AI技術の早期社会実装に向け、新たに3件の研究開発テーマを採択
―多様な産業分野で、開発期間の短縮と導入容易化を目指す―
2020年6月10日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
NEDOは人工知能(AI)技術の社会実装を進めるプロジェクト「次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発」において、機械学習の自動化などの開発期間の短縮と、容易な利用・導入を可能にするプラットフォームを構築することを目的に、新たに3件の研究開発テーマを採択しました。早期の社会実装とグローバル市場への展開を視野に入れて、アジャイル型の開発手法で研究開発を進めていきます。
1.概要
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年度から、生産性や空間の移動といった分野で人工知能(AI)技術の社会実装を実現する研究開発プロジェクト「次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発」に取り組んでいます。
2020年度は、AIの導入加速化技術として「自動機械学習による人工知能技術の導入加速に関する研究開発」と「オンサイト・ティーチングに基づく認識動作AIの簡易導入システム」の2件、作業判断支援を行うAI技術として「最適な加工システムを構築するサイバーカットシステムを搭載した次世代研削盤の開発」の1件を採択しました。
これらの研究開発テーマを通じ、次世代AI技術の導入期間を従来比10分の1に短縮することを実証するとともに、AI技術の適用領域の拡大と、人間の発想や創造を支援するプラットフォームの確立を目指します。これらをアジャイル※1型の開発手法で進め、AI技術の社会実装を加速させることにより、グローバル市場への展開につなげます。また、人間の管理では達成が難しいとされるもう一段の生産性向上や平準化によって、省エネルギー化やCO2排出削減につながることも期待されます。
2.研究開発プロジェクトの概要
事業名:次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発
実施期間:2018年度~2023年度(予定)
予算:17億円(2020年度)
研究開発項目1:「人工知能技術の社会実装に向けた研究開発・実証」
研究開発項目2:「人工知能技術の適用領域を広げる研究開発」
研究開発項目2-1:「人工知能技術の導入加速化技術」
研究開発項目2-2:「仮説生成支援を行う人工知能技術」
研究開発項目2-3:「作業判断支援を行う人工知能技術」
(i)設計における問題点・改善点を自動的に指摘する人工知能技術の開発
(ii)製造における非熟練者の判断を支援する人工知能技術の開発
今年度は、研究開発項目2-1、2-3(ii)について公募・採択。
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図1 本プロジェクトの研究開発の概要
3.採択テーマおよび委託予定先一覧
<研究開発項目2-1:人工知能技術の導入加速化技術>
- ■分野:
- 導入加速
- ■採択テーマ:
- 自動機械学習による人工知能技術の導入加速に関する研究開発
- ■委託予定先:
- 国立研究開発法人産業技術総合研究所
株式会社ブレインパッド
国立大学法人名古屋工業大学
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構統計数理研究所
国立大学法人筑波大学
国立大学法人横浜国立大学
学校法人中部大学
国立大学法人東京工業大学
国立大学法人東北大学 - ■概要:
- ハイパーパラメーター※2最適化、ニューラルアーキテクチャーサーチ※3、転移学習※4を融合し、多目的最適化に拡張することでさまざまな産業用途に合わせたネットワークモデルを自動的に速く構築することを目指した研究開発。
-
図2 自動機械学習による人工知能技術の導入加速に関する研究開発のイメージ
- ■分野:
- 導入加速
- ■採択テーマ:
- オンサイト・ティーチングに基づく認識動作AIの簡易導入システム
- ■委託予定先:
- 国立大学法人東京大学
- ■概要:
- AI導入作業の簡潔化を目的とし、そこに含まれる繰り返し単純作業を知能ロボットにより代替するシステムの開発を目指す。認識動作の知能モジュールにより、人と同様に視覚、双腕、ハンドを有するロボットが、人がその場で見せた対象物と、それに対する動作を基本情報として蓄積し、自ら試行錯誤を繰り返す中で適切なAIソリューションの選択やデータアノテーション※5、ハイパーパラメーターの探索を行う。
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図3 オンサイト・ティーチングに基づく認識動作AIの簡易導入システムのイメージ
<研究開発項目2-3(ii):製造における非熟練者の判断を支援する人工知能技術の開発>
- ■分野:
- 製造(研削加工)
- ■採択テーマ:
- 最適な加工システムを構築するサイバーカットシステムを搭載した次世代研削盤の開発
- ■委託予定先:
- 株式会社ナガセインテグレックス
ミクロン精密株式会社
株式会社シギヤ精機製作所
牧野フライス精機株式会社
国立研究開発法人理化学研究所
国立大学法人北海道大学 - ■概要:
- 暗黙知とされる熟練者思考をグラフデータ化して最適な加工システムを導出し、熟練者の感覚をセンサーが捉えるマシンの挙動と加工変化に置き換えて数値化することで、加工最適化を行えるAI技術を搭載した複数種類の研削盤を開発する。
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図4 最適な加工システムを構築するサイバーカットシステムを搭載した次世代研削盤の開発のイメージ
【注釈】
- ※1 アジャイル
- 反復(イテレーション)と呼ばれる短い開発期間単位での開発を採用し、その開発期間単位を繰り返して、完成度を高めていく開発手法。順次、機能確認しながら開発を進めることで、リスクを最小化しようとする開発手法の一つ。
- ※2 ハイパーパラメーター
- ディープラーニングにおいて、人間が最初に設定しなければならない重みの初期値や学習率といったパラメーターで、現状は試行錯誤で決定している。
- ※3 ニューラルアーキテクチャーサーチ
- 深層学習モデル(ニューラルネットワーク)のネットワーク構造を自動的に生成する技術。
- ※4 転移学習
- ある領域で学習したこと(学習済みモデル)を別の領域に役立たせ、効率的に学習させる技術。
- ※5 アノテーション
- あるデータに対して関連する情報(メタデータ)を注釈として付与すること。AI技術では、ディープラーニングを活用するための運用工程の一つであり、取得した大量のデータを識別および分類し、教師データ(正解データ)を作成する機能。
4.問い合わせ先
(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)
NEDO ロボット・AI部 担当:中井、井土、古林、尾﨑、柳本、金山
TEL:044-520-5242 E-mail:ai100145@nedo.go.jp
(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)
NEDO 広報部 担当:佐藤、坂本、鈴木(美) TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp
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