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小型・高効率・高出力なロボット用アクチュエータを開発

―協働ロボットなどへの幅広い展開に期待―
2019年10月8日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人横浜国立大学

NEDOは、「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」を行っており、今般、横浜国立大学と共同で、小型・高効率・高出力なロボット用アクチュエータを開発しました。

このアクチュエータは、超高減速比でも逆駆動が可能な「バイラテラル・ドライブ・ギヤ」にモーターやモータードライバーを組み込んでモジュール化したもので、歯車をかみ合わせたときの歯面間に遊びがないノンバックラッシ化に成功しました。

このアクチュエータを組み込んだロボットアームは、関節の精密制御や外力に対して柔軟に動作が可能で、減速機によるエネルギー損失を10%に低減できることで、繰り返し動作時の消費電力を約1/5に削減できるほか、モーターのセンサー情報から負荷トルクの推定もできます。これにより精密位置制御、小型軽量化・省エネルギーを同時に実現できるため、今後、協働ロボットやアシストロボット、移動ロボット、産業用ロボットなどの関節部材や、電気自動車(EV)、電気自転車などへ幅広い展開が期待できます。

なお、横浜国立大学は、今回開発したアクチュエータと、それを搭載したアシストロボットを、10月15日から18日まで幕張メッセで開催される「CEATEC 2019」に出展します。

  • 開発したロボット用アクチュエータの写真
    図1 開発したロボット用アクチュエータ

1.概要

高齢化社会では、ロボットが産業界だけでなく社会全体で人の役割の一部を担うことが期待されています。このような共存社会では、人とロボットの意図しない接触があった場合、その衝撃を吸収して人の安全を確保するために、ロボットの関節が外力に対して柔軟に動くことが必要になります。しかし現在、ロボットの関節に使用されている減速機は逆駆動性が低いため、人の安全を十分に確保できません。一方で、ロボットの中核部品である減速機は、古くから数多く研究されてきているため、大きな改善の余地はないと考えられていました。

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2015年度に「次世代人工知能・ロボット中核技術開発プロジェクト」を立ち上げ、現在の人工知能(AI)・ロボット技術の研究開発延長線上にとどまらない、人間の能力を超えることを狙った革新的な要素技術開発を進めており、その中で国立大学法人横浜国立大学は、「高効率・高減速ギヤを備えた高出力アクチュエータ※1の研究開発」に取り組んでいます。

本プロジェクト※2で横浜国立大学は、2018年度に超高減速比でも逆駆動が可能なバイラテラル・ドライブ・ギヤ※3を開発しました。この時開発したバイラテラル・ドライブ・ギヤは、一対の歯車をかみ合わせたときの歯面間の遊び(バックラッシ)があり、精密位置制御用途には不向きでした。そこで今般、歯車をかみ合わせたときの歯面間に遊びがない(ノンバックラッシ)バイラテラル・ドライブ・ギヤ(2号機)を新たに開発し、さらに、これにモーターおよびモータードライバーを組み込んでモジュール化することで小型・高効率・高出力なロボット用アクチュエータの開発に成功しました。このアクチュエータは、高効率な特徴を活かし、タスクに合わせて必要に応じて自由に複数連結してロボットアームを構築することができ、柔軟なシステム構築が可能になります。

このアクチュエータを組み込んだロボットアームは、関節が外力に対して柔軟に動かせるようになるほか、減速機の駆動効率が高いため、エネルギーロスを大幅に削減できるだけでなく、逆駆動による制動時の運動エネルギーを電気エネルギーとして効率的に回収することで、繰り返し動作時の消費電力を約1/5に削減、モーターのセンサー情報から負荷トルクの推定もできます。

これにより精密位置制御、小型軽量化・省エネルギーを同時に実現できるため、今後、協働ロボット、アシストロボット、移動ロボット、産業用ロボット関節部材や、電気自動車(EV)、電気自転車などの幅広い展開が期待できます。

なお、横浜国立大学は、今回開発したアクチュエータとそれを搭載したアシストロボットを、10月15日から18日まで幕張メッセで開催される「CEATEC 2019」に出展します。

  • アクチュエータモジュールとそれらを連結したロボットアームの写真
    図2 アクチュエータモジュールと
    それらを連結したロボットアーム
  • アシストロボット 右足:ケース無 左足:ケース有りの写真
    図3 アシストロボット
    右足:ケース有り 左足:ケース無し

2.今回の成果

【1】バイラテラル・ドライブ・ギヤ(2号機)を組み込んだアクチュエータ

このアクチュエータは、バイラテラル・ドライブ・ギヤ、モーター、モータードライバーをモジュール化しています。減速機の負荷トルクの制御には通常、トルクセンサーを出力側に配置する必要があります。しかしバイラテラル・ドライブ・ギヤでは、良好な逆駆動性により、出力側トルクセンサーによる負荷トルクの実測値とモーター側エンコーダーセンサー※4による負荷トルクの推測値が精度よく一致する(図4)ため、モーター側から出力側のトルクを推定し、制御することができ、出力側のトルクセンサーが不要になりました。

表1 アクチュエータ仕様
減速機 モーター アクチュエータ
減速比 1:74.9 定格トルク[Nm] 0.349

定格トルク[Nm]

23.8

順駆動効率 [%] 91.2 回転速度 [rpm] 3970

定格出力[W]

132

逆駆動効率 [%] 90.7    

重量 [g]

875

     

寸法(LxD)[mm]

83×68

  • センサーレス力推定の図
    図4 センサーレス力推定

また、逆駆動による制動時の熱を電気エネルギーとして効率的に回収、消費電力を大幅に削減できました。具体的には、アシストロボットの膝関節での実験において、このアクチュエータを使用して膝を曲げる際(図5)にはモーターを発電機として利用可能(図6)になり、屈伸の繰り返し動作において従来の波動歯車を使った場合に対して、消費電力を約5分の1に削減(表2)できました。

  • 膝関節モデルのイメージ図
    図5 膝関節モデル
  • 膝関節屈伸サイクルvsモーターパワーのイメージ図
    図6 膝関節屈伸サイクルvsモーターパワー
  • 膝関節屈伸サイクルあたりの消費電力比較表

【2】精密位置制御を可能とするバイラテラル・ドライブ・ギヤ(2号機)

バイラテラル・ドライブ・ギヤは複合遊星歯車機構と同じ構造であるため、約20分バックラッシがあり、精密位置制御用途には不向きでした。そこで2号機では、バックラッシ発生メカニズムを解析し、内歯車を微小にたわませる(図7)ことで、バックラッシを約3分まで大幅に削減することに成功し、実質ノンバックラッシを実現しました(図8)。この手法は従来の複合遊星歯車機構とほぼ同じ構造で、内歯車を入れ替えるだけで実現でき、順駆動動力伝達効率、逆駆動動力伝達効率などの諸性能をほとんど犠牲にすることがありません。これにより精密位置制御を可能としました。

  • バイラテラル・ドライブ・ギヤ(2号機)の基本構造のイメージ図
    図7 バイラテラル・ドライブ・ギヤ(2号機)の基本構造
  • 角度伝達誤差測定のイメージ図
    図8 角度伝達誤差測定

3.今後の予定

NEDOと横浜国立大学は、バイラテラル・ドライブ・ギヤの、より高い動力伝達効率と、従来では不可能であった減速比1000:1の実現、高速回転型モーターとモータードライバーおよびこれらを一体化したアクチュエータの研究を継続し、多くの企業への技術移転を通して、ロボットへの展開とともに新規用途の開拓を推進します。

また、本プロジェクトに参加している日本電産シンポ株式会社は、バイラテラル・ドライブ・ギヤの実用化を目指します。

【注釈】

※1 アクチュエータ
入力されたエネルギーを回転運動や直進運動などの物理的な運動に変換する装置です。
※2 本プロジェクト
次世代人工知能・ロボット中核技術開発/革新的ロボット要素技術分野/高効率・高減速ギヤを備えた高出力アクチュエータの研究開発
実施期間:
2015年度~2019年度
※3 バイラテラル・ドライブ・ギヤ
減速機の一つである複合遊星歯車機構の動力伝達効率の最大化を図るために歯車の歯数や転移係数などの構成要素を最適化することで、動力伝達効率を飛躍的に高めたもの。従来不可能であった100:1を超えるような高い減速比の減速機でも、柔軟な逆駆動が可能となるなどの特徴があります。
参考: NEDOニュースリリース 2019年1月30日「世界初、100:1の減速比でも逆駆動可能なギヤを開発」
※4 エンコーダーセンサー
モーターなどの回転軸に取り付けてその回転角度を計測するセンサーです。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO ロボット・AI部 担当:前原、渡邊 TEL:044-520-5242­

横浜国立大学 研究・学術情報部 産学・地域連携課 E-mail:sangaku.sangaku@ynu.ac.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、中里、佐藤 TEL:044-520-5151­ E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp