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AIを活用した野菜5品目の市場価格を予測するサービスを開始
―高精度の予測を毎週無償で提供。生産性と収益性の向上を目指す―

2021年3月24日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
株式会社ファームシップ
国立大学法人豊橋技術科学大学

NEDOは「人工知能技術適用によるスマート社会の実現」事業に取り組んでおり、その一環として(株)ファームシップと豊橋技術科学大学は、人工知能(AI)を活用した野菜の市場価格予測アルゴリズムの開発を進めています。すでに、東京都中央卸売市場大田市場のレタス価格を月次で予測する取り組みを進めており、予測アルゴリズムを実証してきました。このほど、レタスに加えトマトやイチゴなど5品目の市場価格を週次単位で高精度に予測する仕組みを開発し、3月24日から無償で市場価格の予測サービスを提供します。

本実証を通じた栽培物の成長制御や物流など各プロセスの最適化などによりバリューチェーン全体を効率化し、植物工場における野菜の廃棄や販売の機会損失を減らし、業界全体の生産性と収益性の向上を目指します。

野菜市場価格の予測サービスの仕組みのイメージ
図1 野菜市場価格の予測サービスの仕組みイメージ

1.概要

植物工場から供給する野菜は、露地栽培と異なり天候に影響されない安定生産が可能なことに加え、狭い耕地で済むことから、近年その生産量を著しく伸ばしています。しかし、その需要は露地野菜の価格変動に大きく左右されるため、生産した野菜の廃棄や販売の機会損失が生じており、効率的な生産を可能とする植物工場本来の特徴を生かせていませんでした。

この課題に対するものとして、国立研究開法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「人工知能技術適用によるスマート社会の実現※1」事業に取り組んでいます。具体的には、植物工場の野菜栽培過程や流通でのビッグデータ収集、これらのデータと人工知能(AI)を活用した需給マッチング、これに基づいた栽培物の成長制御や物流など各プロセスの最適化などによりバリューチェーン全体を効率化し、植物工場における野菜の廃棄や販売の機会損失の低減を目指しています。

この事業で、株式会社ファームシップ、国立大学法人東京大学および(株)ファームシップの再委託先の国立大学法人豊橋技術科学大学、パイマテリアルデザイン株式会社は、2018年度から生産・流通・販売の各段階での現場データを活用した需要予測システムおよびその予測結果を生産現場にフィードバックする成長制御システムの研究開発を行い、2019年11月から月単位でレタスの価格予測を行なう実証を行ってきました。

本実証の中で、東京大学はレタスの栽培効率化につながるセンサーの技術開発、豊橋技術科学大学が需要予測技術開発、パイマテリアルデザイン(株)が生育予測技術開発、(株)ファームシップがトータル・システム効率化技術開発を担当しました。

そして今般、NEDOと(株)ファームシップ、豊橋技術科学大学は、AIを活用した野菜の市場価格予測アルゴリズムの開発を進め、植物工場の野菜の需給マッチングの基礎を高度化することにより、東京都中央卸売市場大田市場(以下、大田市場)における市場価格予測アルゴリズムを、従来の月次単位から週次単位に高精度化し、3月24日よりデータの無償提供を開始しました。さらに対象品目をレタスだけでなく、生産や流通量が多く、現時点で予測精度の高いトマトやイチゴなど計5品目に広げました。これにより、対象5品目の需要予測精度を高めることができ、廃棄や販売の機会損失低減効果を期待できます。

なお、(株)ファームシップは、こうした野菜の市場価格予測アルゴリズムを植物工場技術に活用する本事業での取り組みなどが評価され、3月24日に2020年度第6回JEITAベンチャー賞(主催:一般社団法人電子情報技術産業協会)を受賞しました。

2.実証の概要

野菜の市場価格と植物工場販売量のデータを相関分析することで、植物工場で生産される野菜の需要は、市場流通している露地野菜の価格に大きく依存していることを確認しました。これにより、大田市場のレタスの市場価格と植物工場のレタスの需要量の相関関係に着目し、これまでのレタスの市場価格などのビッグデータを収集後、AIでそれらを機械学習させて解析し、一週間先のレタスの市場価格を高精度に予測する仕組みを開発しました。

なお、この市場価格予測実証サービスの利用希望者は、(株)ファームシップが運営する下記のサイトにアクセスし、ユーザー登録することによって対象5品目の市場価格の予測をメール配信により無償で入手できます。

  • ■対象市場:東京都中央卸売市場大田市
  • ■対象品目:レタス、トマト、ミニトマト、イチゴ、ほうれん草 の5品目
  • ■サービス開始時期:2021年3月24日
  • 別ウィンドウが開きます サービスサイト

3.今後の予定

NEDO、(株)ファームシップ、豊橋技術科学大学は、本実証を通じて、需要予測システムと生育予測や成長制御を統合した生産制御システムの有効性を検証していきます。

また、(株)ファームシップは需要予測値と実績の精度を確認した上で、システムの充実・強化を図ります。さらに、(株)ファームシップと豊橋技術科学大学はこの実証で得たデータをもとに、「AIによる植物工場等バリューチェーン効率化システム」の研究開発を進め、栽培する野菜の成長制御や物流など各プロセスの最適化を組み合わせて、バリューチェーン全体の効率化を目指します。

【注釈】

※1 人工知能技術適用によるスマート社会の実現
:人工知能技術適用によるスマート社会の実現/AIによる植物工場等バリューチェーン効率化システムの研究開発
事業期間:2018年度~2022年度

4.問い合わせ先

(本ニュースリリースの内容についての問い合わせ先)

NEDO ロボット・AI部 担当:坂元、寺下 TEL:044-520-5242

(株)ファームシップ 担当:近藤 TEL:03-5829-9601

豊橋技術科学大学 総務課広報係 担当:堤、高柳 TEL:0532-44-6506

(その他NEDO事業についての一般的な問い合わせ先)

NEDO 広報部 担当:坂本、鈴木(美) TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp

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