開発、そのための造園や植生などの専門家の活用などや、地域協議会(地熱開発事業者、地方自治体、地域住民、自然保護団体、温泉事業者などで構成)などを通じた合意形成が求められています。

このような背景のもと、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、「地熱発電技術研究開発※5」において、2014年度から合意形成を円滑に行うためのコミュニケーションツール開発として、景観や生態系に配慮した設計手法「エコロジカル・ランドスケープデザイン手法※6」のマニュアル化や景観や生態系への配慮を見える化する3D景観シミュレーションソフトの開発を実施しました。

今般、NEDOは、これらの手法などを活用し、国立・国定公園特別地域内での地熱発電開発を推進するため、実際の調査・開発フィールドを対象として、関係者間の合意形成支援の有効性を評価します。また、得られた知見をガイドラインなどとして取りまとめて広く一般の地熱開発事業者に提供します。

これにより、国立・国定公園特別地域内に賦存する地熱資源利用の最大化を図るべく、豊かな自然環境や美しい景観と地熱発電開発が調和した姿を関係者間で共有することで、合意形成を円滑化し、地熱発電の導入促進を行います。

2.採択テーマと委託予定先

採択テーマ名 委託予定先
優良事例形成の円滑化に資する環境保全対策技術に関する研究開発 東北緑化環境保全株式会社

【注釈】

※1 ベースロード電源
発電コストが低廉で安定的に発電することができ、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源です。
※2 国立・国定公園
国立公園とは、日本を代表する優れた自然の風景地を保護するために開発などの人為を制限するとともに、風景の鑑賞などの自然に親しむ利用がしやすいように、必要な情報の提供や利用施設を整備しているところであり、環境大臣が自然公園法に基づき指定し、国が直接管理する自然公園です。国定公園は、国立公園の景観に準ずる傑出した自然の大風景であり、環境大臣が自然公園法に基づき指定し、都道府県が管理する自然公園です。自然環境や利用状況を考慮して特別保護地区、第1種~第3種特別地域、普通地域の地種区分が設定されています。
※3 規制緩和
環境省から「国立・国定公園における地熱開発の取扱いについて(2012.3)」(2015年10月に同通知を改正)及び「同通知の解説(2016.6)」が公表され、国立・国定公園第1種~3種特別地域および特別保護地区内において、自然環境の保全と地熱開発の調和が十分に図られるなど、真に優良事例にふさわしいものであると判断された場合に、第1種特別地域については、地表に影響がないことなどを条件に、地下部への傾斜掘削が許可され、第2・3種特別地域については、地熱発電開発が許可されるようになりました。
※4 優良事例
優良事例とは、国立・国定公園の第2種・第3種特別地域に関係する地熱発電所のうち、自然環境保全と地熱発電開発の調和が十分に図られる事例のことを指します。具体的には、風致景観や自然環境への影響が回避・低減・代償されること、公園利用に関する支障がなく、地域との共生が図られることなど、様々な環境配慮の積み重ねの総体として評価される概念です。
※5 地熱発電技術研究開発
事業期間:2013~2020年度
事業予算:約87億円(2013~2020年度)※2020年度の予算は予定
※6 エコロジカル・ランドスケープデザイン手法
地域の潜在能力を活用してその地域であるべき環境を保全・創出し、健全な生態系を維持する設計手法です。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 新エネルギー部 担当:加藤、丸内 TEL:044-520-5183­

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:中里、坂本、佐藤 TEL:044-520-5151­ E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp