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地球環境再生を目指すムーンショット目標で13件の研究開発プロジェクトを採択
―大気中の二酸化炭素の直接回収技術など、挑戦的な研究開発を推進―

2020年8月26日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 石塚博昭

NEDOは、「ムーンショット型研究開発事業」において、ムーンショット目標4「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」の達成を目指す研究開発プロジェクトを、13件採択しました。

本事業では、大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収して有益な資源に転換する技術や、農地や工場などから低濃度で排出されている窒素化合物を無害化・資源転換する技術、海洋に流出しても適切なタイミングとスピードで生分解するプラスチックの開発など、挑戦的な研究開発に取り組みます。

持続可能な資源循環の実現に向けて取り組む研究開発
図 持続可能な資源循環の実現に向けて取り組む研究開発

1.概要

日本発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進するものとして、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)において、「ムーンショット型研究開発制度※1」が創設され、2020年1月に6つのムーンショット目標※2が決定されました。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、6つの目標のうち、ムーンショット目標4「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」と経済産業省が策定した研究開発構想の達成に向けた、挑戦的な研究開発(ムーンショット型研究開発事業)を実施します。本事業の推進にあたり、NEDOは、プログラムディレクター(PD)に公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)副理事長・研究所長の山地憲治氏を任命し、公募を経て、13件の研究開発プロジェクトと、それらをマネジメントするプロジェクトマネージャーを採択しました。

2.研究開発内容

具体的には、「地球温暖化問題の解決(クールアース)」と「環境汚染問題の解決(クリーンアース)」を目指した、以下の挑戦的な研究開発に取り組みます。

(1)温室効果ガスを回収、資源転換、無害化する技術の開発

地球温暖化問題は世界的に喫緊の課題であり、日本は、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(2019年6月11日閣議決定)において、2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減に取り組むことを宣言しています。この目標は、製品製造工程、エネルギー供給などから排出される温室効果ガスの排出抑制だけでは達成不可能であり、達成に向けては大気中にやむなく排出された温室効果ガスを回収する技術が必要となります。

大気中に拡散したCO2を人工的に直接回収する技術は、Direct Air Capture(DAC)と呼ばれ、パリ協定の採択以降注目を集めています。一方で、大気中のCO2濃度は約0.04%と非常に薄いため、現在の技術でDACを実現するには、大量のエネルギー投入が必要でCO2削減効果が小さいことや、非常に高コストであることなど、多くの課題が挙げられています。

また、パリ協定の長期目標の達成には、CO2だけではなく、同じく温室効果ガスであるメタンや一酸化二窒素(N2O)の削減も必要とされています。メタンはCO2の28倍、N2OはCO2の265倍の地球温暖化係数(GWP)を持つとされ※3、いずれも農業活動が主要な排出源となっています。

本事業では、2050年までにDACを世界的に普及させることを目指し、その実用化に向けた課題を解決するさまざまな技術の開発を行います。加えて、回収したCO2を有益な資源に転換する技術や、農地由来のメタンやN2Oを無害化する技術の開発を行います。

(2)窒素化合物を回収、資源転換、無害化する技術の開発

人間活動に由来する窒素化合物については、プラネタリーバウンダリー※4の研究において、その量が限界値を超えたハイリスクな状態にあると報告されています。具体的には、窒素化合物が環境中へ排出されることで、湖沼や海域の富栄養化、酸性雨や気候変動などへの影響が懸念されています。

本事業では、従来では回収が難しかった排ガスや排水中に含まれている低濃度の窒素化合物を回収、資源に転換、無害化する技術の開発を行います。

(3)生分解のタイミングやスピードをコントロールする海洋生分解性プラスチックの開発

海洋に流出し社会問題となっているプラスチックに対して、日本では、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」(2019年5月31日)を策定し、プラスチックを有効利用することを前提としつつ、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指しています。そのための対策の一つとして、海洋に流出しても環境に与える影響が少ない海洋生分解性プラスチックの開発が挙げられます。一方で、現状の生分解性プラスチックは、その分解開始時期や分解速度が十分に制御されておらず、実用化と普及に向けた課題の一つとなっています。

本事業では、プラスチックが海洋に流出した際に適切に分解されるよう、生分解のタイミングやスピードをコントロールするスイッチ機能を有する海洋生分解性プラスチックの開発を行います。

【注釈】

※1 ムーンショット型研究開発制度
本制度の詳細については、以下を参照。
別ウィンドウが開きます ムーンショット型研究開発制度
※2 ムーンショット目標
2020年1月CSTIにおいてムーンショット目標1~6が決定。2020年7月には健康・医療戦略推進本部においてムーンショット目標7が決定。
ムーンショット目標1:2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
ムーンショット目標2:2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
ムーンショット目標3:2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
ムーンショット目標4:2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
ムーンショット目標5:2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
ムーンショット目標6:2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
ムーンショット目標7:2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現
※3 地球温暖化係数(GWP)
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書において示された地球温暖化係数のうち、100年間の累積値。
※4 プラネタリーバウンダリー
人間社会の発展と繁栄を継続するために、地球環境の9つの領域において定められた限界値。これを超えると人間が依存する自然資源に対して回復不可能な変化が引き起こされる。

3.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO イノベーション推進部 ムーンショット型研究開発事業推進室
担当:吉田、須澤、江川、小島 TEL:044-520-5240­ E-mail:moonshot-office@nedo.go.jp

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:佐藤、鈴木(美)、坂本 TEL:044-520-5151­ E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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