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超臨界地熱発電の実現に向け、新たに3件の研究開発を採択
―超臨界地熱資源に対する調査井掘削の詳細検討に着手―

2020年7月9日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
理事長 石塚博昭

NEDOは、超臨界地熱資源に対する調査井の掘削を検討するため、超臨界地熱資源が存在する可能性が高い秋田県湯沢市南部地域で資源量評価(モデルフィールド・スタディ)を進めるとともに、掘削に必要なケーシング材やセメント材などの資材の開発と、超臨界地熱貯留層でのモデリング技術手法を開発する3件の研究開発テーマを新たに採択しました。

本研究開発を通じて、超臨界地熱資源の分布・性状・規模などを把握し、超臨界地熱発電の実現に向け、次のステップで計画される調査井掘削の成功確度向上を目指します。

超臨界地熱系概念図
図1 超臨界地熱系概念図

1.概要

日本国内には、合計100以上の活火山が確認されており、こうした火山地帯の深部3kmから5kmには、400℃から500℃程度の高温・高圧の超臨界水※1が存在すると推定されています。これを活用し発電する超臨界地熱発電は従来の地熱発電より発電所あたりの出力を大規模化することが可能で、次世代技術として期待されています。

超臨界地熱発電技術は、政府が2020年1月に策定した「革新的環境イノベーション戦略」の中で温室効果ガス排出量を大幅に削減するポテンシャル・インパクトが大きい革新技術の一つに位置づけられ、2050年頃の実用化が検討されています。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、超臨界地熱発電の実現に向けて、2017年度にフェーズIの実現可能性調査を実施しました。その結果、世界各地の高温地熱地域のフィールドデータや現地調査結果から存在が想定される超臨界地熱システムモデルを元にした数値シミュレーションにより、1坑井※2あたり数十MWの発電が可能であること、経済性評価については条件次第で従来の地熱発電と同程度の発電コスト9円/kWhから12円/kWhに収まることなどが示されました。

一方で、課題調査を継続し経済性を再評価する必要があるとの判断から、2018年度以降もフェーズIIの超臨界地熱資源量評価(モデルフィールド・スタディ)を先行実施すると同時に、超臨界地熱発電の調査井掘削に必要な技術の整理や仕様の検討など、実現可能性調査フェーズの事業を引き続き実施してきました。この調査結果について2020年2月にステージゲート審査を行った結果、次のステップである「調査井掘削のための詳細事前検討」フェーズIIへの完全な移行を決定しました(図2)。

  • 研究開発イメージ(実用化までのロードマップ)
    図2 研究開発イメージ(実用化までのロードマップ)

この結果を受け、今回NEDOは超臨界地熱資源に対する調査井掘削の詳細検討のため、(1)資源量の評価地域の追加、(2)調査井掘削に必要となる資材(ケーシング材※3 およびセメント材)の開発、(3)超臨界地熱貯留層のモデリング技術手法の開発に関する公募を行い、3件の研究開発テーマを採択しました。

資源量評価は2018年度以降、モデルフィールドとして後志(北海道)、仙岩(岩手県)、八幡平(岩手県)、および豊肥(大分県)の4地域を選定し、作業を実施しています。今回これに1地域(秋田県湯沢市南部地域)を加えました。今年度中に物理探査などの地表調査を行い、さらに概念モデルの構築と数値シミュレーション手法による資源量評価の概査まで終了する予定で、合計で約500MW規模のポテンシャルを見込んでいます。(2019年3月現在の日本の地熱発電出力:約490MW※4

また調査井掘削における資材の開発では、高温状態でも耐腐食性の強いケーシング材が必要とされています。そこでこれまで用いられていない鋼材の検討やコーティング材の性能評価を実施するとともに、高温下でも安定した強度を保持する新たなセメント材を開発し、調査井掘削に向けて、コストパフォーマンスを発揮できる材料を提案します。

さらにモデリング技術手法の開発では熱・水を対象とした従来のシミュレーションに加え、超臨界地熱資源の存在が推定される環境(地下状態)での評価に求められる力学(岩石の破壊や変形挙動)や化学(鉱物の溶解・沈殿挙動)の現象を再現する地熱系の数値シミュレーションの開発に着手します。

これらを実施することで地下の状況(特に浸透率への影響)をより正確に再現できるようになり、調査井掘削地選定や資源量評価の精度向上、人工貯留層を造成した際の地層への影響などに関してより正確な情報を得ることが期待できます。

本研究開発を通じて超臨界地熱資源の分布・性状・規模などを把握し、超臨界地熱発電の実現に向け、次のステップで計画される調査井掘削の成功確度向上を目指します。

2.採択テーマと委託予定先

  • 【事 業 名】超臨界地熱発電技術研究開発
  • 【事業期間】2020年度
  • 【事業規模】1億300万円(2020年度)
  • 【採択テーマと委託予定先】

(1)研究開発項目:超臨界地熱資源の評価と調査井に必要な仕様の詳細設計

採択テーマ名 委託予定先
湯沢南部地域における超臨界地熱資源の評価と発電可能量の推定に関する研究開発 日鉄鉱コンサルタント株式会社

(2)研究開発項目:調査井の資材(ケーシング材及びセメント材)等の開発

採択テーマ名 委託予定先
材料試験に基づく候補材の評価 国立大学法人秋田大学
エヌケーケーシームレス鋼管株式会社

(3)研究開発項目:超臨界地熱貯留層のモデリング技術手法開発

採択テーマ名 委託予定先
超臨界地熱貯留層THMCシミュレータ※5の技術開発 国立研究開発法人産業技術総合研究所
国立大学法人東北大学
大成建設株式会社

【注釈】

※1
超臨界水
温度374℃、かつ、圧力22MPa以上の状態の水(純水の場合)です。
※2
坑井
地下の地質構造の探査や地下資源の採取などを目的に掘削される井戸です。
※3
ケーシング材
掘削の進行に伴って、掘られたままで地層が露出している坑井(裸坑という)に内枠をつけることをケーシングといい、近代削井方法では、ケーシング材料として丈夫な鋼管(ケーシング・パイプ)が使用されます。 井戸の内に入れられた一連の鋼管をケーシング・ストリングといい、ケーシング・ストリングと坑井との間は通常セメントによって閉塞・固定されます(セメンチング)。(出典:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構石油・天然ガス資源情報ウェブサイト用語辞典より)
※4
2019年3月現在の日本の地熱発電出力:約490MW
「地熱発電の現状と動向2019年」(一般社団法人火力原子力発電技術協会より引用)
※5
THMCシミュレータ
熱・水・力学・化学(Thermal-Hydraulic-Mechanical-Chemical)それぞれの挙動、およびその連成作用を考慮して、地下で発生している現象と状態を解析するシミュレータです。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO 新エネルギー部 担当:加藤(久)、田口 TEL:044-520-5183­

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、佐藤、鈴木(美) TEL:044-520-5151­ E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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