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データセンター用サーバーの計算速度を一桁高速化
―世界初、光配線でサーバーボードを直結したラック型システムを完成―

2020年10月16日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術研究組合光電子融合基盤技術研究所

NEDOは技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)と共同で、サーバーボードにデータ転送先を切り替えるスイッチング機能を実装し、全サーバーボード間を光配線で直結したラック型サーバーシステムを世界で初めて完成しました。電気スイッチでの中継が不要なことから、従来のデータ伝送方式と比べ計算速度を一桁高速にできます。これによりデータセンターの消費電力量を低減できるため、多くの電力量と計算時間が必要となるビッグデータやAIの利用を促進する効果も期待できます。

なお、今回開発したラック型サーバーシステムは10月20日から23日までオンラインで開催される「CEATEC 2020 ONLINE」で発表し、大量のデータを高速で処理するデモンストレーションを行います。また、12月9日から11日まで東京ビッグサイトで開かれる「interOpto 2021」にも出展する予定です。

ラック型サーバーシステム
図1 ラック型サーバーシステム

1.概要

ビッグデータやAIの進展を背景に、膨大な量の情報を扱うデータセンターではLSI(大規模集積回路)やサーバー間の情報伝送量が増大し、消費電力量が急激に増加する課題に直面しています。また、LSIやサーバー間のデータのやり取りに用いられる電気配線は、データ量の爆発的な増加やLSIの性能向上によってデータの入出力処理に限界があるため、情報処理能力を向上するボトルネックとなりつつあります。これに対し、光配線はデータセンターなどにおけるサーバーシステムや光通信システム向けIT機器の大幅な小型化・高速化・省電力化を可能にすることから、世界各国で開発が加速しています。

こうした中、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)※1は、2012年度から10年間の「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」※2として光配線技術や光トランシーバー※3技術の開発を進めています。

すでに成果も挙げており、2014年度までにシリコンフォトニクス技術※4を用いた世界で最も高速・小型・低消費電力・低コストを実現した5mm角の超小型光トランシーバー「光I/Oコア」※5を開発し、LSI近傍に光トランシーバーを実装することを可能にしました。これによりLSIの電気信号をすぐに光信号へ変換できるようになり、消費電力を抑えてデータを伝送することが可能になりました。また2016年度までには光I/Oコア8個をLSI近傍に実装したアクセラレータボード※6を開発し、大容量LSIのデータの入出力に必要とされる、送受信で1.6Tbpsの伝送速度を達成しました。

2.今回の成果

NEDOとPETRAはこのたび、サーバーボードに搭載したアクセラレータボードのFPGA※7にスイッチング機能(分散スイッチ)※8を実装し、全サーバーボード間を光配線で直結したラック型サーバーシステムを世界で初めて開発しました。電気スイッチで中継することなくサーバーボード間のデータを通信できることから、電気スイッチを介してデータ伝送を行う従来システムと比べ、計算速度を一桁高速※9にすることに成功しました。

この結果、例えば心臓や肺の診断などに用いられる3次元CT(コンピューター断層撮影法)の画像処理では、電気スイッチを介した電気接続によるコンピューターシステムで5分を要していた処理時間を30秒に短縮できます。

  • サーバーボードの内部構造(イメージ)
    図2 サーバーボードの内部構造(イメージ)

ビッグデータを高速処理するためには、データ処理を多数のサーバーに分散し並列して計算する手法が有効です。ただ、計算結果をサーバー間で相互にやり取りする通信時間はデータ処理時間に大きく影響するため、電気スイッチを介してデータ伝送を行う従来のサーバーシステムでは遅延が発生し、データ処理時間が長くなってしまいます。また従来の電気配線のケーブルはサイズが大きく設置できる数に限界があるため、すべてのサーバーボード間を接続できない課題もありました。

これに対し、NEDOとPETRAは8台のサーバーボードの全ノード(FPGAを搭載したアクセラレータボードを実装したサーバーボード)間を光配線で直結したフルメッシュ接続※10とFPGA内に構成したスイッチング機能を組み合わせたラック型サーバーシステムを開発し、電気スイッチによる処理時間の遅延を解消することに成功しました。これにより、膨大な量の情報を電気配線より一桁高速で処理する仕組みを実現しました。

NEDOとPETRAは本プロジェクトで開発中の光電子集積インターポーザー技術※11の成果を今回開発したラック型サーバーシステムにも適用し、並列度を上げるとともに、さらなる省電力化を可能にする技術開発を進めていきます。

3.展示会でのデモンストレーション内容

今回開発したラック型サーバーシステムは10月20日から23日までオンラインで開催される「CEATEC 2020 ONLINE」で発表し、大量のデータを高速で処理するデモンストレーションを行います。また、12月9日から11日まで東京ビッグサイトで開かれる「interOpto 2021」にも出展する予定です。

デモンストレーションでは全サーバーボード間を光配線で直結したラック型サーバーシステム(図1)と電気スイッチを介した電気配線による従来のサーバーシステムを比べて、大量のデータ処理を行うことで処理能力の差を明確に示します。「CEATEC 2020 ONLINE」ではオンライン動画を配信し、「interOpto 2021」ではラック型サーバーシステムの実物を展示する予定です。

【注釈】

※1 技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)
別ウィンドウが開きます http://www.petra-jp.org/
※2 「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」
事業期間:2012年度~2021年度の10年間。ただし、2012年度は経済産業省からの委託事業として実施。
※3 光トランシーバー
電気信号と光信号を相互に変換する光部品。
※4 シリコンフォトニクス技術
シリコン基板上に光素子を形成する技術。シリコンを用いることにより光回路を小型化でき、大規模集積が可能になる。
また、光回路と電子回路の一体形成や製造コストを低減できる特長を持つ。
※5 光I/Oコア
NEDO事業で開発した、シリコンフォトニクス技術を用いた超小型の光トランシーバーチップの名称。アイオーコア社(別ウィンドウが開きます http://www.aiocore.com/)で生産・販売している。
※6 アクセラレータボード
コンピューティングにおいて、通常の汎用プロセッサ(CPU)上で動作するソフトウェアによる処理ではスループットが遅い、消費電力が大きいなどといった問題がある場合に、実行速度などを加速(アクセラレーション)するためにコンピューターに実装するボード。
※7 FPGA(Field-Programmable Gate Array)
論理回路構成が書き換え可能なプログラマブルロジックデバイス。最近は大規模化、入出力速度の高速化の進展が著しい。
※8 分散スイッチ
各ノードに実装される、データの送り先のサーバーボードを切り替えるためのスイッチ。
※9 計算速度を一桁高速
例えば日本の人口と同じ1億3000万の2組の情報の間にある相関性を解析する場合、かかる計算時間の実測値は以下の ようになる。
・開発したラック型サーバーシステム0.03秒
・従来の電気スイッチを介したサーバーシステム0.52秒
※10 フルメッシュ接続
コンピューターネットワークなどの接続形態のひとつ。ネットワークを構成する個々の要素(ノード)をすべて直接接続するもの。
※11 光電子集積インターポーザー技術
回路基板とLSIの間に電気信号を光信号に変換する回路を内蔵するインターポーザーを作製するために必要な技術。LSIと変換回路を密接に接続することで、信号伝送はより高速・低消費電力になる。

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO IoT推進部 担当:栗原、豊田 TEL:044-520-5211

PETRA 光エレクロトニクス実装研究推進部 担当:中田 TEL:03-5225-2362

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、鈴木(美) TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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